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第23回園田プリンセスカップ

アクシデントを乗り越え逃げ切る
  地元馬を圧倒し北海道勢ワンツー

グランダム・ジャパン(GDJ)2021の2歳シーズン開幕戦となった園田プリンセスカップ。2歳戦に強い北海道勢は過去10年でこのレースを4勝とあって、今年も1番人気は北海道から遠征のスティールノーヴァで単勝3.3倍。差のない3.9倍に地元のアンサンと、グラーツィア(北海道)が並んだ。

結果的にグラーツィアが勝ち、2着スティールノーヴァで、3着アンサンには7馬身もの差をつけたが、レースは一筋縄ではいかなかった。

波乱の幕開けはゲート入り。先入れされたアダラがゲートの中で暴れて尻もちをつく格好で、起き上がろうと必死にもがいた際に隣のグラーツィアに当たり、驚いたグラーツィアがゲートを飛び出し放馬してしまった。幸い1コーナーの放馬止めで捕まり、歩様に異常がないかなど確認が行われた上で出走となったが、スタート地点に戻る途中、ファンから温かい拍手が送られると、かえってそれに驚いて内ラチ沿いまで飛んでいってしまった。

アダラが競走除外となり、仕切り直してゲート入りが行なわれた。重賞初実況の鈴木セイヤアナウンサーの「スタートしました」という声とともに好スタートを切ったのは、デビュー戦、JRA認定戦と2連勝中のアンサン。さらに外からベニヒメ(川崎)が来たが、真ん中のグラーツィアがスピードに乗って1コーナーで先手を取った。そのまま軽快に逃げると、3~4コーナーでスティールノーヴァに並びかけられるも直線でもうひと伸びを見せて3馬身差で勝利。

2着スティールノーヴァは序盤でダッシュがつかず砂を被って怯みながらも、吉村智洋騎手の肩ムチと腰を入れての追いに応え、向正面で外に出されるとグングン伸びた。「頑張ってくれましたが、スムーズにレースを運べたかどうかの差もありますし、勝ち馬はレース前のアクシデントがありながら勝つんですから、強いですね」と、勝ったグラーツィアのタフさに脱帽。それでも、スティールノーヴァも逃げ・先行してきたこれまでの3走と違う形になりながらも勝ち馬に並びかけるところまでいったのだから、地力の高さを改めて示した。

グラーツィアはスタート前にアクシデントがあっただけに、田中学騎手は「3コーナーではまだまだ手応えがあったんですが、気持ちがどこまでやれるかな?と思っていました」と心配したが、「並ばれてからももう一度辛抱してくれました」と、2歳牝馬らしからぬメンタルの強さに感嘆した。この日は地元でも重賞レースがあったため、田中淳司調教師は門別競馬場からレース中継を見守った。「除外でもおかしくないアクシデントがありながら、頑張ってくれました」と馬を称え、今後については門別競馬場に帰ってきてカイ食いや状態を見ながらの決定とはなるものの「問題がなければGDJのレースに行きたいです」と話した。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

田中学騎手

メンタルが強い子だと改めて感謝しています。ゲートのアクシデントで少し臆病になっていた面もあるので、逃げました。1~2コーナーはゆったり入れて、物見をするような感じになり息も入りました。リラックスして走れていたので、距離は問題ないと思います。

田中淳司調教師

同じ北海道の馬をマークして、という作戦を伝えていましたが、相手がダッシュがつかず、豊富なスピードでハナに行けました。単騎での逃げとなって息を入れられましたし、追って伸びる馬なので直線は安心して見ていました。このあとは状態を確認して、問題なければGDJの一戦に行きたいと思います。(門別競馬場にて取材)