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第2回ウポポイオータムスプリント

次元の違う末脚で一気に差し切る
  道営スプリント連覇へ弾みの勝利

道営記念の短距離版として、2006年に道営スプリントが創設。01年から始まったJBCスプリントJpnIのステップとして、地元馬にとっては意義の大きいレースに成長した。そして昨年、道営スプリントは1着賞金1000万円にアップされ、道営記念と並び立つ形で最終日に行われるようになった。

ウポポイオータムスプリントは、JBCスプリントJpnI指定競走だった道営スプリントに変わる重賞として新設された。短距離路線の充実は、ホッカイドウ競馬の短距離馬の層を厚くする。しかも、近年はエーデルワイス賞JpnIIIを好走した馬が、移籍せず門別の短距離戦を賑わすケースも出てきた。19年のエーデルワイス賞JpnIIIで2着に健闘したアザワク、その妹で昨年のエーデルワイス賞JpnIIIを制したソロユニットが好例だ。アザワクは1000メートルのスペシャリストとして、スーパースプリントシリーズを賑わす存在となっているが、意外にも前走が初めての1200メートル戦優勝だった。ソロユニットは岩手遠征で結果を出し、JRA芝重賞に挑戦するなど、この夏は異なる舞台で頑張った。

以前に比べれば、生え抜きのオープン馬が確実に増えた。そして、JRAなど他地区から移籍する馬のレベルも上がった。昨年の北海道スプリントカップJpnIII、そしてウポポイオータムスプリントなどを勝利したメイショウアイアンや、道営スプリントを鮮やかに差し切ったジャスパーシャイン、エトワール賞で重賞初制覇を飾ったイダペガサスなど。それらが入り混じった今年のウポポイオータムスプリントは、2回目にして存在感を増すレースとなった。

昨年は稍重で、オールドベイリーが前半3ハロン34秒3のハイラップを刻み、アザワクが行き切れなかった。今週は雨にたたられたため、序盤のペースは当然、昨年並みに速くなることが想定された。昨年は消化不良の内容だったアザワクが確実に逃げると思われ、その通りの展開になったが、前半3ハロンが11.7-10.9-11.6=34秒2と、昨年以上に厳しい流れに。600メートル地点で、馬群の後ろにいたイダペガサスが先頭から0秒6、馬群から離れていたメイショウアイアンは1秒6、そしてジャスパーシャインは2秒3も先頭から遅れをとっていた。

勝負所の4ハロン目も11秒9とラップが落ちなかったので、直線の攻防は残り1ハロンで横にズラーっと広がる好レースとなった。その中で、ジャスパーシャインの勢いだけが違った。最後の100メートルでさらに加速し、上がり3ハロン35秒2と破格のタイムで、2着争いを演じていた3頭に2馬身半差をつけた。2番目に速い上がりをマークしたメイショウアイアン(4着)が36秒4だったことを考えると、まさに次元の違う末脚だった。

「春のレースぶりが今ひとつだったので、最近は返し馬を長めに行うようにし、多少なりともレースの雰囲気を感じさせるようにと工夫していました。2走前に勝った時も、まだ手前の替え方に物足りなさを感じたものの、今回はしっかり手前を替えて伸びに変化も出たので、工夫し続けた成果が出たのかなと感じています」と、阿部龍騎手は笑顔で答える。

昨年の道営スプリントと勝ち時計は全く同じ1分11秒7。しかし、上がり3ハロンは上回った。道営スプリント連覇に向け着実に上昇しているジャスパーシャインは、弾みのつく重賞制覇となった。

取材・文 古谷剛彦

写真 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

阿部龍騎手

速い馬が揃っていることを意識し、馬の気持ちを尊重しつつ、道中置かれながらも、前を捕えられる位置でレースをしようと心掛けました。脚を溜めるような道中の余裕はありませんでしたが、最後までしっかりと脚を伸ばしてくれました。

佐久間雅貴調教師

追い込み馬なので、展開に左右されますが、時計勝負になる道悪の方がハイペースになりやすく、末脚を生かせるんでしょうね。継続して乗っている阿部龍騎手が、試行錯誤しながら結果に結びつけてくれていると感じます。今回の疲れをしっかり取って、道営スプリントの連覇を目指したいと思います。