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第23回兼六園ジュニアカップ

北海道の人気馬が力の違い示す
  地元期待馬も次につながる2着

2013年~20年は金沢所属馬限定だった兼六園ジュニアカップが、今年は地方全国交流重賞として北海道から2頭、浦和と愛知から各1頭の遠征馬を迎えて行われた。

人気の中心は、やはり2歳馬のレベルの高さに定評のある北海道勢。多くの有力若駒を擁す角川秀樹厩舎がオンストロンとエンリルの2頭を送り込んだ。1番人気に支持されたのはエンリル。スタートの速さに加え、直線でも後続を離すレースぶりを見せて3戦2勝。前走では初のコーナー4回となる門別1500メートルを勝ち、距離やコース形態に目途を立てた。

同じく前走で今回と同じ1500メートルを勝ったのは浦和のカイル。デビュー時はスタートでやや立ち遅れていたのが、レースを重ねるごとにスタートが安定し、前走は先行して直線での追い比べを制しての勝利だった。

一方、迎え撃つ地元勢の筆頭格は重賞・金沢プリンセスカップを勝ったエムティアンジェ。門別からの移籍初戦が重賞制覇となったのだが、栗原大河騎手は「4コーナーで後ろを確認するくらい手応えに余裕がありました」と着差以上に強さを感じたようだ。

他の地元馬はと言うと、新馬戦を勝ったばかりでキャリア1戦のオーミルーナのみで、他地区馬4頭+地元馬2頭の6頭立てという少頭数。やや寂しくはなったが、遠征馬の層が厚かったことも一因だろう。

好スタートから先手を取ったのは予想通りエンリル。その外にエムティアンジェ、さらに外にカイルとつけた。

エンリルの手綱を取った兵庫の吉村智洋騎手は普段騎乗する園田競馬場と違い、内ラチから大きく空けて走る金沢競馬場の馬場について「昨日、今日とレースを見ていますが、どこを通ったらいいのか分かりません」と言いつつも、対応策を用意。安全策を取って外を通りすぎた場合に内からすくわれるリスクを考え、ライバルたちが自分の外に付けるような場所を通ったのだ。奇しくも2番手外につけたのは地元コンビのエムティアンジェと栗原騎手。慣れないコースでの逃げは戸惑いが生じると話す騎手は多いが、さすがは18年地方全国リーディングジョッキー。うまく走りやすいポイントを見つけ、3~4コーナーでエムティアンジェとともに後続を離しにかかった。直線に入るとさらにリードを広げ、3馬身差をつけて優勝。

2着エムティアンジェは「4コーナーまで踏ん張れてすごいです。馬体重が増えてきたことで成績にも繋がっているのだと思います」と栗原騎手は悔しさの中にもこの先への可能性を感じ取っていた。さらに4馬身離れた3着はカイルで、岡部誠騎手は「ペースが速くなったらついて行けなくなりました」と振り返った。少頭数の人気上位3頭での決着とあって、3連複は1番人気で130円だった。

勝ったエンリルは今回507キロと2歳ながら大きな体だが、「そのわりに素軽い走りをします」と吉村騎手。ここまで4戦すべてで逃げているため、今後は砂を被った場合や、パワーを要する馬場への対応などがポイントになるだろうが、かなりの楽しみを秘めた馬であることは間違いない。

この日、角川調教師は地元で開催があったため金沢に駆け付けることはできなかったが、関係者によると今後はJBC2歳優駿JpnIIIを視野に入れているということだ。

取材・文 大恵陽子

写真 築田純(いちかんぽ)

Comment

吉村智洋騎手

強いのひと言です。返し馬で「2歳では抜けている」と感じました。スタートだけしっかり決めて逃げられれば、負けないだろうと感じていて、直線でも余裕があってまだまだ伸びると思いました。素直な気性で、操縦性もスタートも良くて、欠点があまり見つかりません。先々が楽しみですね。