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第48回オータムカップ

断然人気に応え大差で逃げ切る
  グレード勝ち馬が格の違い示す

9月8日に、およそ8カ月ぶりに再開された笠松競馬。

しかし岐阜県に新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言が発出されたため、9月末日までは無観客。10月1日の場外発売から競馬場への入場が開始され、10月5日からは1月12日以来、9カ月ぶりにファンの前での競馬が始まった。その初日は785名が入場し、2日目は821名。そして再開後では初めての重賞、オータムカップが行われる3日目は885名の入場者があった。

その場内は、売店や食堂もほとんどが営業していて、見た目の風景は以前とまったく同じもの。大きな違いといえば、笠松所属騎手が9名になったため、愛知所属騎手の姿が増えたことが挙げられる。オータムカップも笠松の騎手が3名に対して、愛知の騎手は7名。そして金沢のマインシャッツ、兵庫のテーオーエナジーはそれぞれ地元の騎手が手綱を取った。

そのなかで注目を集めたのが、兵庫からの遠征馬、テーオーエナジー。JRA所属時に兵庫チャンピオンシップJpnIIを制し、オープン特別を2勝した実績は断然だ。心配点といえば、2019年3月以降がすべて6着以下という近況と、移籍初戦での遠征競馬。最終的には単勝1.3倍になったが、そのあたりが約1年ぶりの前走を快勝したヒルノデンハーグも3.1倍の支持を得た要因だろう。しかし3番人気はエネスクで21.3倍。上位2頭に人気が集中する形でレースを迎えた。

オータムカップは1着賞金が昨年の250万円から400万円に増額。しかしそれ以上にテーオーエナジーにとっては「兵庫は移籍初戦だと重賞に出走できなくて、一般戦に出ると(この馬の場合)負担重量が59キロになってしまう」(橋本忠明調教師)という事情が大きかった。パドックでは発汗が目立っていたが、馬体から発散する雰囲気には、ほかの馬とは違うものがあった。

1900メートルのスタート地点は向正面。ゲートが開くと、すぐにテーオーエナジーが先手を取った。ヒルノデンハーグも行き脚がついて2番手をマーク。3番手にはサンライズフルメンが付けて、1周目のスタンド前でエネスクが位置取りを上げていった。

しかし勝負を仕掛けた馬たちにとって、今回は相手が悪かった。2周目の向正面でテーオーエナジーの鞍上、田中学騎手がゴーサインを出すと、そこから後続の各馬は置き去りにされてしまったのだ。2番手のヒルノデンハーグは追いかけようとしたが、逆に失速して最下位。エネスクも失速して、4着から5馬身離れた5着に敗れた。

それを考えると、3番手を進んで2着に粘った単勝10番人気のサンライズフルメンは、無欲が功を奏したのかもしれない。3着には最後の直線で一気に差を詰めてきたミラクルシップ。2着とはハナ差だったが、見どころがある走りだった。

とはいえ、勝ち馬と2着馬の差は2秒7。田中学騎手は「いやあ、強かったですね」と、満足そうに話した。

管理する橋本調教師も笑顔。しかし同じ厩舎には中距離重賞で活躍中のジンギとエイシンニシパがいる。そうなるとレース選択が悩みどころになりそうだが、橋本調教師は「調教での走りや気性を見ると、短い距離にも対応できるのでは」と感じているとのこと。であれば、今後の大きな目標として兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIが浮上することになるのかもしれない。

取材・文 浅野靖典

写真 岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

田中学騎手

半信半疑というところはありましたが、調教でいいスピードを持っていると感じましたし、実績もあるので自信を持って乗りました。でも想像していた以上でしたね。レースの内容がとてもよかったですし、これからまだまだ良くなってくると思います。

橋本忠明調教師

正直、手探りというところはありましたし、笠松に着いてからの興奮がひどくて心配しました。でも田中騎手が地元開催中でも乗ってくれましたし、結果を出すことができたのでホッとしました。これで東海菊花賞の優先出走権をいただけたので、まずはそれを本線にして、次以降を検討したいと思います。