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第34回マイルチャンピオンシップ南部杯JpnI

直線抜け出し人気にこたえる
  馬場も枠順も味方に連覇達成

今年は第20回(2007年)以来、14年ぶりに優勝賞金が6000万円に戻った。

昨年は当日昼過ぎに降り出した雨がマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIでは本降りとなり、1分32秒7の日本レコードで決着となった。今年は朝からの雨で第7レースまでは重馬場、第8レースからは不良馬場へ。しかし、第10レースには雨もあがり、風の流れは盛岡名物ジャンボ焼き鳥を焼いている煙がパドックからゴール板に向けてかなりモクモクと流れていたし、外にいればいい香りも鼻についた。ここまで煙がハッキリ見えるのも珍しいことで、これも盛岡競馬。

さきたま杯JpnII勝ちから休み明けでも連覇を狙うアルクトスが単勝3.2倍の1番人気。かしわ記念JpnI・2着馬ソリストサンダーが4.1倍の2番人気、フェブラリーステークスGI・2着馬エアスピネルが4.9倍の3番人気、一昨年の南部杯JpnI覇者サンライズノヴァが5.6倍の4番人気、約2年8カ月ぶりの勝利を狙う実力馬インティが6.1倍の5番人気で、上位5頭が10倍を割る混戦模様のオッズ。

ヒロシゲゴールドの厩舎コメントを読むと「マイルは距離が長いのでじっくり脚をためる競馬で」と控えるもの。レースは何が先手を取るかわからぬ状況。

スタートが切られると、押して押してワークアンドラブがハナに立ち、ぴったりマークするヒロシゲゴールドに、ワイドファラオ、アルクトスが続き、サンライズノヴァ、ソリストサンダーまでが先行集団。それを見る形でエアスピネル、インティが追走。

JRA勢にとってはそれほど速いペースではないだろうが地方馬には厳しい流れ。4コーナーを回って余裕ある手応えでアルクトスがヒロシゲゴールドに並びかけ、直線でソリストサンダーは馬群へ、インティは外へ持ち出して追い込む。坂を登ってグイグイと迫力ある走りでアルクトスが一気に抜け出して7頭目(中央交流後は6頭目)となる南部杯JpnI連覇を達成した。

今年5月に盛岡競馬場は砂の入れ替えを行い、ダートは時計を要す馬場。当日の雨の影響で高速馬場になったが、昨年より2秒6遅い勝ちタイムは1分35秒3(ラップは、12.4-10.5-11.8-12.0-12.1-12.1-11.9-12.5)。2着となったヒロシゲゴールドは距離が不安視されたが、クラスターカップJpnIIIで2着、2着、3着のとおり盛岡は相性が良いコースということだろうし、直前に補欠から繰り上がった運もあった。

田邊裕信騎手は、「浦和・さきたま杯の1番枠が窮屈で厳しい競馬で、今日は外枠を引いたので普通にスタートが切れたらスムーズな競馬をしようと思っていました。道中のペースが僕が考えていたよりもスローではありましたし、その中で競ってくる馬もいませんでしたから、割と余裕がありながら直線を迎えることができました。一戦一戦、頑張って走ってくれる、僕が大好きな馬なので応援してくれる人がいれば嬉しいです」。田邊騎手は第29回、30回(16、17年)にもコパノリッキーで連覇しており南部杯JpnIは4勝目。最後に「昨年と今年の違いは1走するとダメージが大きく回復に時間がかかって仕上げて使うのが大変」とも語ってくれた。

「連覇は田邊騎手がうまく乗ってくれた。攻め馬では思っているほど走ってくれないけど、大型馬だから叩いて良くなるという固定概念ではなく、ベストの状態でこの馬にあわせての調整がいい。昨年は鍛えて鍛えてだったが、ファンの多い馬なので今年は馬を大事に年間3~4走で長く使っていきたいですね。勝ったからといってJBCにはいかないですよ。年内は休養で……」と栗田徹調教師。

取材・文 峯村正利

写真 佐藤到(いちかんぽ)

Comment

田邊裕信騎手

去年は強い馬もいて1番人気ではなかったが、今年は回りから見られる立場だったのでプレッシャーはありました。年齢を重ねて絶好調をキープすることは難しくなって、いつもとは違う調整過程でしたが良い状態で出走できました。去年に続き勝つことができて嬉しいです。

栗田徹調教師

夏は北海道へ移動して球節のケアをしながら調整。今のこの馬には連戦をさせるより、休養を取って使ったほうが力を出せるようです。枠順が発表されたときは安心しました。外枠なら揉まれることもないですし、いいポジションで競馬ができると思いましたからね。雨が降って馬場も味方してくれました。