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3歳秋のチャンピオンシップ2021 総括


クローズアップ

2021.10.12 (火)

北海道・佐賀で三冠馬が誕生
 ダービーGPには好メンバー集結

3歳秋のチャンピオンシップがシリーズ化されて5年目。当初、ファイナルのダービーグランプリは11月の実施(2018年は日程延期のため12月)で、対象レースでは黒潮盃(大井)のみ8月の実施で、以降のレースは9月以降に実施されていた。

ところが2019年にダービーグランプリが10月第1日曜日に繰り上げられると、各地の対象レースもそれに対応して日程を変更。年を追うごとに実施時期を繰り上げるレースが増え、2019年には8月実施の対象レースが3レースだったのが、2020年には王冠賞(門別)が7月実施でも対象レースのまま認められ、8月以前の対象レースが4レース。そして今年は休止となった岐阜金賞(笠松)も含めると、ファイナルのダービーグランプリを除く対象レース10レースのうち半数の5レースが8月以前の実施となった。こうなるとさすがに「秋の……」というには季節感のズレは否めない。

また、ダービーグランプリを繰り上げたことによって西日本ダービーと、西日本地区の対象レースの日程も難しいものとなっている。サラブレッド大賞典(金沢)と黒潮菊花賞(高知)は、西日本ダービーとの間隔をとるためか、それぞれ昨年より2週繰り上げられた。8月以前のレースが半数になったのはこのため。ただロータスクラウン賞(佐賀)は昨年8月中旬に繰り上げたものを、今年は4週繰り下げ、これによって西日本ダービーと中1日となった。

それでも今年はファイナルのダービーグランプリがフルゲートを16頭(実際に出走したのは14頭)、他地区枠を10頭に拡大。さらに1着賞金を昨年の1500万円から2000万円に増額したことなどで、地方全国交流らしいメンバーが顔を揃えることになった。

王冠賞(門別)

ラッキードリームがホッカイドウ競馬史上6頭目の三冠を達成。しかも前年に第1回のJBC2歳優駿JpnIIIを制した馬が、北海道三冠を達成したということでは、双方の価値を高めることになった。

その三冠戦線では、ラッキードリームと同じ林和弘厩舎のリーチが2、2、3着。それでもラッキードリームの勝利をアシストしたわけではなく(馬主は違うので当然だが)、リーチの服部茂史騎手は、常にラッキドリームに勝つにはどうすればいいかを考えた、真っ向勝負のレースぶりも見応えがあった。

ラッキードリームは一冠目の北斗盃が今年初戦で、北海優駿、そして王冠賞と、三冠レースのみに出走して三冠を達成。近年中央競馬では、チャンピオン級の馬はステップレースを使わずGIを勝つこともめずらしくなくなったが、ホッカイドウ競馬でそれができるようになったのは坂路調教の効果といえるだろう。

なお管理する林和弘調教師は、王冠賞から約1カ月半後の9月4日に57歳の若さで亡くなられた。ご冥福をお祈りします。

サラブレッド大賞典(金沢)

門別デビューで、笠松、大井、岩手と所属を移し、その中で新春ペガサスカップ(名古屋・2着)、あやめ賞(水沢・2着)、東北優駿(水沢・5着)など、タイトルにはあと一歩で手が届かなかったベニスビーチが、3歳の8月という時期ですでにデビュー20戦目、重賞挑戦7戦目での初タイトルとなった。

金沢2戦目のMRO金賞では、菊水賞(園田)を制して兵庫ダービー(園田)でもハナ差2着というシェナキングにクビ差2着と食い下がり、地元勢では北日本新聞杯、石川ダービーを連勝してきたアイバンホーを4馬身差3着に下したことで関係者は手応えを感じていたのだろう。単勝1.3番人気という期待に応えての完勝だった。

各地を転戦し、勝てそうなレースを狙ってタイトルを手に入れるというのは、いかにも地方競馬らしい。

黒潮盃(大井)

南関東三冠の上位馬か、夏の上がり馬か、もしくは他地区から遠征の重賞実績馬か、という黒潮盃。今年はめずらしく南関東三冠からの参戦が少なかった。羽田盃(大井)からは12着のノットリグレットのみ、東京ダービー(大井)からは4着ジョエル、12着サヨノグローリーの2頭、ジャパンダートダービーJpnI(大井)も8着のジョエルだけ。そのメンバーならと2連勝中の上がり馬パストーソが1番人気に支持されたが、勝ったのはジョエルだった。

2着パストーソに5馬身差をつける圧勝。しかも1頭だけ58キロを背負ってということでは、着差以上の強さ。春にはクラウンカップを制していたが、東京ダービー、ジャパンダートダービーJpnIと、厳しい相手と戦ってきた経験が生かされた。

黒潮菊花賞(高知)

ハルノインパクトに高知三冠のかかった一戦。そうなるとライバルから厳しいマークを受けるのは必然。

ハルノインパクトは手応え十分のまま3コーナーで先頭に立ち、これに真っ向勝負を挑んだのが、黒潮皐月賞、高知優駿ともに5着だったダイヤマリー。4コーナー手前で並びかけ、直線は追い比べとなったが、ハルノインパクトが直線でなんとか振り切った。その機会を狙っていたかのように、内から差し切ったのが、黒潮皐月賞では8着と歯が立たなかったトーセンジェイク。デビュー3年目の多田羅誠也騎手が、2年連続で伏兵ながらこのレースを制したのも印象的だった。

不来方賞(盛岡)

ここもリュウノシンゲンに三冠がかかった一戦だが、思わぬ強敵が現れた。

マツリダスティールが内枠からハナに立つと、ぴたりと追走してきたゴールデンヒーラー、リュウノシンゲンを従えての逃げ。3コーナーから徐々に後続との差を広げると、2着のゴールデンヒーラーに2秒6の大差をつけて圧勝。リュウノシンゲンは3コーナーあたりから手応えが怪しくなり、ゴールデンヒーラーにも5馬身差をつけられての3着だった。

芝適性を期待されていたマツリダスティールだが、イーハトーブマイルを思った以上の強い勝ち方をしたことで不来方賞にも出走。管理する菅原勲調教師も「ダートでこれだけの走りというのは自分でも想像していませんでした」という驚きの強さだった。

差をつけられての3着だったリュウノシンゲンはこれが実力ではなく、あらためての対戦に期待したい。

園田オータムトロフィー(園田)

兵庫ダービーをハナ差で1、2着を争ったスマイルサルファー、シェナキングが揃って5日後の西日本ダービーに向かったこともあり、菊水賞、兵庫ダービーの出走馬が1頭もいないメンバーとなった。このレースも西日本ダービーも1着賞金は同じ500万円だが、やはり交流のタイトルを獲りにいったということか。反面、高知優駿に出走したクレモナ(3着)、ビルボードクィーン(11着、当時は金沢所属)がいたというのは興味深い。

そういうメンバーゆえに勝ったのは春から夏にかけての上がり馬エイシンビッグボスだった。園田1400メートルでは4戦4勝という成績を残しているだけに、11月2日の楠賞に出走すれば遠征馬を相手にどんなレースをするか注目だ。

ロータスクラウン賞(佐賀)

佐賀でも三冠馬が誕生。3コーナーで先頭に立ったトゥルスウィーが、ゴール前でタガノリヴェラーノに差を詰められたものの1馬身1/4差をつけて振り切った。

トゥルスウィーは昨年12月に門別から移籍後、佐賀所属としては11戦8勝。負けたのは1400メートルの飛燕賞(3着)、遠征した高知優駿(4着)、古馬相手の九州チャンピオンシップ(2着)の3戦。特に初めての古馬重賞・九州チャンピオンシップでは、現在佐賀の古馬最強と思えるドゥラリュールに負けただけ。地元の同世代同士、さらに中距離でということなら断然だ。

西日本ダービー(名古屋)

第6回の西日本ダービーは名古屋。これで西日本地区の主催者はすべて回ったことになる。

西日本地区の3歳重賞では、園田オータムトロフィー、ロータスクラウン賞と近接日程となった。そして前述の通り、兵庫ダービー1、2着をハナ差で争ったスマイルサルファー、シェナキングが遠征。地元勢は二冠のトミケンシャイリが中央からの転入馬ゆえ出走資格がなく、ブンブンマルが地元の期待を背負うことになった。

しかしながらやはり兵庫の2頭が力の違いを見せた。スマイルサルファーが直線を向いて先頭に立ち、シェナキングが追ったものの1馬身差まで。それにしても兵庫ダービーでは直線大外一気を決めたスマイルサルファーが、好スタートで内の3番手。その位置からスパートされては展開的にもシェナキングは劣勢だった。

戸塚記念(川崎)

ジャパンダートダービーJpnIを人気薄で逃げ切ったキャッスルトップだが、逃げ馬がマークされる立場になると厳しい。絶好の1番枠に入って逃げたものの、ギャルダルに厳しくマークされ3コーナーで苦しくなってしまった。直線先頭のギャルダルに、そのうしろで構えていたトランセンデンス、ジョエルがとらえにかかったところ、さらにうしろにいたセイカメテオポリスがまとめて差し切った。逃げ馬を巡る争いとなり、控えて直線勝負に賭けたセイカメテオポリスに展開が味方した。

ダービーグランプリ(盛岡)

冒頭のとおり他地区枠が10頭となったダービーグランプリは、南関東6頭、北海道2頭、兵庫、金沢から各1頭が遠征。3歳秋のチャンピオンシップのボーナス対象は、王冠賞(門別)のラッキードリーム、不来方賞(盛岡)のマツリダスティール、黒潮盃(大井)のジョエル、戸塚記念(川崎)のセイカメテオポリス、サラブレッド大賞典(金沢)のベニスビーチと5頭が揃った。

しかし大挙6頭が参戦した南関東勢が層の厚さを見せた。そしてそのうち5頭が戸塚記念から中1週とちょっとというローテーション。

内枠に入って逃げるしかないキャッスルトップは、ケラススヴィア、ギャルダルに突かれる展開となって、1000m通過が60秒6というハイペース。そのうしろ、2列目を追走していたギガキング、ジョエルの追い比べとなって、ギガキングがクビ差で先着。セイカメテオポリスは戸塚記念同様、中団追走から直線に賭けたが、今回は1、2着馬に展開が向くかたちになった。

結果、戸塚記念の5、3、1着馬という順で決着。南関東のこの世代は、牝馬限定戦では二冠を制して関東オークスJpnIIでも2着だったケラススヴィアが圧倒的だが、牡馬はレースごとに勝ち馬が変わる高いレベルで能力拮抗といえそうだ。

残念ながら3歳秋のチャンピオンシップのボーナス獲得馬は出なかった。

地方全国交流の盛り上がり

今回のダービーグランプリのワクワクは、ダービーグランプリが中央との交流になる以前、まだ地方同士でも交流が少なかった時代を思い起こさせるようなものだった。今回の1着賞金2000万円は、第1回(1986年)~第4回(89年)と同額。第5回(90年)から3000万円となり、第7回(92年)~第10回(95年)は5000万円。初期に地方全国交流で行われていたダービーグランプリは、南関東以外では破格の高額賞金ということでも注目度は高かった。その後中央との交流になって地方馬は歯が立たない時代があり、財政難による廃止の危機、さらに東日本大震災という苦境を乗り越えて復活したダービーグランプリが、今またこうして地方同士の交流レースとして盛り上がるのは感慨深い。