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ヤングジョッキーズシリーズ TR 川崎

地元古岡騎手が1着・2着で暫定首位
  岩手で腕磨く七夕騎手はYJS初勝利

川崎競馬場で行われたヤングジョッキーズシリーズのトライアルラウンドは、いろいろなアクシデントが発生した。

まず、岩手の塚本涼人騎手が2日前の盛岡競馬で、馬場入場時の落馬で骨折。トライアルラウンド盛岡では勝ち星を挙げ、最初で最後となるファイナルラウンドへの進出に向けて上々の滑り出しを見せたところだったが、無念の欠場。第1戦で塚本騎手が騎乗予定だった馬は、大井の田中洸多騎手に乗替わりとなった。

その第1戦は、発表は曇でも霧雨が降るコンディション。締め切り20分前あたりでは出走14頭のうち12頭の単勝オッズが30倍未満だったが、徐々に上下の差がついて、最終的には10倍未満が4頭になった。

しかしファンファーレが鳴ったあと、締め切り時点で単勝7番人気だったテンカウントがゲートの扉を突き破って暴走してしまった。鞍上の池谷匠翔騎手(川崎)が懸命に手綱を引っ張っても勢いは止まらず、ほどなく競走除外の放送が流れた。

13頭による争いに変わった第1戦は、このレースが地方競馬での初騎乗となる横山琉人騎手(JRA)が、大外枠から先手を取り切った。2番手には1番人気の木幡育也騎手(JRA)がつけたが、その流れは明らかにスロー。最内枠から先行策を狙った関本玲花騎手(岩手)が「ペースが遅くて最後までゴチャゴチャした感じ。1コーナーではちょっとぶつかりましたし、向正面でも4コーナーでも前に入られて、けっこう危なかったです」と話していたが、スタンドから見てもそのとおり。道中では脚を溜めた馬が次々と仕掛けていく形になった。

そのなかで、もっともうまく脚を使えたのが勝った古岡勇樹騎手(川崎)といえるだろう。1コーナーでは後方にいたが、向正面ですこし位置取りを上げて、4コーナーでは前が開いたところを突いて差し切り勝ち。木幡騎手が2着に粘り、3着には神尾香澄騎手(川崎)が入った。

レース後に古岡騎手は「30ポイントは大きいですね」と笑顔。4着の中島良美騎手(浦和)も8番人気での善戦に笑顔を見せていたが、その中島騎手がアクシデントに襲われた。

第2戦で騎乗しようとした瞬間、無観客のパドックになんとも言えぬうめき声が響き、中島騎手がうずくまったのだ。右手に持っていたムチを落として左の二の腕を押さえる仕草は、左肩の脱臼。そのまま背中を丸めながら歩いて医務室に向かったが、すぐに騎乗できないことは明らかだった。

となると、代わりは誰か。1鞍だけの騎乗だった関本騎手は「明日は攻め馬があるんです」とのことで、早々に競馬場を後にしていた。そこで白羽の矢が立ったのが、メインレースの鎌倉記念で重賞初騎乗を控えていた船橋の木間塚龍馬騎手。騎手の休憩所にいたところを呼び出され、走って検量室に向かって鞍を準備して、勝負服を着て装鞍作業。そのため馬場入場は投票締め切りのチャイムが鳴ったあとで、返し馬なしでゲートインすることになってしまった。その状況は10着に敗れた馬にとって気の毒だったが、木間塚騎手は「重賞に向けて、いいウォーミングアップができました」と前向き。そして「これでポイント的に不利になることはないですよね?」と確認。報道陣から船橋での2戦があるから大丈夫という回答を得て安心したようだった。

その第2戦を制したのは七夕裕次郎騎手(浦和)。現在は岩手で期間限定騎乗中だが、久しぶりとなる南関東の競馬で存在感を見せた。2着には先手を取った古岡騎手が粘り込んで、2戦とも連対。その姿に「古岡君はこういうレースで強いんだよな」と山崎尋美調教師が感心していた。

続く3着には9番人気の田中騎手が入った。「本当は逃げたかったんですが、スタートでよれてしまって。返し馬から手応えがよかったのですが、最後は脚がなくなりました」と反省しながらも、トライアルラウンド4戦目にして初めての掲示板を喜んでいた。

逆に第1戦で3着だった神尾騎手(13着)は「(ポイント的には)全然ですよね」と思案顔。しかし神尾騎手には最低でも残り2回の騎乗機会がある。そこで好結果を残せばファイナルラウンド進出の4位以内が見えてくる。

一方、地元開催で好結果を残した古岡騎手はファイナル進出の可能性が高まった。それを伝えても「本当に大丈夫ですよね」と、心配そうにポイント表を確認していた。その話を横で聞いて笑っていたのが担当バレットの渡部渉さん。「僕は臼井健太郎(第1回優勝)、櫻井光輔(第2回優勝)、吉井章(第4回優勝)を担当しているんだから」と勇気づけていた。

取材・文 浅野靖典

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 古岡勇樹騎手(川崎)

ゲートを出れば先行できる馬なのですが、行くと最後が甘くなるので後ろからの競馬にしようと考えました。道中も前が開いてきたのでインを狙いましたが、最後は脚があったのでその外を通ることにしました。でも第2戦は僕がずっと乗っていた馬が勝って、僕が2着。そこは納得いかない感じです(苦笑)。

第2戦1着 七夕裕次郎騎手(浦和)

ヤングジョッキーズシリーズで勝ちたいと思っていて、最初の門別が3着でくやしい思いをしたので、ここで結果を出せてホッとしています。少しでも岩手に行って変わったな、というところを見せていきたいと思っていますので、次の浦和も頑張ります。