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第24回エーデルワイス賞JpnIII

内を突いてゴール前差し切る
 重賞連勝でダートグレード制覇

スピーディキックの父であるタイセイレジェンドは2012年のJBCスプリントJpnI(川崎)の優勝馬である。2015年に現役を引退後、次の年から新冠・優駿スタリオンステーションでスタッドインを果たす。決して多いとは言えない種付け頭数から、3世代目となるスピーディキックが、父に初めての重賞タイトルだけでなく、ダートグレード初制覇も授けてみせた。

「この配合を考えたのは加藤(鈴幸)オーナーです。産まれた頃から母(デザートフラワー)譲りと言える、馬体の良さがありました」と話すのは生産者の熊谷武さん。本来は他地区でデビューするはずだったスピーディキックだが、縁あって、ホッカイドウ競馬の石本孝博厩舎で管理されることになった。

「こちらに来た頃は肉体面だけでなく、精神面でも幼さが見られており、時間をかけながら調教を行ってきました。ゲート試験にも苦労したほどでしたが、レース経験を重ねていくうちに目覚ましい成長を遂げました」とは石本調教師。9番人気で臨んだフレッシュチャンレンジ競走では、後方から追い込んで2着。3戦目にアタックチャレンジ競走を勝利すると、重賞初挑戦となったリリーカップでも、大外一気の末脚でタイトルを掴み取った。

中央馬4頭を含む14頭立てとなった今年のエーデルワイス賞JpnIIIで、スピーディキックは3番人気という評価を集めた。

ゲートが開くと、大外から勢いよく飛び出していったのはスティールノーヴァ。しかしインコースからナックドロップスが主導権を握っていき、1番人気のヒストリックノヴァはその後ろ。一方、これまでスタートで立ち遅れることが多かったスピーディキックだったが、スムーズにゲートを出ると、中団よりややうしろで脚を溜めた。

「これまでのレースで一番いいスタートが切れたと思いました。あの位置でレースを進められれば、このメンバーが相手でもチャンスはあるのではと思いました」と石本調教師。

一方、鞍上の岩橋勇二騎手も好スタートを切れたことで、これまでよりも楽な位置取りでレースができていると感じていた。「直線では必ず伸びてくれる馬なので、それまでは息を入れていきたいと思いました」

しかしながら、直線を向いたあたりで前が壁となり、武器となる末脚を封じ込まれたかと思いきや、岩橋騎手の手綱に導かれるように、内側へと進路を取ると、ゴール手前では先に抜け出しを図ったヒストリックノヴァをクビ差交わしてゴール。外からじりじりと迫ってきたエイシンヌプリがアタマ差で3着に入った。

歓喜の瞬間を見届けた、生産者の熊谷さんだが、スピーディキックのレースは常に競馬場まで応援に来ていた。「前走(リリーカップ)は口取りに入れなかったので、さらに大きなレースで表彰式に上がらせてもらえたのは、とても嬉しいです」。そう話す熊谷さんに今後の期待を訪ねると、「重賞での活躍もそうですが、まずは無事に競馬を続けてもらいたいです」と笑顔を見せる。今年の種付け頭数は10頭にとどまったタイセイレジェンドだが、孝行娘の活躍が後押しする形で、来年は忙しいシーズンを送ることになりそうだ。

取材・文 村本浩平

写真 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

岩橋勇二騎手

4コーナー手前では空いたところを狙って行きました。結果的に狭いポジションに入ったにもかかわらず、根性で走ってくれました。一生懸命に馬を追っていたので、勝ったかどうかは分かりませんでした。道中の折り合いもつきますし、もう少し距離が伸びても走れる馬だと思います。

石本孝博調教師

前走から馬体を減らしていたので、それを戻す形で調整を行ってきました。直線では前が詰まりましたが、岩橋騎手が上手く捌いてくれました。他馬との接触もあった中で、ひるまずに走ってくれた馬も優秀だと思います。この後は体調を見てからになりますが、登録のあるJBC2歳優駿を目指していきます。