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第2回JBC2歳優駿JpnIII

後半スタミナ比べを制す
  北海道勢も3頭が掲示板

10月以降の門別開催は、雨に見舞われる日が続いた。朝晩の気温が低い時期に入っているので、レース当日に晴れる時はあったものの、水分を含んだ馬場が乾き切ることはない。9月29日を最後に、良馬場で行われた開催はなかった。2日から3日朝まで降り続いた雨の影響で、午前10時に開門した時の馬場状態は、不良発表だったが、雨が止んで気温が上昇し、第1レースを前に重馬場に回復した。

全国最初の2歳重賞として定着している栄冠賞、そしてJBC2歳優駿JpnIIIに向けた中距離3重賞を振り返ると、良馬場で行われたのは、ブリーダーズゴールドジュニアカップのみ。サッポロクラシックカップは、前年の勝ち時計を2秒7上回るレコード決着。サンライズカップは、前年より2秒5も速かった。時計を大幅に詰めたことで、レベルが高い世代と片付けるのは容易だが、逆に道悪の競馬が続き、高速決着ばかりだと、時計の判断を見誤ることもある。その意味で、稍重で行われた栄冠賞が、1200メートルとはいえ最も注目すべきレースだった。

栄冠賞のレースラップは、前半3ハロン34秒4-後半ハロン38秒3。2歳6月だと考えれば、相当厳しいレースが繰り広げられていた。笹川翼騎手がコパノミッキーで参戦したが、「この時期で速い流れを経験できるのは、北海道以外の僕らにとって未経験。北海道の馬たちが強い理由が何となくわかりました」と話していた。坂路効果がクローズアップされるが、それとともに2歳のデビュー頭数が確保されている競馬なので、中央競馬のような勝ち上がり制が採られ、ピラミッドの図式がしっかりしている。栄冠賞で敗れた馬の中で、シャルフジンとリコーヴィクターが、後の中距離重賞を制したことから、栄冠賞が単なる短距離重賞ではないと、断言できる。栄冠賞を制したモーニングショーを含め、サンライズカップで重賞ウィナーたちを退けて重賞初制覇を飾ったナッジは、下級条件でも中距離戦が増えた8月に台頭。血統を考えても、距離が延びて結果が伴ってきたのは頷ける。

路線がしっかりしている北海道と比較すると、中央競馬の2歳戦は、ダートの番組が極端に少ない。今年の出走馬がすべて1勝馬。1勝クラスを経験した馬は1頭しかいない。しかも、長距離輸送を伴う点から、地の利を生かせる北海道勢が優位と考えてしまう。しかし、今年の中央勢は、各馬のレースを観ていた時に『今年は互角かそれ以上』と、個人的に感じた。アイスジャイアントとオディロンは、向正面から動きがあり、外から被される経験をしている。特に、アイスジャイアントは、3頭併せの真ん中で鎬を削った。オディロンも直線の攻防に渋太さを感じさせた。コマノカモンは、プラタナス賞で控える競馬を試みた内容が良く、この3頭は不気味に感じていた。

エンリルが先手を主張したが、外からシャルフジンが掛かり気味に追いかけたので、前半3ハロンが12秒0-10秒9-11秒9=34秒8と、短距離並みのハイペースになった。向正面に入って多少ペースが落ち着き、縦長の展開から少しずつ馬群が固まってくる。内枠だったアイスジャイアントは、ハイペースに戸惑い、ダッシュがつかず後方からのレースとなったが、ラップが落ちた向正面で少し位置を上げていた。ナッジは中団内で辛抱し、リコーヴィクターは3コーナー手前から仕掛けていく。

後半4ハロンは、すべて13秒台のスタミナ比べとなり、直線を向いての残り1ハロンでは各馬が横に広がる大混戦。アイスジャイアントがロングスパートを利かせ、内から迫るナッジの追撃を凌ぎ、2戦目で重賞制覇を飾った。1分53秒0の勝ち時計は、北海道2歳優駿を含めてレース史上3番目に速いタイム(門別1800メートルで実施時)。真冬の高速馬場だったキングオブサンデーの1分50秒8は例外的だったので、それを除けばハッピースプリント(1分52秒5)に次ぐものだった。

高柳瑞樹調教師、三浦皇成騎手も話していたが、まだ成長途上で、走りも幼い。その中で激戦に耐えた重賞勝ちは、今後のダート界を背負う存在に育つ可能性を感じる。北海道勢もナッジ、リコーヴィクター、シャルフジンの3頭が入着し、意地を見せた。JBCの2歳カテゴリーに加わり、北海道2歳優駿の時以上に、序盤の厳しさが明らかに増してきた。来年のダート界も、中央・地方ともに、この舞台を経験した馬が羽ばたいていくと信じている。

取材・文 古谷剛彦

写真 いちかんぽ(浅野一行、中地広大)

Comment

三浦皇成騎手

想定より後ろからのレースとなりましたが、経験が浅いので、あらゆることを想定して挑みました。終始手応えは良かったんですが、タフな馬場だと返し馬で感じたので、脚の使いどころを慎重にレースを運びました。2戦目で重賞を勝つことができたのは、潜在能力と素質の高さを持ってこそだと思います。

高柳瑞樹調教師

ゲートの出が遅く、思っていた以上に後方にいる形となりましたが、ハイペースで展開が向いた面もありました。ただ、成長の余地を残した段階で、厳しいレースの中、よく耐えてくれました。レース後の状態を見ながら、オーナーとの相談になりますが、全日本2歳優駿も視野に入れています。