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JBC2021 総括


クローズアップ

2021.10.15 (水)

絶対という思いが成就
 地方馬初のクラシック制覇

『絶対、JBC』という今年のキャッチフレーズのとおり、特に地方には「絶対JBCを勝つ」という思いで臨んでいる関係者は少なくないはずだ。しかしJBCが始まって20年、どうしても中央の厚い牙城を崩せなかったのが、メインとして行われるJBCクラシックだった。

その思いは21回目を迎えた今年、船橋のミューチャリーによって成就された。

前哨戦として、デビュー以来初めて関東圏から外への遠征となる、本番と同じ舞台の白山大賞典JpnIIIを選択したのは“絶対”という意気込みのひとつだっただろう。

もうひとつ、その白山大賞典JpnIIIから、デビュー以来ずっと手綱をとってきた御神本訓史騎手から吉原寛人騎手への乗替りがあった。どちらもいまの地方競馬を代表するトップジョッキーであることは言うまでもない。たしかにミューチャリーはそれまでダートグレードでの勝ち星はなかったものの、御神本騎手はGI/JpnIで掲示板内6回という好走に導いていた。ただ“絶対”という考えると、JpnI勝ちの経験もあり、コースを熟知している吉原騎手がベストの選択となったのだろう。

金沢所属の吉原騎手が、JpnI勝ちだけではない実績を重ねられたことは、ここ15年ほどで地方競馬のしくみが徐々にオープンになってきたことは大きい。

馬の遠征については、交流元年と言われた1995年から盛んになってきたが、騎手が所属地区以外で騎乗できるのは、交流レースで馬とセットで遠征するときか、ごく限られた騎手交流戦だけだった。

制限付きながら、地方競馬の騎手が所属地区以外での騎乗も可能になったのは、2005年3月限りで宇都宮競馬が廃止となったときに、当時宇都宮所属だった内田利雄騎手が「所属を決めずに騎手を続けることはできないか」と、行動を起こしたこと。それがきっかけとなって、期間限定騎乗(当初は短期所属替)や、所属地区以外の重賞(とその当日)でのスポット騎乗の制度ができた。

それを最大限に生かして活躍の場を広げてきたのが吉原騎手。南関東での期間限定騎乗では、地元トップジョッキーに匹敵する勝ち星を挙げ、ハッピースプリントでは南関東二冠制覇。2019年にはJRAのサンライズノヴァに騎乗してのマイルチャンピオンシップ南部杯、続いて川崎のヴァケーションでの全日本2歳優駿と、目標としていたJpnI制覇も達成。そうした経験と実績の積み重ねが、今回ミューチャリーに騎乗してのJBCクラシックJpnI制覇という、待ち望まれていた快挙につながったと思われる。

昨年に続いて事前抽選での入場

21年目を迎えたJBCは、2013年以来2度目の金沢競馬場と、昨年に続いて門別との2場開催。引き続き新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、両競馬場とも事前応募による抽選での入場となった。

それでもJBC開催前後のコロナ感染者は全国で1日あたり200人程度。相当に落ち着いた状況での開催となったのはよかった。

そして天候にも恵まれた。金沢競馬場ではレディスクラシックの2つ前、第6レースの発走直前にスコールのような雨があったが、それも一時的なもの。馬場状態は第5レースまで稍重だったが、その第6レース以降は良となった。

門別競馬場では朝まで雨が降っていて心配されたが、第1レースの前に雨は上り、第4レースまでは曇、第5レースのJBC2歳優駿以降は晴の発表に変わった。ただ馬場状態は1日を通して重だった。

金沢競馬場では事前抽選で1,300名に限定され、実際の入場は1,023名。制限のなかった前回13年は12,569名だったので、その1/10以下。その前回は、能登地方の食材やグルメなど野外テントでの出店が大盛況だったが、今回はさすがにコロナ禍の状況ゆえ常設店舗のみの営業で、特別なイベントも行われなかった。

門別競馬場では、一般来場者は抽選で150組(同伴1名まで)最大300名とし、馬主と生産者については前年同様、JBC2歳優駿出走馬主と生産者は本人と随行1名まで、その他の競走は馬主・生産者とも本人のみの入場に制限され、発表された入場者は来賓等を合わせて累計667名だった。

門別競馬場では、とねっこ広場に設置されたテント内で、『偉大なるホースマンを偲んで 追悼 岡田繁幸展』が行われた。JBC協会副会長をつとめ、今年3月19日に亡くなられた岡田繁幸氏の関連馬の写真パネルや、コスモバルクが制したJRA重賞の肩掛けなどが展示された。また、2019年のJBC浦和開催を前に収録された岡田氏のスペシャルインタビューの映像も上映されていた。

JBC(ジャパンブリーディングファームズカップ)は、文字通り生産者の祭典でもある。それゆえ、馬産地・門別競馬場でのJBC開催はかねてからの悲願となっていた。しかしそれが現実のものとなっての2年間は残念ながらコロナ禍でさまざまに制限されての開催。このJBCの日の門別競馬場にたくさんの生産者が集い、とねっこ広場でジンギスカンを囲んで盛り上がるような光景を早く見たいものだ。

近年続く地方馬の勝利

今年も2場開催はしっかり連携され、JBC競走の発走時刻は以下のように設定された。

金沢8R 14:15 JBCレディスクラシック

金沢9R 15:00 JBCスプリント

門別5R 15:40 JBC2歳優駿

金沢10R 16:20 JBCクラシック

また同日に開催があった他の競馬場でもJBCに合わせたスケジュールが組まれていた。

大井競馬場はナイター開催だが第1レースの発走を13:00に繰り上げた。そして14:05発走の第3レースのあと、第4レースの発走は、JBC4競走終了後の16:50。園田競馬場は13:45発走の第7レースがこの日の最終レースとなり、JBCはリレー発売となった。

JBC4競走の詳細については、それぞれのレースハイライトをご覧いただきたいが、簡単に振り返っておく。

JBCレディスクラシックJpnIは、スタート直後と1コーナーでごちゃつく場面があり、それで位置取りを悪くする馬も見られた。そうした中で、いつものとおり中団から不利を受けることもなく進めたテオレーマは、直線で持ち味である末脚を生かして鮮やかに差し切った。好位で砂をかぶることなくレースを進めたマドラスチェックが直線を向いて一旦は先頭に立ったものの2馬身半差2着。3着リネンファッション、4着レーヌブランシュでJRA勢が上位4着までを占めた。地方馬最先着の5着は浦和のラインカリーナ。日本テレビ盃JpnIIで牡馬一線級相手に逃げ切ったサルサディオーネは、やはり右回りは鬼門だったようで、逃げたものの4コーナー手前で一杯になって10着だった。

JBCスプリントJpnIは、逃げると思われたアランバローズのスタートが決まらず、モズスーパーフレアの単騎の逃げ。1番人気に支持されたレッドルゼルは5番手から進め、4コーナーから直線では内を突いてあっという間に抜け出した。地元の吉原騎手が手綱をとったサンライズノヴァも4コーナー6番手という位置から直線を向いて内に切り替えて伸び、3馬身差で2着。1、2着馬とも、内目の重い砂によるリスクよりも、距離ロスを少なくするというメリットを選択した好判断だった。モズスーパーフレアが3着に逃げ粘り、地方馬最先着の4着は大井のモジアナフレイバー。5着リュウノユキナ、6着サブノジュニアは、コーナー4つの1400mは難しかったようだ。

レッドルゼルの川田将雅騎手は、レディスクラシックのテオレーマから連勝。JBCで1日2勝は、2014年盛岡開催でレディスクラシック(サンビスタ)、スプリント(ドリームバレンチノ)を制した岩田康誠騎手以来2人目。通算ではスプリント3勝、クラシック2勝、レディスクラシック1勝と合わせてのJBC計6勝は、武豊騎手の10勝に次いで単独2位の記録となった。

JBC2歳優駿JpnIIIは、前が競り合ってのハイペースで先行勢総崩れ。最後方から徐々に位置取りを上げてきたJRAのアイスジャイアントが直線外から抜け出し、デビューから2連勝。内を伸びた地元のナッジが2着。3着にも地元のリコーヴィクターで、4着はJRAのオディロン。かかり気味に2番手でハイペースに巻き込まれた地元のシャルフジンはなんとか5着に粘った。地元の前哨戦サンライズカップの上位3頭が、順序を替えて掲示板を確保したということでは、この3頭は拮抗した高い能力を示した。

JBCクラシックJpnIは、冒頭のとおり21回の歴史で地方馬が初勝利。ミューチャリーはこれまで大レースでは中団~後方を追走し、直線末脚を発揮するも前には届かずというレースが多かったが、今回はゆったりした流れで外目3番手につけた。その位置から手ごたえ十分のまま直線を向いて、得意の末脚を生かす競馬で押し切った。外を伸びて半馬身差のオメガパフュームは、これで4年連続2着と悔しい結果。一昨年浦和の覇者チュウワウィザードが3着に入った。

JBCで地方馬が初めて勝ったのは、2007年大井開催でスプリントを制したフジノウェーブ(大井)だが、その後も地方馬には勝利が遠かった。それでも17年の大井開催でララベル(大井)がレディスクラシックを制すると、19年の浦和開催ではスプリントをブルドッグボス(浦和)が勝ち、20年の大井開催ではサブノジュニア(大井)が制した。18年はJRA京都開催だったため、それを例外とすれば、昨年から始まった2歳優駿を別としても、17年以降はJBCで毎年地方馬が勝利を収めていることになる。また昨年まで地方馬の勝ち馬はいずれも所属する競馬場の地元開催だったが、今回クラシックを制したミューチャリーは、他場遠征の地方馬初勝利という記録でもあった。

売上は前回金沢開催から倍増

JBC4競走の売得額は表のとおり。

クラシックの売得額24億123万300円は、金沢競馬場の1競走あたりのレコードを更新。従来のレコードは前回金沢開催だった13年JBCクラシックの10億1653万1100円で、その記録を今回のレディスクラシックが更新、続いてスプリントで、さらにクラシックでも記録更新となった。

さすがに3競走ともレコード更新となった昨年大井開催での額には及ばなかったが、前回13年の金沢開催との比較では、3競走いずれも倍以上の売上となった。

そして金沢競馬場の1日の合計売得額54億6426万500円もレコード。また門別競馬場の1日の売得額17億8041万3290円も、昨年のJBC2歳優駿開催日に記録された従来のレコード(17億3609万7980円)を更新することとなった。

JBC2021売得額

  21年売得額(円) 13年金沢売得額(円) 売得額レコード※(円)
クラシック 2,401,230,300 1,016,531,100 2,991,791,200 (2020大井)
スプリント 1,524,277,400 674,526,200 2,047,129,900 (2020大井)
レディスクラシック 1,109,752,800 414,621,600 1,296,549,200 (2020大井)
2歳優駿(門別) 970,525,800   974,898,000 (2020門別)
JBC競走合計 6,005,786,300 2,105,678,900 7,310,368,300 (2020大井・門別)
※2018年JRA京都開催は除く