ヤングジョッキーズシリーズ（YJS）は西日本地区のトライアルラウンド（TR）がここ名古屋で最終戦。この日の第2レースで宮下瞳騎手が国内女性騎手初となる地方競馬通算1000勝を達成後とあって、濱尚美騎手（高知）は「簡単に追いつけない数字で、尊敬します」と先輩を見つめた。

なお、浅野皓大騎手（愛知）が怪我のため騎乗なしとなり、代わって騎乗予定のなかった魚住謙心騎手（金沢）が2鞍騎乗に変更となったのだが、この乗替わりが運命を大きく動かすこととなる。

まず第1戦を勝ったのはフェノワールと兼子千央騎手（金沢）。西谷凜騎手（JRA）が逃げ、向正面では飛田愛斗騎手（佐賀）が早めに先頭に並びかけるなど、やや前がかりになった展開を、最後方から4コーナーは内を使ってロスなく進出すると、直線で鮮やかに差し切った。

2着は逃げ粘った西谷騎手、飛田騎手は「名古屋の前残り馬場を意識して勝ちに行きました」と積極的に運んで3着、4着に永島まなみ騎手（JRA）、5着に地元・細川智史騎手（愛知）となった。

この時点で地方西日本6位から一気にトップに躍り出た兼子騎手。成績次第でファイナル進出の可能性があることはもちろん把握していて「それしか考えていませんでした」という。しかしその表情は浮かなかった。というのも、騎乗したフェノワールが入線直後に故障。すぐさま止めて下馬し、「胸が痛いです……」と顔を曇らせた。また、それに躓くような形で齋藤新騎手（JRA）が1コーナー手前で落馬。齋藤騎手は病院へ搬送され、第2戦は兼子騎手へ乗替わりとなった。

第2戦は塚本征吾騎手（愛知）が一旦は楽に逃げるかと思われたところ、岡遼太郎騎手（高知）と永島騎手が外から並びかけ、さらに魚住騎手も加わって先団が4頭ほど固まって最初の1コーナーを回った。その中から先頭で4コーナーを回ってきたのは永島騎手。そこへ序盤は控えて先行争いに加わらなかった西谷騎手が内からコーナリングを生かして先頭に立つと、外からしぶとく伸びてきたのは魚住騎手とセンショウレサイヤ。ゴール数完歩手前で差して勝利を収めた。

魚住騎手は本来であればTR高知に騎乗予定だったが、金沢競馬場で発生した新型コロナウイルスのクラスターの影響で騎乗を辞退。上位の得点を得た4競走分の合計得点により順位が決まるTRにおいて、3鞍しか騎乗できないことは圧倒的不利だったが、先述の通り突然巡ってきたチャンス。「浅野騎手が怪我をしてしまったことは残念ですが、運に感謝したいです」と、顔をクシャクシャにしてYJS初勝利を喜んだ。

2着は一旦は先頭に立った西谷騎手で、9番人気ながら1馬身差で3着に粘った岡騎手は馬から降りるなり、「僕、ファイナルに行けますか？」と心配顔。実は第2戦を前に、4位細川騎手とは1ポイント差の5位と、際どいラインだったのだ。ポイント計算が終わり、速報で4位だと知らされると、目をキョロキョロさせながら「よかった、本当に」と喜びと安堵が入り混じった。

地方西日本1位の兼子騎手は自身のポイントは把握できていないものの「大丈夫じゃないですか？」と安心顔。2位飛田騎手も冷静に「嬉しいです」と話し、すでに150勝を挙げるスーパーゴールデンルーキーは最初で最後のYJSでも活躍を見せた。

冷静な2人とは対照的に、3位魚住騎手はワクワクした表情。「ファイナルが行なわれる大井競馬場も中山競馬場も、ジョッキーを目指していた時に何度かレースを見に行った場所です」と、ファイナル選出基準とされる上位4位に入れたことを喜び、正式決定を待つこととなった。

なお、JRA西日本はTR4戦を1勝、2着3回と好成績でまとめた西谷騎手が1位。2位に小沢大仁騎手、3位にTR名古屋で2戦とも掲示板を確保した永島騎手が浮上し、4位は角田大和騎手だった。

TRも残すは11月24日の浦和ラウンドのみ。12月27日大井競馬場、28日中山競馬場で行われるファイナルラウンド出場をかけて、若者たちの戦いが繰り広げられる。