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ヤングジョッキーズシリーズ TR 浦和

第1戦を制した若杉騎手が一気に浮上
  菅原明良騎手は3年連続ファイナルへ

5年目を迎えたヤングジョッキーズシリーズ(YJS)もいよいよトライアルラウンド(TR)最終戦の浦和。関本玲花騎手(岩手)や神尾香澄騎手(川崎)は前日のレディスジョッキーズシリーズ盛岡に続いての出場となった。なお、中島良美騎手は怪我のため2鞍の予定が騎乗なしとなり、若杉朝飛騎手(北海道)と菅原涼太騎手(大井)がそれぞれ1鞍から2鞍騎乗へ変更となった。同世代の仲間の怪我による乗り鞍増は手放しで喜べるものではないかもしれないが、TR名古屋同様、これが結果を左右する乗替わりとなった。

その主役は若杉騎手。今年4月にデビューし、ここまで手にした勝利は1つのみで、「人気馬だと緊張するんです」と、あどけなさを残す。第1戦で騎乗するラーズグリーズは6番人気ではあるものの、専門紙によっては本命や対抗印もチラホラと打たれていた。好スタートを決めると逃げ馬の直後に控えた。2コーナーで赤津和希騎手(浦和)が外から先頭集団に並びかけてペースアップしたところでもついて行かずに脚を溜めると、直線で逃げ粘る小林凌大騎手(JRA)を差して勝利を手にした。

ホッカイドウ競馬がオフシーズンの現在は佐賀競馬で真島元徳厩舎所属として期間限定騎乗中。「真島先生から『道中はハミを抜いて、馬が楽に走れるように』とアドバイスされたことが実行できたのかなと思います」と、佐賀での収穫を話すと、真島調教師の子息である大輔騎手も「やったな!おめでとう」と声をかけた。

離れて3着は4番手を追走した菅原明良騎手(JRA)で、2コーナーから積極的に動いた赤津騎手はハナ差4着、5着に永野猛蔵騎手(JRA)だった。

第1戦を終えて、地方東日本9位から4位に上がったのは若杉騎手。3ポイント差で池谷匠翔騎手(川崎)、さらに2ポイント差で七夕裕次郎騎手(浦和)と続き、ファイナルラウンド進出を賭けた第2戦では特にこの3名は1つでも上の着順をとりたい状況となった。一方で上位3名はこの時点で得点を一歩リードしてはいたが、下位の騎手にも勝てば望みがつながる者もいた。

運命の第2戦は大外から原優介騎手(JRA)が先手を取り、それを見る外目に菅原明良騎手がつけた。4コーナーで菅原明良騎手が先頭に立つと、リードを保って勝利。2着に原騎手が粘り、3着古岡勇樹騎手(川崎)、4着は菅原涼太騎手でYJSで初めて掲示板を確保。5着は秋山稔樹騎手(JRA)だった。

古岡騎手は1番人気に推されていたが、「渋く脚を使う馬なので、なるべく前で競馬をしたかったですが、スタートのタイミングが合いませんでした」と唇を噛んだ。とはいえ、TR川崎で1着、2着、TR船橋第2戦でも3着に入っており、80ポイントで地方東日本2位。同じ川崎所属の櫻井光輔騎手は2018年YJS総合優勝とあって、「目標とする舞台に一歩近づけました。先輩のように優勝したいです」と意気込んだ。

古岡騎手より6ポイント多く獲得して地方東日本1位通過となったのは篠谷葵騎手(船橋)。この日YJSに騎乗はなかったが、浦和の他のレースには騎乗していた。YJS・TRでは2勝、2着1回、7着1回にまとめてのファイナル進出について「TR盛岡の時のように、あまり先入観を持たずに臨みたいです」と話した。3位は今年4月デビューの木間塚龍馬騎手(船橋)が入った。

そして4位以内を目指した若杉騎手、池谷騎手、七夕騎手の着順は7着、10着、8着。上位得点を得た4競走分の合計得点により、地方東日本4位は若杉騎手となった。それを聞いた本人は「おっ!ありがとうございます」と、一見クールに見える反応。しかし本心は「嬉しいですし、緊張から解き放たれました」と笑った。一方、惜しくも5位でファイナルへの切符を逃した七夕騎手は「若杉にやられました……」と肩を落とした。しかし、今年5月2日からの岩手での期間限定騎乗で「レースで周りを見られるようになりました」と成長。この経験は来年以降に生きるだろう。

JRA東日本は第2戦を勝った菅原明良騎手が1位で、3年連続ファイナル進出を決めた。2位に山田敬士騎手、3位木幡育也騎手、そして原騎手が4位に浮上して昨年に続いてのファイナル進出となった。

東西ともにファイナル進出ジョッキーが決定したYJS2021。ファイナルラウンドは、12月27日大井競馬場、28日JRA中山競馬場で16名の若手騎手によって争われる。

取材・文 大恵陽子

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 若杉朝飛騎手(北海道)

勝てたことにホッとしていると同時に、馬主や調教師に感謝しています。かなり緊張しましたが、馬に伝わらなかったのでよかったです。苦手意識のあるスタートは馬の邪魔をしないようにして、3~4コーナーではいい手応えがあり「もしかしたら」と感じました。差し切ってくれて馬にも感謝したいです。

第2戦1着 菅原明良騎手(JRA)

馬の気持ちを重視した位置取りでレースを運びました。重馬場で前残りかなと思い、手応えがあったので早めに動きました。抜け出してからフワッとする面があり、後ろから来られてからも渋く脚を使いました。3年連続ファイナル進出は大変うれしいです。今年はしっかり結果を残せたらと思います。