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レディスジョッキーズシリーズ高知

引退する別府騎手は最後のLJS
  高知の次代を担う濱騎手が連勝

前回のレディスジョッキーズシリーズ(LJS)盛岡から中3日。みぞれ混じりだった東北から、秋の日差しが残る南国土佐へと戦いの場を移し、LJS高知は行われた。

「(別府)真衣さんの地元で一緒に乗れて、めっちゃ嬉しいです。もう一緒に乗れないと思うと寂しいです」とは関本玲花騎手(岩手)。翌28日の騎乗を最後に騎手を引退し、調教師に転身する別府真衣騎手(高知)との残された貴重な時間を楽しむように、写真撮影の合間などに二人でなにやらいろいろと話した様子。国内女性騎手最多勝記録を更新し続ける宮下瞳騎手(愛知)は同歴代2位で746勝を挙げる別府騎手とは女性騎手を牽引してきた良きライバルで、「ツーショットを撮ってください」と報道陣に声をかけた。

そういったこともあり、これまでの女性騎手レースで感じられた華やかなお祭りムードというよりは、各々の寂しさが滲んだLJS高知。

ところが、第1戦は返し馬で佐々木世麗騎手(兵庫)の鞍が前にズれ、制御不能に近い状態となってしまい馬場を何周もするアクシデントが起きた。なんとか他馬のいる待避所に向かわせて馬が止まるようにしようとしたところ、さらに鞍がズレて落馬。場内からは心配の声が漏れたが、佐々木騎手は自力で歩き、大きな怪我がなかったことは不幸中の幸いだろう。しかし、アールエクシードは競走除外となり、規定により6ポイントの付与となった。

6頭立てとなった第1戦で好スタートを決めたのは濱尚美騎手(高知)だったが、すぐに内に切り替えた別府騎手がコーナリングでハナに立った。4コーナーで外から濱騎手が先頭に並びかけると、内から深澤杏花騎手(笠松)も迫って迎えた直線は、濱騎手とサンマルマオリオが渋太く伸びて勝利。濱騎手は同馬には前走のほか計5回の騎乗経験があり、「スタートが速い馬ですし、最近状態が上がっていました」と、自信を持っての騎乗だった。

2着は高知初騎乗の神尾香澄騎手(川崎)で、「もっと早く追い出せていれば届いたかもしれません」と普段騎乗する川崎競馬場よりも直線の短い小回りコースに苦戦した様子。3着深澤騎手も高知は初騎乗で、「外を回ると距離ロスになると思い、4コーナーでは内を選びましたが、想像以上に馬場が重たくて馬を動かせませんでした」と唇を噛んだ。

第2戦も濱騎手が地の利を生かした。ダノンユニヴァースには初騎乗ではあったものの、普段のレースぶりから末脚のしっかりした馬だということは承知。さらに、何度も騎乗経験のあるヴィルダイヤと、宮下騎手が逃げたことで、4コーナーでは「ヴィルダイヤは逃げたら粘るので、その後ろでずっと構えていました」と、6頭が固まって迎えた勝負所をロスなく運ぶと、直線で外に出して差し切り勝ち。濱騎手の言葉通り宮下騎手が2着に粘り、3着には佐々木騎手が差してきた。

宮下騎手は「ようやく馬券圏内に入ることができました」と少し安堵。とはいえ、ハナを切った後も内外から他馬に来られて予想以上にペースが速くなってしまい悔しさを滲ませた。

第1戦での競走除外があり、少し表情が曇っていた佐々木騎手は「トーセンアレックスに乗れたことが嬉しかったです」と、第2戦の騎乗馬の話題になると笑顔を見せた。トーセンアレックスは兵庫在籍時、佐々木騎手が主戦で、今年7月には盛岡のオパールカップに遠征。佐々木騎手にとっては重賞初騎乗ながら3着と、ファンを沸かせたのだった。「今日はペースが流れていて、追いつくのに一生懸命になってしまいました」とのことだったが、久しぶりのコンビは単勝1.7倍ということからも注目を集めていた。

これが最後のLJS騎乗となった別府騎手は5着、7着。「調教師合格が決まってから、騎手時代のいろんな思い出が走馬灯のように駆け巡るんですけど、うまく言葉にできなくて」と思いが溢れすぎてレース後は「言葉がないです……」と仲間たちとの戦いを惜しんだ。

しかし、LJSは来年2月18日名古屋へと戦いが続く。高知を2勝で優勝した濱騎手が総合順位でも95ポイントを獲得してトップ。続いて盛岡1着、6着、高知2着、6着と堅実にポイントを加算した神尾騎手が66ポイントで2位、5ポイント差で佐々木騎手が3位につけた。

別府騎手がデビューし、高知競馬が苦しかった時代から応援してきたという地元ファンは「濱騎手が2連勝して、次世代にバトンが渡されたのかなという気がしています」と感慨にふけった。新時代の女王が誕生となるのか、LJS名古屋の戦いが注目される。

取材・文 大恵陽子

写真 国分智(いちかんぽ)

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第1戦・第2戦1着 濱尚美騎手(高知)

第1戦はスタートの速い馬で1300メートルでチャンスだと狙っていました。第2戦は競り合っていた前の馬たちを上手く捌けたら、と3~4コーナーは内を回りました。直線に向いて手前を替えたらグッと伸びて、勝ったと思いました。2連勝でホッとしましたし、馬にも恵まれました。このまま突っ走りたいです。