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未来優駿・2歳チャンピオンシリーズ2021 総括


クローズアップ

2021.12.21 (火)

未来優駿とダートグレードが連携
 シリーズボーナスは北海道が独占

未来優駿は、一昨年までの7レースから昨年一気に11レースに対象レースが拡大され、今年もその対象レースに変更はなかった。ただし日程面での変更はいくつかあり、兼六園ジュニアカップが1週、九州ジュニアチャンピオン、南部駒賞が2週繰り上げられ、逆にゴールドウィング賞は約1カ月繰り下げられた。

そして何より注目度がアップしたのは、今年新たに2歳ダートグレード競走3レースと連携した『2歳チャンピオンシリーズ』の創設だろう。着順ポイントによってボーナス賞金が設定された。

仮に昨年から『2歳チャンピオンシリーズ』が設定されていれば、ゴールドジュニア、ハイセイコー記念と未来優駿の対象レースを2勝し、さらに全日本2歳優駿JpnIを制したアランバローズが断然のポイントで優勝していたはずだ。そのアランバローズは3歳になって東京ダービーも逃げ切る活躍を見せた。

そのほか昨年の未来優駿勝ち馬で3歳になっての活躍馬は、黒潮ジュニアチャンピオンシップを制したハルノインパクトが高知二冠を制し、北海道所属として南部駒賞を勝ったギガキングが船橋に移籍してダービーグランプリの覇者となった。

北海道からの遠征馬が活躍

未来優駿11レースのうち半数近い5レースが全国交流となっているが、目立ったのはやはり北海道所属馬の活躍だ。門別のサンライズカップを勝ったナッジは距離を1700、1800メートルと伸ばして3連勝。金沢の兼六園ジュニアカップは1番人気に支持されたエンリルが逃げ切り勝ち。川崎の鎌倉記念はシルトプレが好位から直線で抜け出し。盛岡の南部駒賞は中団から徐々に位置取りを上げたエイシンシュトルムが直線で抜け出し、さらに北海道勢が3着まで独占。全国交流5レースのうち、地元のサンライズカップを含め4レースを北海道所属馬が制した。そのうち、ナッジ、エンリル、シルトプレは重賞初挑戦での勝利で、今年もホッカイドウ競馬のレベルの高さを示した。

南関東では、大井のゴールドジュニアを9馬身差で圧勝し、デビューから3連勝としたママママカロニが注目されたが、鎌倉記念ではスタート後の直線で馬群に囲まれる苦しい場面があって位置取りを下げ、それでも最後の直線では追い込み、勝ったシルトプレに1馬身差まで迫った。敗因ははっきりしていただけに、続くハイセイコー記念でも1番人気に支持されたものの、スタートでタイミングが合わず後方からとなり、徐々に位置取りを上げたものの4着まで。その後、剥離骨折していたことが伝えられた。そのハイセイコー記念は、鎌倉記念3着だったノブレスノアが逃げ切った。

日付は前後するが、全国交流で唯一北海道所属馬が勝てなかったのは、北海道からの遠征が1頭のみだった船橋の平和賞で、浦和のライアンが直線での混戦を制した。

佐賀デビュー馬限定の九州ジュニアチャンピオンは、ムーンオブザクインが、逃げた1番人気ブルーデイジーを競り落として勝利。出走11頭中10頭が牝馬で、唯一の牡馬ユウワクスレスレが2着だった。

兵庫若駒賞は、ガリバーストームが2番手から4コーナーで先頭に立って押し切りデビューから3連勝。廣瀬航騎手はデビュー21年目、尾林幸二調教師は開業16年目で、それぞれ重賞初勝利となった。

黒潮ジュニアチャンピオンシップは、マリンスカイがデビューから圧倒的なレースぶりで3連勝。

ゴールドウィング賞は、笠松の牝馬ドミニクが4コーナー5番手から豪快に差し切った。

島川氏所有馬3頭が勝利

目立った活躍は馬主の島川隆哉氏で、未来優駿11レースのうち3レースを異なる馬で制した。平和賞のライアン、ハイセイコー記念のノブレスノアは、ともに浦和・小久保智厩舎。特にハイセイコー記念では、2着ミゲル、3着カイルまで、島川氏の所有馬が3着まで独占。それに笠松のドミニクが名古屋のゴールドウィング賞を制した。

その島川氏の所有馬では、ノブレスノア、ドミニク、それにカイルの父が、同じく島川氏が所有していたトーセンブライト。現役時は、サラブレッドチャレンジカップGIII、黒船賞JpnIII、兵庫ゴールドトロフィーJpnIII(連覇)と、ダートグレード4勝という実績で種牡馬になった。2011年の初供用から種付頭数は毎年10頭前後だが、その産駒から地方競馬を中心に重賞での活躍馬がコンスタントに出ている。また、ライアンは父がディープインパクト。その高額な種付料からディープインパクト産駒が地方からデビューするのはめずらしい。

そのディープインパクトでは、孫が2頭勝ち馬となった。父ワールドエースのシルトプレと、父エイシンヒカリのエイシンシュトルム。ディープインパクトの系統は今後、地方競馬でも広がりを見せていくのだろう。

この世代が2世代目となるアジアエクスプレスの産駒も、エンリル、ガリバーストームと2頭が勝った。アジアエクスプレス自身は輸入馬だが、その父ヘニーヒューズはその後輸入されて日本では2014年から種牡馬として供用され、今年の総合ダートの種牡馬ランキングでトップに立っている(12月19日現在)。アジアエクスプレスも毎年100頭以上に種付けされており、ダートでは注目の種牡馬となりそうだ。

また昨年の総合ダート新種牡馬ランキングで1位となったホッコータルマエの産駒からもママママカロニが活躍した。

ダートグレードも北海道勢が健闘

『2歳チャンピオンシリーズ』のダートグレード3競走では、残念ながら地方馬の勝利はなかった。

シリーズのポイントでは、サンライズカップを勝ってJBC2歳優駿JpnIIIで惜しくも2着、全日本2歳優駿JpnI・8着という成績のナッジが24ポイントで1位。兼六園ジュニアカップを勝って、JBC2歳優駿JpnIIIは13着だったものの、兵庫ジュニアグランプリJpnIIで5着に入ったエンリルが14ポイントで2位。サンライズカップ3着、JBC2歳優駿JpnIII・3着だったリコーヴィクターが13ポイントで3位。褒賞金が授与される3位までを北海道所属馬が独占。ちなみに4位も、鎌倉記念を勝って全日本2歳優駿JpnI・5着のシルトプレで、4位までが北海道勢だった。未来優駿で上位のポイントを得て、さらにダートグレードでも掲示板というあたりの成績が、今後もボーナスを得られるかどうかのボーダーラインとなりそうだ。

『2歳チャンピオンシリーズ』ではダートグレード3戦をすべて制した馬にも三冠ボーナスが設定されたが、中2週・中2週の1カ月半という短期間のローテーションで、門別→園田→川崎と移動しての三冠すべてに出走する馬はいなかった。

ちなみにその三冠すべてを制した場合の1着賞金の合計が1億200万円で、それに対してのボーナスは500万円。2歳馬に短期間での長距離輸送というリスクを負ってまでも三冠に挑戦させようということであれば、さらに魅力的なボーナスの金額設定が必要と思うがどうだろう。

斎藤修

写真 いちかんぽ