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第21回名古屋グランプリJpnII

直線差し切り人気に応える
  長距離の舞台で重賞初制覇

名古屋グランプリJpnIIがダートグレード競走でもっとも長い2500メートルで争われるのは今回が最後。来年は移転する新競馬場での2100メートルになることが発表されている。ということはダートグレードで唯一のコーナー8回も最後となりそう。

しかしながら今年の顔ぶれは比較的小粒。JRA所属馬でダートグレードでの連対経験がある馬はゼロ。唯一、北海道から参戦したルールソヴァールがJRA所属時に佐賀記念JpnIIIを勝っているが、それも3年10カ月前の話である。

そうなるとやはり、人気が集まるのはJRAの馬。前走の浦和記念JpnIIで3着に入ったヴェルテックスが単勝2.1倍で、ケイアイパープルが3.0倍。ライトウォーリアが6.7倍、ダート2戦目のダンビュライトが8.4倍で続き、地方所属馬ではルールソヴァールが16.3倍と、5番人気のドスハーツ(12.1倍)に迫る支持を集めた。

快晴で風がほとんどないコンディションのなか、パドックでは11頭が静かに周回。ただ、騎乗合図がかかるとダンビュライトだけテンションが上がり、松若風馬騎手が乗った瞬間に2回転。担当者が引き手を外すとその場で立ち上がり、猛烈な勢いで馬場に向かって走っていった。

しかし自身にとってはそれが“ガス抜き”になったらしい。ゲートが開くとダンビュライトが先手を取り、ライトウォーリアに競りかけられても折り合いがついているように見えた。3番手にはケイアイパープルがつけ、その後ろにヴェルテックス。そこからは少し間があいて、大井のホーリーブレイズが続いた。

2周目に入っても、後方にいたドスハーツが6番手まで上昇したことを除けば各馬の位置取りはほとんど変化なし。それでも向正面からはペースが上がり、3コーナーで、逃げるダンビュライトにケイアイパープルが並びかけると、その2頭の間にいたライトウォーリアが失速。さらに外から勢いよく上昇したヴェルテックスが直線でケイアイパープルをとらえ、2馬身半差をつけての勝利となった。

ただし観客がもっとも盛り上がったのは、その1秒後。粘り込みを図るダンビュライトにホーリーブレイズがクビ差まで迫った3着争いだった。

「お客さんの声が聞こえましたよ」と苦笑いするホーリーブレイズの下原理騎手に「マイナス20キロでしたが」と水を向けると「そんなに減っていたんですか」と驚いた表情。「いやあ、パドックで数字を見なくて良かったですね。見ていたら自分の気持ちも追いかたも変わるかもしれなかったですし」と話した。

ギリギリ3着に粘ったダンビュライトは「次は芝に戻します」(音無秀孝調教師)とのこと。8着に沈んだライトウォーリアは「後ろから来られると苦しくなるタイプ。距離もちょっと長かったかな」と、高野友和調教師が敗因を分析した。

2着のケイアイパープルは、松山弘平騎手が「砂をかぶれない馬なので、8回もコーナーがあると距離のロスが大きくなってしまいます」とコメント。このコース設定が響いてしまったようだ。

逆に、この舞台をプラスにしたのがヴェルテックス。初勝利が3歳10月の園田競馬場という晩成タイプは「距離は長ければ長いほどいい」(吉岡辰弥調教師)とのこと。その適性に合う舞台は少ないが、今後もこの路線での活躍が期待できるだろう。

取材・文 浅野靖典

写真 国分智(いちかんぽ)

Comment

横山武史騎手

(今年5月に)東京の2100メートルで勝たせていただいたときに、重賞でもいけるのではと話しましたが、それを有言実行にすることができてよかったです。前走も内容的には悪くなかったので、今回も立ち回り次第と思っていました。折り合いがつきやすいタイプで、前走より距離が長いところも合いました。

吉岡辰弥調教師

以前は前の馬が蹴り上げた砂をかぶるとひるむことが多かったんですが、そういうことが少なくなってきました。横山騎手が距離ロスを少なくして、うまく乗ってくれたと思います。最後もいい形で抜け出しましたが、ゴール前はちょっと遊んでいましたね。今後も長距離を中心に、オーナーと検討していきます。