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ヤングジョッキーズシリーズ FR 大井

2戦とも地方所属騎手が勝利
  篠谷騎手が1位でファイナルへ

2021ヤングジョッキーズシリーズファイナルラウンドは、第1戦と第2戦が大井競馬場で、第3戦と第4戦が中山競馬場。トライアルラウンドで上位の成績を収めた地方とJRAの騎手が8名ずつ参加して、16頭立てのレースが4つ組まれている。

その第1戦は1800メートル。大井競馬場で勝利したことがある馬は4頭だけで、C2クラスのメンバーだと距離経験がある馬も少数。そうなるとJRAから移籍して2戦とも入着しているホッコーマイサンに注目が集まるのは当然で、単勝オッズは1.3倍。しかし菅原明良騎手(JRA)を背にしたホッコーマイサンは、逃げた過去2戦とは違ってスタートで後手を踏んでしまった。

それは各騎手にとっておそらく想定外。なにしろ16頭のうち、前走で最初のコーナーでの通過順位が1ケタだった馬が5頭しかいないのである。その流れは見た目でも明らかに遅く、1コーナーでは岡遼太郎騎手(高知)が先頭。若杉朝飛騎手(北海道)が2番手につけたが、手綱を引っ張っていた。その流れは最初の1000メートルが1分4秒8。出遅れた菅原騎手が外を回って位置取りを上げたのは当然のことだろう。

そのなかでうまく流れに乗ったのが篠谷葵騎手(船橋)。2コーナーまではインコースを回って向正面で外に出し、先団を見る位置で追走。直線はそのまま馬群の外を回って勝利を挙げた。

検量室に戻った篠谷騎手は「本命の馬が早めに動いたんで、僕は逆にじっくり溜めていきました」と笑顔。2着は馬場の中ほどを通って伸びてきた西谷凜騎手(JRA)が入り、菅原騎手は3着。流れに乗って差を詰めてきた原優介騎手(JRA)が4着、古岡勇樹騎手(川崎)が5着に入った。

その戦いを見守る観客エリアには、いくつもの輪ができていた。目立ったのは岡騎手と飛田愛斗騎手(佐賀)の勝負服柄のタオルを持ったグループ。また、場内には来賓用の通行証を首から下げていた人の姿が多く見られた。

飛田騎手もご両親を含めた5名で来場。「明日の中山も2人分の席をいただいたので、私と(所属厩舎の)三小田(幸人)先生で行ってきます。でもそれ以外は抽選で取れなくて、キャンセル分でも頑張ったんですけれど、ダメでした」と、飛田騎手の父は苦笑い。「でも最初で最後のヤングジョッキーズでファイナルに進んでくれて、みんなで東京に来ることができたのだからありがたいです」と話した。

その飛田騎手は第1戦が11着。「道中の仕掛けどころがつかめなかったです」と振り返ったが、6着だった木間塚龍馬騎手(船橋)が「想像していたレースとは全く違いました」という流れでは、いきなり結果を出すのは難しかったことだろう。

しかし飛田騎手は第1戦の経験をすぐに活かした。

第2戦の舞台はコーナーが2つの1200メートル。こちらはB3クラスだが、大井で勝ったことがある馬が4頭だけと少ない点は、第1戦と同様だ。人気が割れたなかで、単勝4.5倍で古岡騎手が1番人気、5.0倍で岡騎手が続いた。16頭のうちの半数ほどが、ブリンカー、シャドーロール、チークピーシーズなどを装着。多くの騎手には馬を御する技術も要求される一戦といえた。

ゲートが開くと、飛田騎手と兼子千央騎手(金沢)が出遅れ。3コーナー手前では7頭ほどが先行グループを形成した。

その3コーナーで、4番手を進んでいたプレジールドビブルが、併走する馬に接触する形で転倒。その後ろにいた岡騎手、若杉騎手、兼子騎手が倒れた馬をよけきれずに落馬してしまった。

落馬を逃れた多くの騎手も、そこでリズムを失う形。そうなると逃げた小沢大仁騎手(JRA)と2番手を進んだ菅原騎手は有利で、残り200メートルあたりではその2頭での決着になるかと思えた。

しかしそこに1頭だけ、次元の違う脚で伸びてきたのが飛田騎手。最内枠で出遅れて、その後もインコースを通っていたが4コーナーでは大外へ進路を取ってゴーサイン。最後の直線では馬場の中央を勢いよく伸びて残り80メートルあたりで先頭に立ち、最後は手綱を緩めて馬の首筋をポンポンと軽くたたきながら勝利。“スーパーゴールデンルーキー”の騎乗センスを全国の舞台で見せつけた。

2着には小沢騎手、3着には菅原騎手が残り、離れた4着は木幡育也騎手(JRA)が入り、篠谷騎手が5着。しかしゴール後の検量室内では各騎手が神妙な顔でパトロールの映像に見入っていた。

業務エリアの裏手には救急車が到着し、若杉騎手を除いた3名が次々に搬送。若杉騎手もその後、検査のために病院に向かった。その結果、若杉騎手以外の3名が翌日の騎乗を断念。ファイナルラウンドは大井での2戦を終えて、1着、5着の篠谷騎手が40ポイントで1位、11着、1着の飛田騎手が31ポイントで2位、3着、3着の菅原騎手が30ポイントの3位で、優勝を決める中山競馬場へ向かうことになった。

取材・文 浅野靖典

写真 いちかんぽ(早川範雄、宮原政典)

Comment

第1戦1着 篠谷葵騎手(船橋)

スタートで五分に出て、いい位置に付けることができました。過去のレースぶりからは反応が鈍いタイプなのかと想像していましたが、それほどでもなかったですね。最後は接戦になりましたが、ゴールの瞬間は差し切ったなと思いました(笑)。残りのレースでも、気を抜かないようにしていきます。

第2戦1着 飛田愛斗騎手(佐賀)

スタートはジャンプする形になってしまいましたが、内枠でしたし第1戦で外を回りすぎた反省点があったので、内を回っていきました。差し脚があるタイプというのはわかっていたので、最後の直線では前の2頭を交わすだけだと思って乗りました。家族や先生の前でいいところを見せられてよかったです。