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ヤングジョッキーズシリーズ FR 中山

ファイナル2勝の飛田騎手が優勝
  1・2着の魚住騎手が3位へ躍進

ファイナルラウンド(FR)中山の朝は、古岡勇樹騎手(川崎)、兼子千央騎手(金沢)、岡遼太郎騎手(高知)がそれぞれ七夕裕次郎騎手(浦和)、小林脩斗騎手(JRA)、秋山稔樹騎手(JRA)への乗り替わり発表から始まった。前日のFR大井第2戦での落馬負傷によるもので、4頭落馬のうち若杉朝飛騎手(北海道)は引き続き騎乗可能とのこと。

予定していた騎手が騎乗できない場合、補欠騎手に変更となる規定で、七夕騎手はトライアルラウンド(TR)地方東日本5位から思わぬ形でチャンスが巡ってきた。前夜は自宅で観戦していたところ、急遽連絡が入り急いで中山競馬場に向かったが、「中山で乗れることは嬉しいですけど、状況が状況なだけに複雑な気持ちです」というのは正直なところだろう。

それでも、地方所属騎手にとっては貴重なJRAでの騎乗機会であることには変わらず、第4レース終了後の紹介セレモニーでは晴れやかな笑顔で入場した。

第1戦の芝2000メートルは永島まなみ騎手(JRA)が逃げて比較的ゆったり流れたが早めに後退。直線で内から魚住謙心騎手(金沢)が伸びてきた。さらに山田敬士騎手(JRA)と、後方から菅原明良騎手(JRA)も鋭く伸びてきて3頭が並んでゴールに入ったが、アタマ差抜け出していたのは、今回が初芝のスウェアーに騎乗していた魚住騎手。2着山田騎手の騎乗馬も3戦ぶりの芝で、ラスト1ハロンが13秒2秒もかかったことから、タフさがプラスに働いたのかもしれない。勝ち馬は単勝58.6倍の11番人気で、2着も12番人気となれば、3着に1番人気の菅原騎手でも3連単は119万440円。騎手交流戦らしい波乱の結果となった。なお、FR大井を終え暫定1位だった篠谷葵騎手(船橋)は騎乗馬が故障して競走中止し、1ポイントの付与となった。

「逆転というのが自分らしいかなと思います」とは勝った魚住騎手。というのも、FR進出がかなり厳しい状況でTRの戦いを終えるはずが、落馬負傷した浅野皓大騎手に代わって西日本地区最終戦の名古屋で騎乗が決まり、それを勝って逆転でFR進出を決めたのだ。さらに前日の大井は2戦とも1ポイントしか獲得できなかったのが、この勝利で計32ポイントとなり一気に暫定5位まで浮上。中山第2戦で高ポイントを挙げることは必須だが、45ポイントで暫定1位の菅原騎手などの結果次第では、総合優勝の可能性まで見えてきたのだから、本人も「逆転」という言葉がチラついていたのだろう。

注目の最終戦・中山第2戦で魚住騎手が騎乗するのは3番人気のレッドレビン。人気と勢いを味方につけ勝つのか、他の騎手が負けじと応戦するのか。最終戦の4コーナーを先頭で回ってきたのは、急遽チャンスが巡ってきた七夕騎手だった。魚住騎手はその直後で、直線の坂を上ると内から先頭に躍り出た。「ここを絶対に勝って優勝したい」という思いを胸に、長身の体で必死に追い、約1馬身、抜け出す。大逆転劇かと思われた瞬間、外から伸びてきたのは飛田愛斗騎手(佐賀)とマーキュリーセブン。デビューから史上最速の268日で地方通算100勝を挙げた有望株は一完歩ずつ迫ると、ゴールの瞬間に差して勝った。わずかクビ差ではあったが、接戦で少しでも前に出ることを考えたような乗り方に加え、最後までブレない騎乗フォーム。それは、厩舎実習中から毎日欠かさずジョギングをしてつけた体力も一因と思われ、その努力は地元佐賀の名手・鮫島克也元騎手や山口勲騎手も称える。

「めちゃくちゃ悔しいです」と顔をクシャクシャにしたのは2着魚住騎手。「七夕騎手を交わせば勝てると思いました。もう少し上手くコース取りをして、もっと追えていれば、と悔しいです」と話し、「落馬した古岡騎手の分までがんばろうと思っていました」という七夕騎手は3着だった。

この結果、YJS総合優勝はFR2勝を挙げた飛田騎手。大井第1戦は11着、中山第1戦は8着とそれぞれ振るわなかったものの、すぐに軌道修正して第2戦でともに勝利を収め、“スーパーゴールデンルーキー”の異名に違わぬ活躍を見せた。

2位は菅原騎手で、3着、3着、3着、5着とFRを通して安定した結果。TRでも6戦して掲示板を外したのはたった1回と、安定感を見せていた。今年は重賞初制覇に新潟リーディングと飛躍した年。すでに通算100勝を達成し、最後のYJSで存在感を示した。そして3位は魚住騎手だった。

5年連続で総合優勝は地方所属騎手となったが、実は西日本地区の騎手の優勝は初めて。引き続きコロナ禍ではあるものの、若手騎手たちの成長とドラマが詰まったYJSだった。

取材・文 大恵陽子

写真 いちかんぽ(早川範雄、築田純)

Comment

総合優勝 飛田愛斗騎手(佐賀)

前日に大井で乗って、長い直線に少し慣れることができました。第1戦で位置取りが大切だと気づき、第2戦は前めにつけようと思いました。直線が長いほど「行け!」と追う楽しみもありました。西日本初の優勝を持って帰りたいと思っていて、とても嬉しいです。来年は今年以上に活躍したいです。

総合2位 菅原明良騎手(JRA)

昨日から1番人気も含めいい馬に乗せていただいていましたが、結果を残せず悔しいです。今年でYJSは最後の出場で、優勝を目指して頑張っていましたが、いい成績が残せませんでした。来年は、今年以上に勝ち星を、と思っていますし、重賞やGIにも乗せてもらえる騎手になれるよう頑張りたいです。

総合3位 魚住謙心騎手(金沢)

初めてのJRAで、朝起きた時からずっと楽しみでした。第1戦はいい位置につけられて、うまく抜け出せたら勝てるだろうと思いました。負けたくない気持ちと、昨日怪我をした兼子先輩の分も自分が頑張って勝とうと思っていました。総合3位は悔しいですが、この舞台に立てたことは嬉しいです。