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第50回ばんえいダービー

雪の軽馬場を先行策で押し切る
  貴重な血をつなぐ父仔制覇

12月に行われるばんえいダービーは、ばんえいの3歳三冠路線の最後を飾る“日本一遅いダービー”と言われる。50回の節目となる今年は夕方から雪が降り始め、他地区では見られない“雪のダービー”となった。

今年の3歳世代はばんえい大賞典を牝馬のイオンが勝ち、ばんえい菊花賞は勝ったサクラヒメから3着までが牝馬と、牝馬の活躍が目立った。単勝1番人気はその後ばんえいオークスも勝ったサクラヒメで1.6倍。2番人気はイレネー記念馬オーシャンウイナーだった。

当日の馬場水分は2.4%だが、コースには大粒の雪が乗って数字以上に速い流れに。タカナミとオーシャンウイナー、イオンが先行し、道中は全馬が止まらずに第2障害を目指す。タカナミが35秒で第2障害手前に到達。

最初に仕掛けたイオンは膝を付き、続いてタカナミ、ネオキングダムとオーシャンウイナーが仕掛けた。オーシャンウイナーが最初に降り、タカナミ、サクラヒメと続くがオーシャンウイナーがそのまま押し切った。勝ちタイムは1分16秒9。タカナミはゴールまで数十センチで止まり、その間に入線した7番人気のネオキングダムが2着。タカナミは3着に入り、サクラヒメは4着だった。

2歳王者の復権だ。3月のイレネー記念優勝後はハンデや、今年特有の軽い馬場に泣き、結果を残せず悔しい思いをしてきた。定量戦のばんえいダービーを「落とせない1戦」と狙いを定めてきた。しかしスピードよりは力のいる馬場を得意とするオーシャンウイナーに、降り続く雪が立ちはだかった。そこで菊池一樹騎手は後方から進めて力で勝負する予定から「行くだけ行ってみよう」と先行策に切り替え奏功した。ここぞというときに思い切りの良さがある菊池騎手が「一番強い馬だと思う」と馬を信じた好騎乗を見せた。

中島敏博調教師は「馬主や騎手、厩務員の勝ちたいという思いが通じた」と話す。中島厩舎の馬たちのたてがみに付けられた飾りは、調教師の妻・結佳さんの手作り。オーシャンウイナーは奪還への思いを込めた白い飾りを懸命に揺らしてゴールへ向かった。

2009年のばんえいダービーを制した父キタノタイショウは一世代のみ産駒を遺し、2017年に急逝した。中島調教師は「降りてからの辛抱強さと脚が父に似ている」と話す。海沿いの牧場で生まれたオーシャンウイナーは「子どものころから大人しかった」と馬主で生産者の浜中町・舘野竜一さん。牧場にはキタノタイショウ産駒の繁殖牝馬もおり、名馬の血をつなぐ。「勝利は嬉しいの一言。最終的には(父が2015年に制した)ばんえい記念」といい、さらなる“父子制覇”に向けて夢が広がる。

取材・文 小久保友香

写真 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

菊池一樹騎手

雪はいらないと思っていたが、降ってしまったので先に行った。これまでは悔しい思いをしていたので、目標のレースを獲れてよかった。早めに障害を降りた時点で行ってくれるかな、とゴール前だけ気をつけた。重量を背負ってもあきらめず、瞬発力があるのがいいところ。古馬オープンでも活躍できると思う。

中島敏博調教師

馬場が軽いので不安はあったが騎手がうまく乗ってくれた。強い勝ち方で、関係者の思いが通じた。重量は過去に715キロまで背負っていたので心配なかった。馬は障害もいいし、降りてからのスピードもあり、たくさんいいところがある。大事に使っていきたい。最終的にはばんえい記念が目標です。