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第45回東京2歳優駿牝馬

圧巻の末脚で突き抜ける
  名実ともに2歳女王の座に

浦和の藤原智行調教師が「スピーディキックが来るよ」と話しかけてきたのは、11月の浦和開催でのこと。トレーナーには、かつてエイシンヴァラー(のちに兵庫所属として黒船賞JpnIIIを勝利)を管理した際に、ようやく状態が上向いたところで移籍となってしまった苦い経験がある。エーデルワイス賞JpnIIIを制した素質馬の転入に「この馬で結果を」と並々ならぬ意気込みを見せていた。

迎えた転入初戦は、船橋デビューの好素材プラチナプライドを筆頭に、JRAから転入したヒストリックノヴァ(大井)、ホッカイドウ所属のまま長距離輸送で臨むレディーアーサー、スティールルージュと、豪華なメンバーが顔をそろえた。エーデルワイス賞JpnIIIを勝ったとはいえ、続くJBC2歳優駿JpnIIIで大敗したことで距離への不安もぬぐい切れず、単勝オッズは6.2倍の5番人気にとどまった。

しかし、結果は4馬身差をつけての圧勝。ダートグレード勝ちの力をまざまざと見せつけた。

地元・大井の4戦無敗馬ロマンスロードが逃げるなか、他の有力どころとともに中団に控えたスピーディキック。3コーナーでは12番手だったが、馬群を縫うようにして位置取りを上げ、4コーナーで外に持ち出すと、圧巻の末脚を見せた。若干内にもたれたが、修正をかけると見る見るうちに先行馬を飲み込み、外へ寄ってきたヒストリックノヴァも置き去りに。圧倒的なインパクトを残してゴールを駆け抜けた。

道中は包まれるようなかたちになったが、本橋孝太騎手は「ホッカイドウでは後ろからでもすごくいい脚を使っていたので、落ち着いて乗れました」と涼しい顔。「厩舎の重賞初勝利がかかったレースに乗せてもらえたことに感謝しています」と笑顔で頭を下げた。

本橋騎手が話したように、藤原調教師はこれが重賞初制覇。転入時の意気込みを現実のものとし、見事に結果を残した。「馬体重が減っていたし、繊細な面もあるので、鍛えるというよりはコンディションを整えていくことに重点を置いてやってきました」と、慎重な調整が実を結んだ。祖父も父も益田競馬で調教師として馬づくりにいそしみ、智行調教師は3代目。スピーディキックを担当する末田秀行厩務員も、益田時代にジョッキーとして父の藤原孝幸厩舎に所属していた経歴を持つ。“日本一小さな競馬場”と称された益田の馬づくりは、いまも大事に受け継がれている。

なお、今回のレースを制したことで、スピーディキックはグランダム・ジャパン2歳シーズンにおいて40ポイントを獲得。牝馬重賞も3勝とし、名実ともに2歳女王の座に就いた。

2着にはヒストリックノヴァが入った。JRAでデビューし、エーデルワイス賞JpnIII・2着など、4戦を消化して転入。その2戦目で地力の高さを証明した。「4コーナーでは勝ったかと思いましたが、勝ち馬の切れがすごかったですね。でも、遠征(兵庫ジュニアグランプリJpnII・6着)の経験も生きている感じです」と矢野貴之騎手。スピーディキックには連敗というかたちになったが、これからの成長次第では逆転する場面もありそうだ。

取材・文 大貫師男

写真 岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

本橋孝太騎手

豊富な経験を積んでいる馬なので、全くひるむことがなかったですね。スペースがあいたところを指示したら素直に行ってくれたので、落ち着いて乗ることができました。4コーナーでは手応え抜群でしたし、直線に入って指示したらすごくいい脚を使ってくれたので、気持ちよかったです。

藤原智行調教師

直線に向いてジョッキーが外に持ち出してくれたので、これならかわせると思いました。実績のある馬なので、コンディションだけ整えて出走できればチャンスかなと思っていました。今後はユングフラウ賞から桜花賞へ。左回りを走ったことがないので、そこだけが気になるかなというところですね。