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2021ヤングジョッキーズシリーズ 総括


クローズアップ

2022.01.12 (水)

ファイナルは大井・中山
 5年連続で地方騎手が優勝

5年目のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)でまず残念だったのは、開催自粛となっていた笠松競馬場で実施されず、笠松に所属する騎手も出場できなかったこと。これによってトライアルラウンド(TR)は笠松競馬場を除く東西各5競馬場が舞台。ファイナルラウンド(FR)は昨年初めて西の園田・阪神が舞台となったが、今回は東の大井・中山に戻った。

出場騎手は、地方東日本が15名(うち1名欠場)、同西日本が14名、JRA東日本が9名、同西日本が10名。その人数のバランスから、TRでは2020年に続いてJRA騎手より地方騎手が2名多いという構成で争われた。

また2019年まで大井・中山でのFRは、地方・JRA各7名、計14名で争われていたが、今回は前年同様、各8名の計16名での争いとなった。とはいえ地方騎手にとっては東西ともFRに出場できるのは14分の4と、今年も狭き門となった。

そしてYJSに関連してこの年印象的だったのは、本シリーズの初年度2017年から19年まで出場していたJRAの横山武史騎手の活躍だ。GI初勝利を挙げたばかりか、異なる3頭でGI・5勝。JRA東のリーディングでも一気にトップに立った。近年、地方でも中央でも若手騎手の活躍が目立ってきているが、横山騎手のこの1年の活躍は傑出していた。

新人騎手の活躍が目立ったTR

TRの地方東日本では、デビューした前年は怪我のため途中欠場だった篠谷葵騎手(船橋)が2勝、2着1回という成績で地方騎手の東西を通じてトップのポイントで通過。同じく昨年デビューで2位となった古岡勇樹騎手(川崎)は、地元川崎のジョッキー対抗戦(川崎ジョッキーズカップ)ではデビューから2年連続で総合優勝を果たしており、ジョッキー戦での活躍が目立っている。3位、4位には、ともにこの年4月にデビューした新人、木間塚龍馬騎手(船橋)、若杉朝飛騎手(北海道)が入った。1位篠谷騎手は船橋第2戦を勝利、2位古岡騎手は川崎で1着・2着、木間塚騎手は船橋で2着・4着と、FR進出は地元での好成績が決め手になった。一方、若杉騎手はこの年、門別のシーズン終了までにわずか1勝を挙げたのみ。地元のTR門別でも5着が最高という成績だった。しかしながら迎えたTR最後の浦和第1戦、6番人気ながら直線で鮮やかに抜け出し、ファイナル進出を決めた一戦は印象的だった。

地方西日本でも、それぞれ所属場で勝利を挙げた兼子千央騎手(金沢)が1位、飛田愛斗騎手(佐賀)が2位、岡遼太郎騎手(高知)が4位でFR進出。3位の魚住謙心騎手(金沢)は地元戦こそ4着があっただけだが、西日本のTRではラストの名古屋第2戦を勝って逆転でFR進出を決めた。逆転といえば、それでFR進出を逃したのが、地元園田で勝利を挙げてトップに立っていた木本直騎手(兵庫)。ラストの名古屋では騎乗がなく、上記4名が高ポイントを獲得したことで惜しくも5位となった。なお西日本でも、前年10月デビューの飛田騎手、この年4月デビューの岡騎手と、YJS初出場の2名がFR進出を決めた。

東日本では地方騎手の活躍が目立ったため、JRA東日本の騎手はTR全10戦で3勝にとどまった。そうした中で、デビュー3年目の菅原明良騎手が6戦に騎乗し、1勝、2着2回、3着1回と圧倒的な成績を残した。東日本のTR初戦、門別第1戦で勝利して2位となった山田敬士騎手は4年目、2着2回で3位となった木幡育也騎手は減量ラストの5年目と、JRA・東日本は経験を重ねた騎手たちの活躍が目立った。なお4位には、デビュー2年目の原優介騎手が2年連続でのFR進出となった。

JRA西日本で際立ったのは、この年デビューした新人騎手の活躍。栗東所属でデビューした5名が上位5位まで独占する結果となった。中でも西谷凛騎手は4鞍のみの騎乗で、1勝、2着3回とパーフェクト連対。この年、JRAの新人騎手では最多の31勝(JRAのみ)を挙げた小沢大仁騎手が1勝、2着・3着各1回で2位。3位の永島まなみ騎手は、父の永島太郎調教師が見守る園田での勝利が印象的だった。2着2回で4位は角田大和騎手だった。

大井・中山で勝利を挙げた飛田騎手が優勝

FRでは毎年、地方騎手の活躍が目立っているが、今年はFR全4戦を地方騎手が勝ち、5年連続で優勝は地方騎手にもたらされた。

大井での第1戦は、クビ、クビ差という接戦。4コーナーでもまだ8番手だった篠谷騎手が直線大外を伸びて差し切った。2着には8番人気の西谷騎手、1番人気に支持された菅原明良騎手はスタートでの出遅れもあって3着だった。

第2戦を勝ったのは飛田騎手。1番枠でスタートダッシュがつかず中団よりうしろからの追走となったが、4コーナーで大外まで持ち出すと、先行2頭をゴール前でとらえガッツポーズで余裕のゴール。逃げた小沢騎手が2着、2番手の菅原騎手が3着という前残りの展開を大胆に差し切った。

残念だったのは3コーナーあたりで4頭の落馬事故があったこと。そのうち翌日のFR中山に騎乗できたのは若杉騎手だけ。岡騎手、兼子騎手、古岡騎手は、TRでJRA東日本5位の秋山稔樹騎手、同6位の小林脩斗騎手、地方東日本5位の七夕裕次郎騎手(浦和)にそれぞれ出場変更となった。なお加害馬の鞍上原優介騎手は4日間(12月29日から1月1日)の騎乗停止処分となった。

中山・芝コースでの第3戦は、アタマ、クビ差という接戦となり、11番人気、12番人気、1番人気で3連単は119万円という大波乱の決着となった。好位から4コーナーで馬群がバラけたところ、内から2頭目を抜け出した魚住騎手が、ゴール前迫った山田騎手を振り切っての勝利。中央の芝コースが初めてとは思えない好騎乗を見せた。

ダートでの第4戦は、クビ、ハナ、クビという、これまた大接戦で地方騎手が4着までを占めた。馬群の中から残り100メートルで抜け出した魚住騎手が連勝かというところ、外を伸びた飛田騎手が差し切った。

FRは、大井、中山でそれぞれ1勝ずつを挙げた飛田騎手が優勝。20年10月デビューながらすでに減量を卒業していることからYJSは最初で最後の出場。地方通算100勝を史上最速で達成し、さらにデビューから1年での最多勝記録(127勝)も更新したスーパールーキーに、YJS優勝という勲章も加わった。5年連続での地方所属騎手の優勝ではあるが、飛田騎手は西日本の騎手の優勝が初めてだったことを強調していたのが印象的だった。

2位も、この年7月に減量を卒業していた菅原騎手。デビュー年から3年連続でのFR進出で、19年は11位、20年は4位で、最後のチャンスで表彰台に立った。しかしながら大井、中山でそれぞれ1レースずつ1番人気に支持されながら、ともに3着という結果での総合2位はむしろ悔しい結果だったようだ。

魚住騎手は、中山で2連勝かというところ、最後に飛田騎手に差し切られた。もし勝っていれば総合優勝だっただけに、総合順位でも飛田騎手に差し切られたことでは悔しさもあったようだ。

前年のFR阪神ではコロナ感染対策から表彰式が行われなかったが、この年は出場騎手全員揃ってというわけにはいかなかったものの、ファンの前で上位3名の表彰式が実施されたことはよかった。

斎藤修

写真 いちかんぽ