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第36回全日本新人王争覇戦

コロナの影響で2年ぶり実施
  6着・1着の泉谷騎手が優勝

全日本新人王争覇戦が2年ぶりに帰ってきた。昨年(第35回)は新型コロナウイルスの影響で、1月19日から3月下旬に一度は延期されたものの、緊急事態宣言の延長もあって中止。今年もコロナの影響はあり、前夜に笠松所属騎手がPCR検査で陽性が判明。東川慎騎手(笠松)と岩手所属で現在は笠松で期間限定騎乗中の岩本怜騎手は前日の時点で濃厚接触者の可能性もあったため出場を辞退。それぞれ井上瑛太騎手(高知)、岡遼太郎騎手(高知)に騎乗変更となった。この2人はポイント対象外で、来年以降、改めて正式に選出される可能性があるとのことだ。

また、赤津和希騎手(浦和)、兼子千央騎手(金沢)、妹尾将充騎手(高知)、大木天翔騎手(大井)の4騎手も出場辞退のため、浅野皓大騎手(愛知)と濱尚美騎手(高知)が繰り上がり出場となった。

第1戦は地元騎手が「一発逆転ファイナルレースみたい」と話す混戦ムード。そんな中、逃げたのは仲原大生騎手(大井)。2番手に岡騎手がつけたが、「こんなに楽に先行できるとは思いませんでした」と話すように、落ち着いた流れで1コーナーを回った。勝負所3コーナーから金山昇馬騎手(佐賀)が勢いよく上がっていくと、それについていった関本玲花騎手(岩手)が、直線で抜け出した金山騎手、間から伸びた多田羅誠也騎手(高知)との接戦を制した。クビ差2着に多田羅騎手、さらにクビ差3着に金山騎手だった。

勝ったヴィルセキュリティの那俄性哲也調教師や厩務員らが「やったー!」と両手を上げて出迎えると、関本騎手は「足がふらふらです」と苦笑い。というのも、所属する岩手競馬は冬季休催中で約3週間ぶりのレースだったのだ。関本騎手の最近の取り組みである「お尻をつかずに低い姿勢で乗る」ことは引き続き課題のようだが、レディスジョッキーズシリーズなどで4回騎乗経験のある高知で初勝利となった。

2日前に佐賀・花吹雪賞をアンティキティラで勝ち重賞6勝目を挙げた多田羅騎手は「ツメが甘かったです」と話すとすぐに気持ちを切り替えた様子。3着金山騎手も「先頭に立つのが少し早かったですかね。次も全力で追います」と2戦目に向かった。

第2戦は対照的にペースが流れた。「ポイント対象外ですけど、見せ場をつくりたいです」と意気込んでいた井上騎手が3コーナーで勢いよく外から進出。「夢を見ました」という手応えだったが、さらにいい脚で差してきたのはルールダーマと泉谷楓真騎手(JRA)。直線先頭で粘る秋山稔樹騎手(JRA)を交わすと、大外から伸びた小野楓馬騎手(北海道)を半馬身差で振り切って勝利。小野騎手は「この着差ですから、3~4コーナーでもう1つ内を回っていたら……」と悔しさを見せた。3、4着も差し馬で、3着井上騎手は「1度乗ったことのある馬で、その時も最後にいい脚を使ってくれたので、今回もひと脚を使えればと思っていました」と地の利を生かした。2番手から積極的に運んだ秋山騎手は5着だった。

2戦を終えて第36代新人王に輝いたのは6着、1着で60ポイントを獲得した泉谷騎手で、前回2020年(第34回)王者の岩田望来騎手に続き、JRA騎手の優勝となった。2位は1着、7着で59ポイントの関本騎手、3位は2着、4着とまとめ55ポイントの多田羅騎手だった。

3人が表彰式に出席している頃、検量室では同期の浅野騎手と金山騎手が久しぶりの再会に話が弾んでいた。ヤングジョッキーズシリーズが創設され、以前よりも同期と会える機会が増えたが、気を許せる同期との再会は心和むひとときだろう。

急遽の騎乗変更となった井上騎手と岡騎手は、本来乗るはずだった騎手名が入ったゼッケンで騎乗するなど、コロナの影響も見られたが、こうしたご時世でも無事に開催できたことは騎手にとってもファンにとっても嬉しいことだっただろう。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 泉谷楓真騎手(JRA)

嬉しいです。1戦目は想定していた競馬で、馬が精一杯がんばってくれました。2戦目はペースが速かったので、後ろからでもいいと思いました。100点のレースではないですが、精一杯、馬の能力を出すことはできたかなと思います。今年はまだJRA未勝利なので、調教から技術を上げられるよう精進したいです。

総合2位 関本玲花騎手(岩手)

悔しいですけど、2位になれてよかったです。1戦目は3~4コーナーで金山騎手が上がっていった時、その真後ろに誰もいなかったので、外に出せば上位争いができると思いました。直線もしっかり伸びてくれて、馬の力で勝てました。2戦目は早めに来られて苦しい展開になってしまいました。

総合3位 多田羅誠也騎手(高知)

今日の馬場は、1頭分内なら使えそうに感じました。1戦目は道中で上手く脚を溜められて、内からいい感じに捌けましたが、惜しかったです。前回の2020年は調教中に怪我をして出場できなかったので、「今回、やっと乗れる」と思いました。