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第20回若草賞

断然人気にこたえ遠征で重賞連勝
  若き鞍上とともにめざす3歳女王

近年より2~3週間ほど早い開催となった若草賞から今年もグランダム・ジャパン(GDJ)3歳シーズンが開幕した。この日は全国的に下り坂の天気で、名古屋競馬場でも昼過ぎから雨。3月と言えど、冷え込んだ一日となった。

場内では、“土古(どんこ)”の愛称でも親しまれた現競馬場の最終開催日まで10日と迫ったこともあり、飲食店には常連とおぼしきファンが、パドック周辺には若いファンの姿が見られた。

そんな中、「緊張しています」と少し表情を強張らせたのは多田羅誠也騎手(高知)。来月でようやくデビューから3年を迎える若手ながら、遠征しての重賞制覇はすでに4勝の有望株だ。そのいずれもが別府真司厩舎の馬でのもので、今回も例にもれず別府厩舎のアンティキティラでの参戦となった。同馬は門別で新馬(フレッシュチャレンジ)をはじめJRA認定レース2勝を含む3勝を挙げて高知に移籍すると、3連勝で前走は佐賀の花吹雪賞を勝利。一方で、「気が悪い面があり、気を許した馬との併せ馬でないとやめるところがあります」と、調整面での工夫を挙げたのは別府調教師。多田羅騎手も「気難しい牝馬で乗りづらいところがあるんですけど、レースに行ったら力強く走ってくれます」と話すあたり、気性とポテンシャルのバランスをどう取るか、というのが大きな課題にもなるのだろう。

パドックでは前走に続き2人曳きで、気合いを内に秘めつつ落ち着いて周回したアンティキティラ。逃げ・先行争いが激しくなると見込まれたレースで好発を決めると、ペースが流れると見るや、4番手に控えた。対してハナを奪ったのはレイジーウォリアー。地元デビュー馬で、年明けは逃げ切り2連勝で新春ペガサスカップを制していた。外からアマクミナイデヨと、ラッキーミーティア(船橋)が続いた。

向正面に入り、外を何度か気にしたのは多田羅騎手。JRA未勝利勝ちから名古屋移籍後2連勝のグレタがじわっと外から進出するのを確認すると、あえて外には出さず内に進路を見出した。それはちょうど、逃げるレイジーウォリアーが1馬身抜け出し、インにぽっかりと進路が空いたタイミングでもあった。そこから直線入口で外に持ち出しレイジーウォリアーに並びかけると、直線半ばで抜け出し4馬身差をつけて勝利。3着には後方から追い込んだスターフジサン(愛知)が入ったが、2着レイジーウォリアーからは7馬身離されていた。

1番人気で勝ったアンティキティラはこれで13戦7勝(うち重賞2勝)。春は地元・高知で黒潮皐月賞や高知優駿など3歳世代戦があるが、「このあとは佐賀と園田、GDJ一本で行こうかと思います」(別府調教師)とのことで、4月10日ル・プランタン賞(佐賀)、5月12日のじぎく賞(園田)と戦い、GDJ3歳女王を目指すプランが明かされた。

あいにくの天気とコロナ禍ながら、応援に駆け付けたファンに向かって口取り撮影の去り際、「多田羅騎手を一人前にします!」と宣言した別府調教師。ここ1年弱、重賞など大一番で積極的な起用が見受けられ、このコンビでさらなる飛躍が期待される。

取材・文 大恵陽子

写真 岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

多田羅誠也騎手

2番手を取れたら楽だなと思いましたが、外2頭がペースを上げそうな感じだったので一つ下げて落ち着いてレースを運びました。勝負所で外に出そうかとも思いましたが難しそうだったので、内から行きました。手応えはまだ余裕のある感じで、逆に遊ばれてしまったので、今後修正できたらと思います。

別府真司調教師

一番いい状態で調教を終えられて、ある程度の自信がありました。前に馬がいれば追うタイプの馬で、直線は必ず捕らえてくれると思いましたが、抜けると遊んでしまうので内の馬に邪魔にならないかということだけ心配していました。このあとはGDJを狙っていこうと思います。