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第68回エンプレス杯JpnII

直線内から抜け出し重賞初制覇
  サルサディオーネは逃げて2着

繁殖入りを控えた牝馬たちが引退を迎えるこの季節。昨年のエンプレス杯JpnIIの覇者マルシュロレーヌはその後、ダートの本場アメリカのブリーダーズカップ・ディスタフGIで歴史的勝利を飾り、今年2月のサウジカップGIでラストランを終えた。また、昨年のJBCレディスクラシックJpnIを優勝したテオレーマも引退が発表された。さて、今後のダート牝馬戦線はどの馬が中心となっていくのだろう。今年のエンプレス杯JpnIIには、それを見据えるうえでも注目のメンバーが集まった。

JRAからは今年のTCK女王盃JpnIIIでテオレーマのクビ差2着だったショウナンナデシコや、牝馬ダートグレード2勝の実績馬レーヌブランシュなど5頭が参戦。地方からも、ダートグレード通算4勝で2年連続してNARグランプリ・4歳以上最優秀牝馬に選ばれたサルサディオーネ、昨年のクイーン賞JpnIIIで重賞初制覇を決めたダイアナブライトなど実力馬が揃った。

ゲートが開くと予想通りサルサディオーネが先手を取った。2番手にクリノフラッシュ、直後の好位集団にショウナンナデシコ、ダイアナブラライト、ウェルドーン、プリティーチャンスなどが追走。スタートで出遅れたレーヌブランシュは後方からレースを進めた。

1周目スタンド前でレーヌブランシュが外から一気に進出し3~4番手まで上がったが、向正面でその他の馬たちに大きな動きはなく3~4コーナーへ。

マイペースで逃げていたサルサディオーネを目がけJRA勢が迫り、直線ではレーヌブランシュが外から並びかけた。しかし、その2頭を最内から一気に交わしたのがショウナンナデシコ。そのまま突き抜けて1馬身半差で鮮やかに勝利を手にした。レーヌブランシュに一旦交わされたかに見えたサルサディオーネだったが、ゴール前でもう一度伸びて2着。クビ差の3着にレーヌブランシュが入り、人気順の決着となった。

見事重賞初制覇を飾ったショウナンナデシコは、これで5戦連続連対とまさに充実一途の5歳馬だ。今回は初の川崎コースだったが、「2周するコースだったので、最初にポジションを取ったときに少し行きたがる部分はあったのですが、馬の後ろで我慢することを覚えてくれたので1ハロン過ぎからは良いリズムをとれました」と吉田隼人騎手。前走から牝馬ダートグレードに参戦し、それぞれの舞台で結果を残したことは今後に大きく繋がることだろう。

サルサディオーネは昨年に続き2着と雪辱とはならなかったが、この馬の頑張りには本当に頭が下がる。堀千亜樹調教師もレース後「偉い、偉い仔なんですよ!」と何度も口にしていた。矢野貴之騎手は「距離も少し長いのですが、道中の雰囲気からこれは勝つレースだとは思いました。ただ、勝った馬の切れ味に完敗でした。でも2着に踏ん張ってくれたし良く走っています」と振り返った。8歳になったが今年も牝馬戦線の中心的存在として活躍してくれそうだ。次走は、マリーンカップJpnIIIを視野に調整を進め、JBCを大目標に斤量面も考えながら大事に使っていきたいとのことだ。

レース後、ショウナンナデシコの吉田騎手と、サルサディオーネの矢野騎手が会話をしながら戻ってくる姿があった。聞いてみると、矢野騎手自身、ショウナンナデシコが力をつけていると感じたとのことで、吉田騎手と健闘を称えあっていたそうだ。今後、再戦するであろうこの2頭の好勝負にも期待したい。

取材・文 秋田奈津子

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

吉田隼人騎手

スムーズな競馬にはなりませんでしたが、逃げた馬が強いと分かっていたのでぴったりついていこうと思いました。最後は馬に助けられて進路をこじ開けてくれました。我慢できるようになってきたので終いに脚を使うことも覚えてきました。力をつけているのでこれからもっと良い競馬ができると思います。