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第45回名古屋大賞典JpnIII

ゴール前一気の脚で差し切る
  58キロを背負って連覇達成

73年の歴史を刻んだ名古屋競馬場は4月の移転を前に、翌日が開催最終日。最後の重賞となった名古屋大賞典JpnIII当日は天気にも恵まれ、平日にもかかわらず4420名もの入場。メインのパドックはぎっしり人垣ができるほどだった。

断然の支持を集めたのは、昨年と同じ58キロで連覇を狙うクリンチャーが単勝1.4倍。前走佐賀記念JpnIIIを5馬身差で圧勝したケイアイパープルが3.3倍。アナザートゥルースがやや離れて8.2倍だが、連勝系の馬券はこの3頭に集中した。

4歳になっての重賞2連勝が逃げ切りという地元のトミケンシャイリが行く気を見せたが、それより枠順が内のジンギ、アナザートゥルースが速かった。トミケンシャイリは控えて内に入れ3番手。そこにケイアイパープルが並びかけてきた。人気のクリンチャーはと見れば、行き脚がつかず中団5、6番手あたりからの追走となった。

ジンギが強気にレースを引っ張る展開で、勝負どころの2周目3コーナーでは、ケイアイパープルが一気にジンギをとらえにかかった。ジンギも内で食い下がり、4コーナーを回ったところではこの2頭の勝負かに思われた。

そこに外からまくってきたのがクリンチャー。直線、残り100メートルあたりで先頭のケイアイパープルとは2馬身ほどの差があったが、クリンチャーはそこから一気に脚を伸ばし、アタマ差とらえたところがゴール。力尽きたジンギはやや離されての3着だった。

ギリギリのところでの勝利となったクリンチャーの川田将雅騎手は、「(馬の状態は)正直あまりよくなくて、かなり苦しい競馬が予想される返し馬で、その感触どおりゲートからいい走りがまったくできずにレースが進んでいく形になったので、そのなかで勝てる競馬になるように模索しながら乗っているという感じでした」という。その状態で、3~4キロの斤量差がある2、3着馬を競り落としたのだから、人気どおりに能力が抜けていた。次走予定は阪神のアンタレスステークスGIII(4月17日)で、夏の大目標は帝王賞JpnIと、宮本博調教師。

惜しくも2着に敗れたケイアイパープルは、右回りに良績が集中していることから、帝王賞JpnIに行ければ、と村山明調教師。

中央勢の上位独占を阻止する3着に食い込んだ兵庫のジンギは昨年より着順をひとつ上げただけでなく、昨年クリンチャーと7馬身あった差を、アタマ+4馬身に縮めた。しかもそれがみずからペースをつくっての結果だけに価値がある。「今までとはぜんぜん違うペースでハナに行って、ちょっとしんどいレースをさせたかなと思うんですけど、動かしたら動かしたぶん我慢したので、まだ奥はあると思います」と田中学騎手は手応えを感じた様子。管理する橋本忠明調教師も、「差はありましたけど、強気で攻めての結果なのでよかった」と満足の表情。あまり詰めて使いたくないとのことで、兵庫大賞典(5月5日)から帝王賞JpnIが目標という。

土古(どんこ)という地名でも親しまれた名古屋競馬場最後の重賞の売上8億8471万700円は、2005年JBCクラシックGIの8億1358万6700円を上回り、名古屋競馬場1レースの売上レコード更新となった。

取材・文 斎藤修

写真 国分智(いちかんぽ)

Comment

川田将雅騎手

なんとか届いてくれて、無事に勝つことができて何よりです。状態面で不安を抱えながらも、(ケイアイパープルと)3キロ差がありながら勝ち切ることができたのは、この馬の能力の高さだと思いますので、あらためていい状態で競馬場に連れてくることができればと思います。

宮本博調教師

東京大賞典のあとリフレッシュ放牧から帰って、いつもどおりの調教過程できたと思います。(位置取りは)ちょっとハラハラしました。それでも勝ってくれたので、クリンチャーには頭が下がります。(強さは)長く現役でいられることじゃないですかね。