web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第24回黒船賞JpnIII

馬場を味方に直線抜け出す
  兵庫期待の4歳馬がDG初勝利

馬場状態が大きなカギを握った今年の黒船賞JpnIII。例年この時期は雨が一度降るとなかなか乾かず、重や不良馬場での開催が恒例となっていたが、今年は雨が少なく気温が高かったことなどから15年ぶりの良馬場での開催となった。最内の砂厚が14センチ以上と深い高知においてパサパサに乾いた馬場とあって赤岡修次騎手は「黒船賞史上最もタフな馬場じゃないでしょうか」と話した。

それを味方につけたのは兵庫から遠征のイグナイター。前走・黒潮スプリンターズカップで高知の馬場を経験し、7馬身差で圧勝。加えて、前日から内が伸びる馬場で内めの3番枠を引いた。これには新子雅司調教師も「いまの馬場傾向を考えると、このくらいの枠がいいですよね」とニヤリ。

ラプタスが好スタートを切って逃げる中、その直後でレースを運んだ。前半400メートル通過24秒0は過去4年より1~2秒遅いラップ。本来ならスローペースで逃げ馬が残りそうなものだが、2020年黒船賞JpnIIIを不良馬場でスピードを生かして勝ったラプタスにとっては馬場がタフすぎたのか、4コーナーで一杯に。代わってイグナイターが内からいい手応えで抜け出すと、2番手外から伸びたヘリオスに1馬身差をつけて勝利した。

そしてクビ差3着は地元のダノングッド。道中はイグナイター同様に内を進み、4コーナーではさらに内を突いて伸びてきた時には「夢を見ました」と別府真司調教師。多田羅誠也騎手も「惜しかったですが、一瞬、夢を見ました」と興奮した表情で引き上げてきた。10歳馬ながら「移籍してきて以降、今が一番いい状態」(別府調教師)で、今後ますます地元を盛り上げる1頭となりそうだ。

ほかのJRA馬がタフな馬場に苦戦する中、2着だったヘリオスは「初めての地方コースも上手でした」と寺島良調教師が話せば、武豊騎手も「いろいろとこなしてくれて、選択肢が広がりました」と収穫があったようだ。

勝ったイグナイターはJRAのダートで新馬勝ちを収め、大井を経て昨夏、兵庫に移籍すると、2戦目のB1戦をかなり速いタイムで勝ち、3歳馬同士の地方全国交流重賞・楠賞を制覇。年末の兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIでは52キロのハンデも味方につけ3着に逃げ粘った。今回は「ハンデ戦ではなく、別定で勝てたことはすごく自信になります」と、田中学騎手は2着ヘリオスと同じ56キロでの勝利を称えた。

平日ながら多くのファンが来場し、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々な媒体で生中継も複数組まれたこの日の売り上げは20億593万1000円となり、高知競馬の1日あたりの売得金レコードを記録した。それは昨年の黒船賞JpnIII当日の16億2188万2700円を大きく上回るもので、黒船賞JpnIII単体でも7億8006万2600円で、高知競馬の1レースあたりの売得金レコードを更新。高知競馬で年に一度のダートグレード競走は大きな盛り上がりで幕を閉じた。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

田中学騎手

前走を勝って自信がつき、「1つでも上の着順」ではなく、勝負に行って勝てたことが嬉しいです。道中はリラックスして運べ、すごく楽な競馬で4コーナーを迎えられました。手応えも抜群で、もう少し我慢していたらもっと楽に勝てたかなと思います。これからも大きなレースに挑戦したいです。

新子雅司調教師

嬉しいです。力のいる馬場は合うと思っていましたし、逃げ馬の後ろに入れたらチャンスがあるなと思っていました。エイシンヴァラーで勝った経験も生きましたし、自信を持って挑んで勝てたことが今後の自信につながります。このあとは地元の中距離路線か、短距離のダートグレードかオーナーと相談します。