第68回桜花賞

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第68回桜花賞

不利な大外枠でも末脚炸裂
  2歳女王が人気にこたえる

南関東競馬のクラシック戦線がいよいよ開幕した。今年も先陣を切ったのは牝馬一冠目の桜花賞。68回を迎えた伝統の一戦は一貫して1600メートル戦で実施されてきたが、来年から1500メートル戦に変更されフルゲートは1頭増え12頭となる。

浦和競馬場の1600メートル戦はスタートしてすぐコーナーに入ることからポジション取りが枠順に大きく左右され、内枠が有利で外枠が不利だ。ここ10年を遡っても、大外枠の馬は勝っていない。今年は浦和から唯一参戦の2歳女王スピーディキックが8枠11番に入った。

「逃げ馬ならへこみましたがこの馬の脚質を考えればそこまで気にしていません。ゲートでうるさい所があるので、(枠入りが最後で)すぐにゲートを切れるのはプラスに考えています。強ければ勝つと思います」と、管理する藤原智行調教師は言っていたが。まさにそれを証明した形。

今回は藤原調教師とは益田競馬場出身つながりの御神本訓史騎手が初騎乗。スピーディキックはいつものようにスタートがゆっくりで後方2番手からの競馬。

「返し馬に跨ってからの感触でレースプランを考えようと思いましたが、不利な条件が重なっていたのでなかなかプランも決まらず苦労しました。スタートもちょっと良くなかったし、前も流れていたので、腹をくくってあの位置から進めました」(御神本騎手)

1枠1番からラインブレイカーがハナに立っていくと、2番手にはユングフラウ賞の勝ち馬スティールルージュがつけ、その一列後ろに、ヒストリックノヴァやクールフォルテ、ロマンスロードが続いていき、さらに後ろをティーズハクアが追走。

向正面に入ったところでスピーディキックが一気に押し上げて中団へ。3コーナーで一度は内に入れ、4コーナーでは外に持ち出し前のグループに取りついていき、直線では5頭が横並び。スピーディキックは、一歩抜け出たティーズハクアと馬体を併せる形になったがこれを競り落とすと、最後は切れ味が炸裂して突き抜けた。勝ちタイムは1分41秒8(良)。2馬身差の2着がティーズハクア、3着はクールフォルテ。

藤原調教師は益田競馬場で生まれ育ち、父と祖父も益田の調教師だったという競馬一家の3代目で、父の厩舎で厩務員をしていた。しかし、2002年に益田競馬場が廃止になり、厩務員のまま浦和競馬場へ移籍。それから調教師になり、スピーディキックと出会った。担当しているのも益田で騎手をしていた末田秀行厩務員。

「益田にいた時のメンツで重賞を勝ちたいという思いで調教師になりました。技術がなくて競馬場が廃止になったのではないことを、チーム益田として見せたかったです」(藤原調教師)

北海道から移籍し、現在は南関東でチーム益田が率いるスピーディキックは、2カ月半ぶりの実戦ながら、初コースに初めての左回り、大外枠で、脚質的にも浦和コースは疑問視されていた中、自在に動けるあれほどの強さ。

まずは牝馬一冠目を獲得し、当面の目標は東京プリンセス賞で、関東オークスJpnIIと進んでいくという。06年チャームアスリープ以来2頭目の牝馬三冠を目指す。

取材・文 高橋華代子

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

御神本訓史騎手

人気に応えることができてホッとしています。スタッフの皆さんがしっかり仕上げてくれたのと馬の能力ですね。今回初めての左回りも克服してくれたので、牝馬三冠目の関東オークスに広がる結果になりました。このまま順調にクラシック路線を進んで欲しいですし、まだまだ強くなると思います。

藤原智行調教師

前走後は牧場での調整も入れて左回りの練習もしてもらいました。前走は移籍初戦で手探りの部分もあって仕上がりは6、7分くらいでしたが、今回は10割に近い仕上げでは送り出せました。現状でできることは全てやって後悔のない仕上げだったので、騎乗についてはノリ(御神本騎手)に任せました。