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第54回ばんえい記念

障害先頭から止まらず昨年の雪辱
  人馬ともにばんえい記念父子制覇

1トンのソリを引くばんえい競馬の最高峰。その特殊性から勝ち馬が連続することも珍しくないが、今年は2014年以来となる優勝経験馬不在の混沌としたレースとなった。とはいえ、今のばんえい界を背負うトップホースがそろった。最強世代といわれる6歳のメムロボブサップ、アオノブラックがついに初出走。メムロボブサップは調子の良さから軽量のスピードスター賞をステップとし、急遽出走に踏み切った。

前日は、開催までも危ぶまれるほどのみぞれ混じりの大雪。例年この時期は停止される馬場のヒーティングも稼働し続け、ロータリーハローをかけて大舞台にそなえた。レース当日は晴れ、第1レースから馬場水分5.0%にしては力のいる馬場に観客の応援にも熱が入る。第9レースのばんえい記念は4.8%で迎えた。残念ながら昨年の2着馬キタノユウジロウが熱発のため除外。8頭で行われた。

大滝翔アナウンサーが「世界一長い1ハロン戦」と呼ぶ特別な200メートル戦は、恒例となった新旧重賞ファンファーレでスタート。メムロボブサップ、アオノブラックの2頭が先行し、第1障害は全馬がすんなりと越えた。道中は細かく刻みながら進む1トンならではの展開。6歳2頭とアアモンドグンシン、メジロゴーリキが先手を奪いに行く。

97秒でアオノブラックが最初に第2障害手前に着き、息を整えて最初に仕掛けた。続いてアアモンドグンシン。次に登ったメジロゴーリキはひと腰で越えた。メムロボブサップもふた腰で越え、2頭のマッチレース。メムロボブサップがゴール前10メートルで止まり、メジロゴーリキは太い首筋を力強く揺らし、止まらずにゴールまで駆け抜けた。

ゴール後、西謙一騎手は馬を迎えに来た厩務員と手を合わせて喜びを分かち合った。勝ちタイムは2分47秒2。2着はメムロボブサップ、3着は3番手で障害を越えたアオノブラックで、来季に楽しみな内容。4着はこれが引退レースのシンザンボーイ、1番人気のアアモンドグンシンは5着だった。

B2クラスから出走したキンツルモリウチは、夢のレースを目指して春から調教を続けてきた。たてがみを彩った芦毛馬が最後にゴールした瞬間場内は大きな拍手に包まれた。

西騎手は、父の西弘美調教師が騎手時代の2008、09年にばんえい記念を制したトモエパワーで初騎乗(5着)の10年から、13年目でのばんえい記念初制覇。その年の勝ち馬がメジロゴーリキの父ニシキダイジンと、人馬ともにばんえい記念父子制覇となった。

松井浩文調教師は6度目の優勝。多くの重賞勝ち馬を管理しながら「1トンは別物」と言い続けてきた師が自信を持って送り出した馬が、トモエパワーとカネサブラックに続く3頭目のトップホースとなった。

この日2021年度のばんえい競馬の開催が終了。発売総額は517億9517万3200円で昨年に続くレコードとなった。

取材・文 小久保友香

写真 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

西謙一騎手

普段どおりに乗ることだけを考えていました。昨年より楽に追走できたので障害だけ気をつけた。メムロボブサップが横から来たのが見えていたが、自分は止まらないだろうという手応えがあった。重賞は2着ばかりだったので最後に大きいところを獲れてよかった。

松井浩文調教師

大変良いレースでした。岩見沢記念のように重馬場なら(勝てる)、と思っていた。昨年は馬場が軽すぎて持ち味が出なかった。前日は雪でハラハラしたがなんとか勝ってくれた。馬も立派ですし、騎手も立派。ばんえい記念の仕上げのコツは企業秘密です(笑)。