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第67回ダイオライト記念JpnII

2歳ダート王が完全復活
  13年ぶり地方馬の勝利

ダートグレードにおいて地方のメンバーが手薄になる傾向が長らく続いてきたが、今回はハイレベルな顔ぶれ。昨年のJBCクラシックJpnIを制し、NARグランプリ2021の年度代表馬に輝いたミューチャリー(船橋)を筆頭に、報知オールスターカップで復活を果たした川崎のノーヴァレンダ、川崎記念JpnIで2着のエルデュクラージュ(船橋)、金盃1、2着のフレッチャビアンカ(船橋)、セイカメテオポリス(大井)などが駒を進めてきた。数少ない2400メートルという距離設定で、これだけのメンバーがそろうのは珍しく、09年のフリオーソ以来となる地方勢の勝利が期待された。

好ダッシュを決めて逃げを主張したのはノーヴァレンダ。内から1番人気のメイショウカズサ(JRA)も主張するが、ノーヴァレンダの森泰斗騎手は譲らない構えで、1周目3コーナーの入口で先手を奪い切った。それもあって縦長の展開で進んだが、その後は13秒台前半のラップで落ち着き、馬群は凝縮。一団となってゴール板前を通過する。

2周目の向正面に入ると、メイショウカズサは手応えが怪しくなって後退。代わってダノンファラオ(JRA)が勢いよくノーヴァレンダに並びかけ、3コーナー過ぎではいったん前に出る場面も見られた。

しかし、ここからがノーヴァレンダの真骨頂だった。4コーナーで先頭を奪い返すと、森騎手の激しい叱咤に応えてダノンファラオを突き放す。セーフティリードを築いてからもしぶとく粘り、中団から早め進出のエブリワンブラック(JRA)に2馬身半差をつけて逃げ切った。

よほど嬉しかったのだろう。引きあげてくる際には大きく手を挙げ、控室に戻ってからも「よしっ」と何度もこぶしを握った森騎手。「ダノンファラオのほうが手応えが良さそうだったので分が悪いかなという感触でしたが、4コーナー手前でステッキに反応したので、馬の地力で勝ったと思います」と満面の笑みだった。

不良馬場での逃げ切りとはいえ、この開催の船橋競馬場は通常より時計がかかり、力の要る馬場状態。思い返せば報知オールスターカップを制した際も、森騎手は「終始つつかれる苦しい展開で逃げ切ったのだから完全復活と言える」と、厳しい条件のなかで勝ち切ったことを高く評価していた。気分良く逃げられれば多少のハイペースは我慢でき、他馬に脚を使わせるような消耗戦に持ち込むのが理想のかたち。今後について、管理する内田勝義調教師は未定としたが、「JBCも行ってみたいね」と、さらなる大舞台へ夢を膨らませる。18年の全日本2歳優駿JpnI以来となるGI/JpnI制覇に、期待は高まるばかりだ。

向正面から息長く脚を使ったエブリワンブラックが2着。芝GIで7勝を誇るキタサンブラックの全弟が、ダートグレードの舞台で高い資質を示した。「出たなりで進んで、早めに仕掛けていく指示でした。その通りの競馬ができたし、力の要る馬場も合っていて、この馬の持ち味を生かすことができました」と戸崎圭太騎手。前走の名古屋大賞典JpnIIIは4着だったが、今後も広いコースで本来の力を発揮するに違いない。

地元の期待を背負ったミューチャリーは3着。御神本訓史騎手が腰痛のため、乗替わった本橋孝太騎手は「最後はいい脚を使えていた。2周目の向正面でスムーズに運べていたら勝てていたかも」と振り返った。中団を進んでいたが、勝負どころで前が壁になり、仕掛けのタイミングが遅れたのが響いた。ただ、直線で外から猛然と追い上げた内容は悪くなく、挽回の余地は十分にある。

取材・文 大貫師男

写真 国分智(いちかんぽ)

Comment

森泰斗騎手

返し馬で若干重めだなと感じましたが、結果を出してくれて大した馬だと感じました。2番手の競馬も想定していましたが、スタートが速く二の脚もついたので、主張してハナを取りにいきました。折り合いもついていたと思います。もうひとつ上のレースを目指していくと思うので、僕も頑張りたいですね。

内田勝義調教師

少し太かったし、2周目の3コーナーでは厳しいかなと思いましたが、やはり能力がありますね。転入当初より馬体に張りが出てきて、本当に良くなってきています。もまれるような競馬では今ひとつなので、行き切ったのも良かったのでしょう。次走は未定ですが、さらに上の舞台も狙ってみたいと思います。