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第33回東京スプリントJpnIII

3頭の接戦を制し重賞初制覇
  混戦のスプリント路線に新星

スプリント路線が面白味を増してきた。昨年のJBCスプリントJpnIを制したレッドルゼルがドバイゴールデンシャヒーンGIで2着に健闘し、日本のダートスプリントが世界のトップレベルにあることを証明。その一方で、レースごとに勝ち馬が変わるような混戦も続いている。

地方勢に目を転じても、黒船賞JpnIIIで兵庫のイグナイターと高知のダノングッドが好走し、全国的なレベルアップが見て取れる。賞金増による有力馬の入厩に加え、スーパースプリントシリーズに代表される短距離路線の拡充がかみ合っている印象だ。

今回の一戦にはリュウノユキナやサクセスエナジーといったJRAのタイトルホルダーが駒を進めてきたが、同じくJRAからピンシャンやシャマル、川崎に転入したルーチェドーロなど、フレッシュな面々がエントリー。今後を占う好メンバーとなった。

船橋のカプリフレイバーが好ダッシュを決めて先手を奪うと、その外に大井のギシギシがつける。リュウノユキナとシャマルが3番手で並んで3コーナーを回ると、その後ろにルーチェドーロも接近して直線を迎えた。

外からシャマルが抜け出しを図り、ギシギシがこれに馬体を併せにいくと、内へ進路をとったリュウノユキナも鋭く伸び、3頭横並びの激しい叩き合いが繰り広げられた。ハナ、クビの大接戦は新鋭シャマルに軍配が上がり、リュウノユキナ、ギシギシの順で入線した。

シャマルは前走でJRA3勝クラスを勝ったばかりで、重賞は初挑戦。補欠から繰り上がったチャンスをものにした。「人馬ともに(大井の)ナイターが初めてでしたし、前走で3勝クラスを勝ったばかりでしたが、ここでどれだけの競馬ができるか期待はありました」と、自身もダートグレード初制覇の川須栄彦騎手。スムーズに外に持ち出し、シャマルの能力を最大限に発揮させる好騎乗だった。ワンターンのダート1200メートルしか経験しておらず、1周競馬への対応が鍵になるが、叩き合いで下した相手がリュウノユキナなら、今後の活躍は約束されたようなもの。楽しみな4歳馬が現れた。

一方、悔しそうな表情を見せたのは、リュウノユキナの横山武史騎手で、「ただただ、残念です」とだけ話して控え室に戻った。3コーナーで前が窮屈になり、直線でも進路が狭くなる場面が見られたが、それでもハナ差の2着。持ち前の能力に疑う余地はなく、引き続き短距離路線の主役を担っていくに違いない。

3着のギシギシは前走でA2下特別を勝ったばかりだったが、その際に栗田裕光調教師が「久々に大物が出たね」と口にしていただけに、この結果もうなずける。ただ、2番手を楽に追走して同タイムで食い下がり、ダートグレードの舞台で主役級の走りを見せるとは思わなかった。「まだ余力も感じましたし、時計も一気に詰めましたからね。楽しみしかないです」と矢野貴之騎手。サブノジュニアが引退し、ニューヒーローの誕生が待たれたなかでの好走。前残り決着で4着に追い上げたルーチェドーロとともに、地方勢にとっては明るい話題となった。

取材・文 大貫師男

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

川須栄彦騎手

ゴールでは分からなかったですが、先に出ていてくれと祈っていました。余裕を持っていいポジションをキープできましたが、先頭に立って少し気をつかっている印象でしたね。内から強い馬も見えたので最後は頑張ってくれという気持ちでした。まだ4歳なので、人馬ともども成長していけたらと思います。

松下武士調教師

本当に嬉しいです。ゴール前は交わしてくれという気持ちでいっぱいでした。初めての地方競馬で勝つことができて、馬にとっても自信になったと思います。今後は栗東に戻って馬体を確認してから、オーナーサイドと相談するつもりです。また応援をよろしくお願いいたします。