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第28回東海クイーンカップ

ロスなく立ち回り直線差し切る
  吉原騎手は名古屋の重賞連勝

今年の東海クイーンカップには、南関東から4頭、兵庫から1頭が参戦。今年ここまでのグランダム・ジャパン3歳シーズン3戦の勝ち馬が出走しなかったため、ここからのスタートでも優勝を目指せる可能性が十分にある。

しかしながら、新しい競馬場で他地区所属の騎手が多く参戦するというのは波乱につながる要素。4月8日の開幕日はインコースをすこし開ける形になっていたが、土日をはさんだ2日目以降は内ラチ沿いに蹄跡が残った。現在は「最内の1頭分が通りやすくて、その外側の2頭分くらいの砂が重い」(加藤利征騎手)状況になっているようで、この日のレースも逃げ馬が粘る一方で追い込み馬も届く結果が多く見られた。

さらにこの日は午後3時頃から雨脚が強くなり、東海クイーンカップのひとつ前のレースから重馬場に。

ゲートが開くと浦和のスターオブケリーが10番枠から「次は短距離戦の予定と聞いていたので、最初から行くつもりでした」(見越彬央騎手)というダッシュ力を披露して先手を取った。

重賞を2戦連続で逃げ切っていたアップテンペストは単勝1番人気に支持されていたが、そのスピードに負ける形で2番手を選択。同じく逃げ先行で結果を残しているレイジーウォリアーは3番枠からのスタートだったが、丸野勝虎騎手は1周目の4コーナーで前の2頭の外に誘導。名古屋競馬場の馬場状態をよく知っている騎手ならではの判断といえた。

しかしもう一人、名古屋の馬場をよく知っている騎手がいた。2番人気に推された船橋のグラーツィアは、鞍上が先々週の東海桜花賞を制した吉原寛人騎手。最内枠のスタートから前の2頭の直後でインコースを追走し、4コーナーで外に出して差し切るという、道中のロスが少ない走りで勝利をおさめた。

その結果には、1馬身半差の2着に逃げ粘った見越騎手も「アップテンペストが向正面で苦しくなったのは分かりましたが、その内側にもう1頭いたとは」と、初の重賞勝利を逃した結果でも仕方ないという表情。それでも「この距離でこれだけ走れたなら選択肢が増えますね」と前向きに話していた。

そして2馬身差の3着には最低人気(単勝194.9倍)のエムエスムーンが食い込んできた。道中の位置は馬群から離れた後方で、最後の直線で一気に伸びてくる形。前記したこの日の傾向が当てはまる結果だった。

3番手で粘り込みを狙ったレイジーウォリアーは4着で、5着には最後方から差を詰めた笠松のドミニク。「前半は馬場に脚を取られて、エンジンがかかるのが遅すぎました」と、向山牧騎手は苦笑いしていた。

佐賀のル・プランタン賞から中10日で遠征してきた浦和のクレウーサは、中団追走から失速して8着。管理する小澤宏次調教師は「目に見えない疲れがあったかな。園田(のじぎく賞)か水沢(留守杯日高賞)に行くかどうかは、帰って様子を見てから考えます」と話した。

その舞台には勝ったグラーツィアも向かう予定だが、日程的にどちらかしか選べない。「獲れる重賞を獲りに行きたい」と、グラーツィアを管理する米谷康秀調教師。次のレース選択は出走予定馬の見極めも重要な要素のひとつになる。

取材・文 浅野靖典

写真 岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

吉原寛人騎手

レースをどう進めていくか迷いましたが、馬場状態を含めて内ラチ沿いを進むことにしました。後半はどれだけ伸びるか心配でしたが、4コーナーでの手応えで間に合うと思いました。今日のような湿った馬場のほうがよさそうですね。(教養センターで)同期だった(元騎手の)米谷先生と勝ててよかったです。

米谷康秀調教師

ユングフラウ賞でも前走でもコーナーで内にもたれていたので、右回りのレースをと思ってここに来ました。(2歳時に所属していた北海道の)田中淳司厩舎で長距離遠征の経験がありますので、マイナス体重も想定内。追い切りの動きもよかったですし、3コーナー手前で「これなら勝てるな」と思いました。