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第24回かきつばた記念JpnIII

最内枠も鞍上の好騎乗で克服
  成長感じる4歳馬がDG2勝目

“土古(どんこ)”の愛称で親しまれた競馬場が名古屋市港区からトレーニングセンターのある弥富市に移転して初めて行われたダートグレード。競馬場の移転という珍しい出来事に加え、約2年ぶりにレジャーを楽しめる風潮で迎えた大型連休などが重なり、新・名古屋競馬場には多くのファンが詰めかけた。考えられる最大の要因が重なった結果での多数の来場者で、最終レース後は駐車場から出るだけでも大渋滞だった。

レースはというと、開催によって馬場傾向はまちまち。4月8日の開幕日は内を大きく開けてレースが行われたかと思えば、翌週2日目以降は内ラチ沿いが極端に伸びる馬場だった。そしてこの日は第1レースから内を開けて走った馬が勝ち、内側の砂が深いことが明らか。内枠の馬は苦戦を強いられた。

そうなると、かきつばた記念JpnIIIのポイントは枠順と斤量。黒船賞JpnIIIを制したイグナイター(兵庫)は斤量据え置きの56キロと恵まれた一方で最内枠に入り、同レースを56キロで2着だったヘリオス(JRA)は外枠がプラスな一方、斤量が1.5キロ増の57.5キロと差が開いた。これにはファンの支持も分かれ、1番人気は単勝3.0倍でヘリオス。パドック周回中は僅差の2番人気だったイグナイターが最終的に4.8倍までオッズを上げたのは、やはり馬場傾向が懸念されてのことだろう。

しかし、スタート直後にそれは杞憂だったと気づかされた。イグナイターは砂の深さを感じさせずスッとスピードに乗ると、進路を徐々に外に取り、気づけば逃げるラプタス(JRA)や2番手のピンシャン(JRA)の外までワープ。それをマークする形でヘリオス(JRA)がつけた。3コーナー手前でイグナイターが外から先頭へと迫り、ヘリオスは、手応えが一杯となったピンシャンを内でやりすごしたのち、4コーナーではラプタスとイグナイターの間を突くという距離ロスと馬場傾向のバランスが絶妙な進路取りで伸びてきた。しかし、スピードに乗ったイグナイターの勢いは止まらず、ヘリオスに1馬身差で勝利を収めた。

3着はラプタスで、トップハンデの59キロを背負いながらも、黒船賞JpnIIIで減らした馬体重を戻しての逃げ粘り。末脚が身上のタガノビューティー(JRA)はロスのない進路取りで4着、5着に51キロのサンロアノーク(兵庫)が入った。

「今度こそは、と思ったんですけど」と悔しそうな表情を見せたのはヘリオスの寺島良調教師。武豊騎手も「直線はいい所にスペースがあって伸びたのですが、勝ち馬がしぶとかったです」と話した。

勝ったイグナイターは黒船賞JpnIIIに続くダートグレード連勝。「地方馬ですけど2番人気に支持され、それに応えられたのが嬉しいです」と新子雅司調教師。ダートグレード5勝目を挙げた同調教師も、同一馬での複数勝利は今回が初めてだった。この勝利には調教法の工夫も一因としてあっただろう。「黒船賞は力のいる馬場だったので、溜める追い切りをしましたが、今回はスピードを出した方がいいと考え、時計重視の追い切りを行いました」と、時計の出やすい名古屋の馬場にフィットさせた。

大型連休は各地で道路渋滞が発生し、輸送にはいつも以上に時間がかかったほか、田中学騎手も予定より30分以上早く出発しながらもギリギリの到着だったが、事なきを得ての勝利。今年は1400メートルを中心に、大目標は12月に地元で行われる兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIに置く。

取材・文 大恵陽子

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

田中学騎手

今日の馬場をどう攻略するかだけを考えていました。出られるところがあれば外に出したいと思っていて、理想よりいい位置が取れました。道中はリラックスして走れて、成長を感じます。人気を背負ってのレースを勝てて、また一歩羽ばたけます。1人でもイグナイターのファンが増えてくれたらと思います。

新子雅司調教師

今日の馬場状態を見て驚愕しましたが、田中騎手が完璧なレースをしてくれました。直線では内から交わされることはないと思っていました。今回の調教では不安になるくらい落ち着いていましたが、追い切りでは大丈夫だと確信しました。まだトモに若干の緩さがあるので、調教で工夫していきたいです。