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第23回兵庫チャンピオンシップJpnII

競り合いから直線突き放す
  想定外の強さで初タイトル

ゴールデンウイーク中の園田競馬場は前売り入場券を持つ人のみの入場。5月4日は5000枚のうち4803名とほとんどが来場し、快晴の下で競馬を楽しんだ。

多くのファンで賑わった理由の一つは、兵庫チャンピオンシップJpnIIのメンバーの豪華さだろう。その中心にいたのは全日本2歳優駿JpnIでレースレコードを0秒8縮めて圧勝したドライスタウト(JRA)。ダート1200メートルでデビューし、距離を延ばしながら3連勝中で、前走から約300メートル延びる1870メートルは初めての経験だ。また、右回りも初めてに加え、5カ月近い休み明けでもあったが、能力でカバーしてくれるだろうとの見立てから単勝1.8倍の1番人気に推された。また、ノットゥルノ(JRA)もダート転向後2連勝し、前走・伏竜ステークスはクビ差2着と期待を感じさせる馬。ブリッツファング(JRA)はダートで3戦2勝で、コーナー4回のコースでの実績から、小回りコースに適応できる器用さが感じられた。

JRA馬がこれだけ強力とあっては、迎える地元勢は兵庫一冠目の菊水賞を勝ったベルレフォーンや、ダービー馬候補と名高いバウチェイサーなど世代を代表する馬が揃ったが、単勝オッズがともに120倍超というのは仕方なかったのかもしれない。

それでも、地元の意地を見せるかのようにバウチェイサーが好スタートから先手を取ると、3~4番手内にも地元のベラジオボッキーニが続き、ダートグレードとしてはややゆったりした流れでスタンド前を通過していった。

一方、注目のドライスタウトはスタートで躓いて痛恨の出遅れ。スタンド前では先行集団まで取り付いて挽回を図ったが、3コーナーで脚色が鈍りはじめた。

先頭ではコンシリエーレとブリッツファングが馬体を併せた競り合い。直線入口でブリッツファングが抜け出すと、直線ではリードを広げて完勝した。8馬身差の2着はノットゥルノで、スタートに不安を抱えるもののこの日は五分のスタートを決め、ゴール直前で3着コンシリエーレを交わした。

人気のドライスタウトは4着。「今日については距離は分かりませんが、久しぶりのぶんが大きかったと思います」と戸崎圭太騎手。初の右回りで流れに乗りづらい面もあったようで、力を発揮できる状態や舞台なら、といったところだろう。

そして地方馬最先着は5着ローグネイション(兵庫)。重賞出走はこれまで1回のみ、それも6着とあって杉浦健太騎手は「大健闘ですね」と相棒を称え、「元々、掛かる馬なのでJRA馬がいて流れるペースが良かったです」と話した。

ブリッツファングの勝ち時計は2分1秒4。園田競馬場では2年前に砂の産地が変わり、時計がややかかるようになっているため過去の勝ちタイムとの単純比較はできないが、「時計も着差も期待以上に出してくれました」と大久保龍志調教師の言葉からレース内容の濃さが伝わってくる。「育成牧場の方もすごく手を掛けてくださり、厩舎に来てから優等生で、組んだ調教スケジュールを何のトラブルもなくこなしてくれました。でも、こんなに強いとは。そこだけが想定外でした」と、枠に収まりきらない大きな可能性を感じた一戦となった。

歴代優勝馬にはコパノリッキーやクリソベリルなどGI/JpnI勝ち馬が名を連ねる一戦で、新たなスターホース候補が現れた。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

池添謙一騎手

デビュー前から期待していた馬で、勝つことができてよかったです。イメージ通りいい位置を取ることができました。2番手の馬も強いので、それを見ながらと思っていましたが、手応えが十分あったので徐々にスパートしました。今日の勝利は一つの軌跡でしかなく、今後大きなところを狙えると思います。

大久保龍志調教師

センスが良く、これまでは強気に外を回す競馬をしていたので、砂を被るとどうかなと思いましたが、馬場や枠順を含めてあの位置を取ろうとジョッキーと相談しました。バネがあって坂路でも弾むように走ります。これまで預かった中でもトップクラスの素質を感じているので、ジーワンを獲れる器にしたいです。