2年連続で無観客で実施されたかしわ記念JpnI。今年は事前予約制で3000人という制限付きではあったが、3年振りに競馬場らしい熱気が帰ってきた。

前走フェブラリーステークスGIで2着になり、これまでダートグレード5勝のテイエムサウスダンが単勝2.6倍の1番人気に支持され、ダートグレード2連勝中のショウナンナデシコ、3年前のフェブラリーステークスGIの覇者インティ、昨年の優勝馬カジノフォンテン、武蔵野ステークスGIIIの勝ち馬でドバイ帰りのソリストサンダーが単勝一桁台で続いた。

終わってみれば、吉田隼人騎手がコンビを組んだショウナンナデシコの強さには、ただただ驚かされるばかりだった。ダートを主戦場にしている一線級の牡馬たちを抑え、かしわ記念が1996年に中央との交流になって以降初となる牝馬の優勝。

船橋競馬場は3月の開催より砂厚が従来の10センチから12センチに変更され、よりパワーとスタミナが問われる。「この深いダートで、ガタイのいいオトコ馬を相手になかなか牝馬で勝てないと思うので、よく勝ってくれました」（吉田騎手）

ショウナンナデシコは1番枠から好ダッシュを決め、久しぶりに逃げる形に持ち込んだ。「行きたい馬もいるだろうなと思いましたが、逃げることはイメージにあって、スタートが抜群に良かったので行こうと思いました」

1～2コーナーではすでに縦長の展開になり、2番手の外にテイエムサウスダンがピタリとつけ、直後の3番手外にカジノフォンテン、内にソリストサンダー。さらに中央から川崎への移籍緒戦となったタイムフライヤー、エアスピネル。その後ろにはサンライズノヴァやギャルダル、インティが続き、あとは大きく離された。

3コーナー付近でショウナンナデシコにテイエムサウスダンが並びかけ、カジノフォンテンやソリストサンダーも襲いかかろうとした。

「力のある馬が隣にいたので結構プレッシャーもかかりましたが、それ以上に走る気になっていました。テイエムサウスダンに並ばれた時に馬の気持ちが一杯になりそうでしたが、よく凌いでくれましたね。4コーナーの出口でまたセーフティリードを取れた時にはよし行ける！と思いました」

ショウナンナデシコは直線に入ると後続を振り切り、2着のソリストサンダーに1馬身半差をつけての勝利。勝ちタイムは1分38秒9（稍重）。テイエムサウスダンはさらに3馬身差がついての3着だった。

ショウナンナデシコは前半3ハロン36秒6、5ハロンが60秒5というハイペースで逃げ、上り3ハロンもメンバー最速の38秒4の脚を使われては、後続馬たちはなすすべがない。

「この深いダートをよくこなしてくれました。馬を褒めてやりたいし、思い切った騎乗をした隼人も褒めてあげたいし、これまで脚をもたせている松田助手も、安楽厩務員も、みんなを褒めてあげたいです」と、須貝尚介調教師は労っていた。

ショウナンナデシコは今年3月のエンプレス杯JpnIIで重賞初制覇を飾ると、前走のマリーンカップJpnIIIではサルサディオーネに8馬身差をつける圧勝劇で驚嘆させたばかりだが、このかしわ記念JpnIで3連勝。ダート界に誕生した女傑のこれからが非常に楽しみだ。

地方馬の最先着は4着のカジノフォンテンだった。主戦の張田昂騎手が疾病により、3歳クラシック時にコンビを組んでいた本田正重騎手が久しぶりに騎乗。「最近は一歩目が速くないと聞いていたので、位置取りは想定内でした。引っかかるイメージでしたが、結構出して行っても折り合いは全然問題なかったです。力は出せたと思います」（本田騎手）。昨年の快進撃を考えると物足りない結果が続いているが、さらにキャリアを重ねながら、もうひと皮むけた活躍を今後に期待したい。