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第36回東京プリンセス賞

接戦を凌いで重賞3連勝
  4年連続で二冠牝馬誕生

3年ぶりにファンが見守る中で行われた東京プリンセス賞。このレースは3年連続で浦和・桜花賞馬が優勝している。今年の桜花賞はというと、休み明けや初の左回り、圧倒的に不利な大外枠をなんなくクリアしたスピーディキックが快勝。そのレース内容からも同世代の牝馬同士では一枚抜けている存在で、単勝1.4倍と断然の支持を集めた。そして見事にその期待に応え、今年もまた南関東牝馬二冠馬が誕生した。

レディオガガが先手を取り、2番人気レディオスターが2番手、3番人気のクールフォルテが好位の内を追走し、スピーディキックはそれら人気上位馬を見ながら中団の外目でレースを進めた。

向正面で外から動く馬がいる中、スピーディキックの御神本訓史騎手は3コーナーでインを選択。するすると前へ進出すると4コーナーで再び外に持ち出し先行勢に並びかけた。

直線はレディオスターとの追い比べとなったが、残り50メートルあたりで競り落とし、さらにゴール前、5番人気のコスモポポラリタが猛追したが、それをクビ差凌いで勝利を手にした。2着から1馬身差の3着にレディオスターが入った。

レース後、すぐには戻らずスタンド前に向かったスピーディキックと御神本騎手。そして集まった約3000人のファンの前で御神本騎手は何度も手を挙げ、場内は大きな拍手に包まれた。それは競馬場にファンが戻ってきたことを実感する瞬間でもあった。

北海道からの移籍後、南関東SI・3連勝となり、通算では重賞5勝目。そしてデビューから未だ牝馬には先着されたことがないという女王スピーディキック。レース前、藤原智行調教師は御神本騎手に「勝ってこい!」とだけ指示したという。その想いにきっちり応えた御神本騎手は「着差からもシビアなレースでしたが、陣営の仕上げとこの馬の底力で無事に二冠を達成することができました」とホッとした表情を見せた。

藤原調教師は「馬の気合のりや、前残りの馬場などもあって終始脚を使うレースになった。それでも逃げる馬を捕まえて、後ろから来ている馬を凌いでいるのだからとても良い競馬をしましたね」と着差以上の内容を評価した。また距離については「この仔は操作性が一番の強味。距離が伸びても騎手の指示に従うことができるから万能だと思う」と語った。

そうなると気になるのは次走だ。陣営としては東京ダービーか関東オークスJpnIIのどちらか、馬の様子を見て熟慮するとのこと。桜花賞の時にも話題になったが、藤原調教師と御神本騎手は共に益田競馬出身。「御神本はまだ(東京)ダービーを勝っていないので獲らせてあげたい」という藤原調教師の熱い想いがある。一方で「南関東三冠牝馬のトレーナーは佐藤賢二調教師だけ」と、2006年チャームアスリープ以来の快挙に挑戦したい気持ちも大きい。現状では「関東オークスの可能性が7割かな」とのことだった。どちらの選択になるにせよ、次のレースでもスピーディキックの力強い走りを楽しみにしている。

なおグランダム・ジャパン3歳シーズンでは、スピーディキック(浦和)が17ポイントで暫定1位。2位はアンティキティラ(高知)、グラーツィア(船橋)、ケウ(川崎)がいずれも15ポイントで続いている。シリーズは最終戦の関東オークスJpnIIまで残り3戦だ。

取材・文 秋田奈津子

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

御神本訓史騎手

思ったより前の位置を取れたのでまわりの馬に惑わされず、前に有力馬もいたのでその脚色も見ながら進めました。前走と同じくらいの手応えでしたが直線も長いし、今開催は馬場が深かったので早めに動かざるをえませんでした。最後はクビ差まで迫られたけれどなんとか凌いでくれました。

藤原智行調教師

前走よりも良い競馬ができるような調教を常にやっていて、これまでは馬体重が減ることが怖かったが今回は追い切り後も落ちることなく飼い葉を食べていたのでエーデルワイス賞くらいには仕上がっていました。東京2歳優駿牝馬ではゲートを潜ろうとしていたが今日は落ち着いて出てくれました。