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JCS ファイナルステージ

佐賀に続き2勝目の岡部誠騎手
  初優勝で地方騎手の頂点に

2018年に『スーパージョッキーズトライアル』から『地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ』に名称が変わった際に、着順に応じて付与されるポイント数も変更。それ以降は勝利を挙げた騎手がより有利という形になった。

佐賀競馬場で行われたファーストステージで勝ち星を手にしたのは、村上忍騎手(岩手)と岡部誠騎手(愛知)。ポイント数は岡部騎手が36、村上騎手が31。それでも2着と7着で26ポイントを獲得した吉村智洋騎手(兵庫)、2戦とも4着で24ポイントの山口勲騎手(佐賀)を含めた全員に優勝のチャンスが残っていた。

シリーズ全体での勝負どころといえるのが、ファイナルステージの第1戦。単勝1番人気に支持されたのは森泰斗騎手(船橋)のジョーミニスターで、2番人気は秋元耕成騎手(浦和)のネクサスエッジ。ともに3~4カ月の休養明けだった。

ゲートが開くとその2頭が積極的に動き、秋元騎手が先頭で森騎手が2番手。その直後には、前走で出遅れていた馬に騎乗した矢野貴之騎手(大井)と青柳正義騎手(金沢)がつけた。その位置取りが固まるまでの先行争いは激しく、1コーナーにあたる2ハロン目のタイムがC1クラスにしては速い11秒5。馬場状態が稍重で前が有利という考えが各騎手、とりわけ浦和での経験がない、または少ない騎手の頭にあったのかもしれない。向正面でいったん緩んだペースは再び上がり、3コーナー手前にあたる5ハロン目で11秒9を計測。この2カ所で11秒台だったのは、この日の1400メートル戦では唯一だった。

そういう強弱がある流れもあって、向正面の中央付近では先行集団が3頭で、続いて7頭が馬群を形成。そうなると後方から追い上げるタイプは外を回ると厳しくなる。

それを察知したのが岡部騎手。向正面では馬群のうしろ9番手あたりだったが、大型ビジョンに映った姿からはインを突くという意思が伝わってきた。すると中団にいた馬の多くがやや外に膨らむ形。その空いたスペースを利用して、岡部騎手が一気に位置取りを上げてきた。最後の直線に入るとその勢いのまま、早めに先頭に立った矢野騎手をゴール寸前で交わして勝利。8戦連続で勝ち馬から1秒以上の差で負けていたアイエンジェルを1着に導いた岡部騎手の技術が光った。

これで岡部騎手はシリーズ2勝目。検量エリアではたくさんの人に祝福され、「(札幌へ行く)航空券の予約をしようかな」という冗談も飛び出すほど。逆に2着の矢野騎手は「勝ったと思ったんですけど……」と残念そう。3着の青柳騎手も「もうちょっとだったんけど……。4コーナーで外にうまく出せていれば」と話した。それぞれ8番人気馬、5番人気馬での好騎乗でも、悔しさが上回る結果だった。

この時点で、優勝の可能性が残っているのは岡部騎手と村上騎手だけ。岡部騎手は笑顔を見せながらも「大負けはしないように気をつけます」と言葉を残して最終第2戦のパドックに向かった。一方の村上騎手は近寄りがたいオーラで、逆転に向けて集中している様子だった。

とはいえ最終戦での2人の騎乗馬は、岡部騎手が単勝73.1倍で10番人気。村上騎手は105.8倍で11番人気。それでも最終戦での2人の動きには見どころがあった。

村上騎手のグローサーベアはJRAで2勝を挙げたものの、昨年以降が着外続きで川崎移籍後も苦戦。その馬を村上騎手は外枠のスタートから気合をつけて、先行集団に加わらせた。岡部騎手のサトノゴールドはここ数戦と同じように行き脚がつかず、向正面では先頭から50メートル以上も離れた最後方。それでも猛然とムチを入れる姿には「大負けしないように」というさきほどの言葉が思い出された。

しかし村上騎手は3コーナーで失速して最下位。岡部騎手も馬自身の持ち時計は詰めたものの11着。レースは2番手追走から早めに先頭に立った藤原幹生騎手(笠松)が勝ち、3番手から流れ込んだ山崎誠士騎手(川崎)が2着。森騎手が3着に入った。

これで岡部騎手がポイント争いのトップを守って優勝。最終戦を制した藤原騎手が2位に浮上して、3位は村上騎手と山口騎手が同点で、シリーズのなかで最上位の着順を残していた村上騎手が表彰台に。終了後の騎手は一様に、すがすがしい表情を見せていた。

青柳騎手は「モチベーションにつながりますね。またリーディングにならないと」と、早くも来年に向けて気持ちを新たに。日曜日に佐賀で乗り、いったん門別に戻ってから浦和に来た石川倭騎手(北海道)は「3年連続でリーディングを獲りましたが、(ワールドオールスタージョッキーズ出場権がかかる)このシリーズに出るのは初めて。いい経験ができましたし、結果は別にして、ある程度は納得できる競馬ができたと思います。いつかは(JRAの)札幌に行きたいですね」と話した。こちらも初出場だった秋元騎手も「積極的に行きました。やることはやりました!」と笑顔。

2場4戦での争いとなったのは3年ぶり。やはりレベルの高さが伝わる激しい戦いであることを再確認できた。

取材・文 浅野靖典

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 岡部誠騎手(愛知)

優勝できて光栄です。いつもと変わらない騎乗を心がけたことが結果につながったのかなと思います。地元に戻っても一所懸命に騎乗していきたいと思っていますし、ワールドオールスタージョッキーズでは、すばらしいジョッキーの皆さんの代表として恥じないレースをしてきたいと思います。

総合2位 藤原幹生騎手(笠松)

最後に強い馬に乗せてもらえて、いいところを見せることができました。佐賀も浦和も初めてで、貴重な経験をすることができました。勝てて本当によかったです。それにしても2位ですか。ビックリしました。札幌競馬場で岡部さんがどんなレースを見せてくれるのか、楽しみにします。

総合3位 村上忍騎手(岩手)

優勝のチャンスはあったと思いますが、でも仕方なかったかなあ。巡り合わせもありますからね。この結果は僕の実力だと受け止めます。でも最終戦は、調教師さんから積極的に行ってほしいと言われたこともあったので、勝ちに行くレースをしました。