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第68回東京ダービー

2番手から直線抜け出す
  ダービーで重賞初制覇

南関東三冠の初戦、羽田盃は9番人気のミヤギザオウが勝ち、13番人気のライアンが2着。しかも8着のリヴィフェイスまでが0秒7差で入線する大混戦となった。当初から一筋縄ではいかない雰囲気があったが、さらに拍車がかかったかたちで東京ダービーを迎えた。

加えて、スタート直前には羽田盃馬のミヤギザオウがゲート内で転倒、両飛節部を挫傷して競走除外となった。馬券の発売締め切り時点で単勝4番人気に推されていただけに、除外放送の際にはスタンドからため息が漏れた。

そうした波乱ムードが漂うなかでレースはスタート。大方の予想通り1番人気のシャルフジンが逃げたが、羽田盃で先行争いを演じたクライオジェニックが後方待機策をとったことで、隊列はすんなり決まった。2番手にカイルがつけ、フレールフィーユがその外を追走。2番人気のリコーヴィクターが4、5番手、3番人気のナッジは中団につけた。前半の3ハロンは37秒2と、ややスローな流れ。超ハイペースだった羽田盃とは逆の展開になった。

密集した馬群のまま直線に向いたが、残り300メートルで徐々にばらけ始める。好位を進んでいたカイルが抜け出し、徐々に後続との差を広げにかかった。リコーヴィクターが内から、フレールフィーユが馬場の中央から、そして外からナッジとクライオジェニックが追い込んできたが、カイルの末脚も衰えない。そのまま2馬身差をつけて、第68代東京ダービー馬の座に就いた。

京浜盃2着、ハイセイコー記念3着と、トップクラスの力を示していたカイル。今回は6番人気と伏兵的な扱いだったが、重賞7度目の挑戦で初制覇を果たし、南関東の頂点に立った。「返し馬の感じで、『これなら1列目でも自分で競馬をつくれる』と思って、ポジションを取りに行きました。厩舎サイドの仕上げの凄さだと思います」と本橋孝太騎手は状態面の良さを勝因に挙げた。管理する小久保智調教師も「調教の内容を変えたことでやる気になっていましたね。少し強気に行き過ぎていたので心配していましたけど」と安堵した様子だった。

2着には直線で猛然と追い込んだ12番人気のクライオジェニックが入った。羽田盃は激しい先行争いを演じて最下位(15着)に敗れていたが、「前半に行く脚を全て直線に賭けた。展開次第だと思うけど、先々もチャンスはある」と安藤洋一騎手。ペースが落ち着いていたことを考え合わせれば価値は高く、今後もうまく立ち回れればタイトル獲得のチャンスがある。

一方、羽田盃に続いて1番人気に推されたシャルフジンは8着で、御神本訓史騎手は「本来は楽勝のパターンだった。距離なのか、ペースなのか……」と肩を落とした。先行馬に有利な流れでしのぎ切れなかったことからも、現状ではもう少し短い距離が合っている印象。ただ、うまく折り合えたことは収穫で、この一戦が飛躍への足掛かりとなりそうだ。

気性面が幼く、力を発揮しきれないことが多かったカイルだが、それでもデビューから大崩れなく走れていたのは地力の高い証拠。「まだ同じようなことをするけど、内面的には成長しているのかな。今後は交流や海外など、いろいろと挑戦していきたい」と小久保調教師は目を細める。次走の予定はジャパンダートダービーJpnI。着実に力をつけてきた経験を胸に、堂々とした走りを見せてくれるに違いない。

取材・文 大貫師男

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

本橋孝太騎手

前走の羽田盃で左海(誠二)さんがとてもうまく乗ってくれたことが、いい経験になったと思います。返し馬の感じから1列目でも自分で競馬をつくれるなと思ってポジションを取りに行きましたが、こう感じられたのもカイルが成長したからでしょう。古馬になってからも楽しみな逸材です。

小久保智調教師

乗り方はジョッキーに任せていましたが、強気に行き過ぎていたので少し心配しました。姉(トーセンガーネット)と同じように、気性的にまだ子供な感じがありますが、内面は成長してきているのでしょうね。もう一段階、状態を上げて、ジャパンダートダービーに連れてくるつもりです。