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第23回兵庫ダービー

菊水賞敗戦から立て直し完勝
  鞍上は歓喜のダービー初制覇

今年の兵庫3歳世代は最優秀2歳馬ガリバーストームが戦線離脱し、混戦ムードが漂った。同馬に代わってダービー馬候補と目されたバウチェイサーは重賞2勝を挙げるも、一冠目・菊水賞で3着に敗戦。その菊水賞を目の覚めるような末脚で勝ったのは同じ新子雅司厩舎のベルレフォーンだった。兵庫チャンピオンシップJpnIIも6着で、エンジンがゆっくり掛かるタイプの同馬は1700メートル以上の距離で好成績を収めた。また、3戦続けて1870メートルを使われてきたローグネイションは兵庫チャンピオンシップJpnIIで地元馬最先着の5着。エイシンクエーサーは菊水賞で2着と、多くの馬にチャンスがあると思われた。

その結果でもあるのだろう。パドック周回が始まった頃はエイシンクエーサーが1番人気だったが、最終的にはバウチェイサーが単勝3.3倍で1番人気とオッズも短時間で変動した。

レースは内からニネンビーグミが逃げ、2番手にバウチェイサーがつけると、その内にエイシンクエーサーがつけた。ペースは落ち着き、向正面後半から各馬鞍上の手が動くが、エイシンクエーサーは早々に手応えが怪しくなった。4コーナーでバウチェイサーが先頭に立つと、後続を4馬身離して勝利。ゴール後、ダービー初制覇の笹田知宏騎手は雄叫びを上げた。

2着は4コーナーでスムーズさを欠きながらもニフティスマイルが差してきた。「返し馬の雰囲気も良く、内が取れればと思っていました」と井上幹太騎手のプラン通りのレース運びはできたが、ル・プランタン賞、のじぎく賞に続き重賞で3戦続けて2着。牡馬に混じっての2着は大健闘とも言えるが、レース後は田中一巧調教師とともに何度もレース映像を見返していた。

3着ローグネイションも直線は大外から鋭く伸びてきたが、すでに勝ち馬はセーフティリード。これまでは折り合いが大きな鍵だったが、「成長が感じられ、道中はそこまで馬と喧嘩することなく運べました」と杉浦健太騎手。敗れはしたものの、収穫のあったレースだった。

一方で、敗因が「よく分かりません……」と首を捻ったのは9着エイシンクエーサーの田中学騎手。「スタートは出ましたし、取りたい位置も取れて、向正面までは良かったんですけど」と思案顔。ダービー出走に向けて賞金加算をするため、橋本忠明厩舎としてはやや詰めたローテーションで走ったため、前走・菊水賞後は短期放牧でリフレッシュしたのだが、図らずも菊水賞直行組の成績が芳しくないというデータに当てはまることとなってしまった。

勝ったバウチェイサーは直近6年の兵庫ダービー馬同様、菊水賞からの巻き返しに成功。勝因の一つはテンションと調教のバランスだった。兵庫移籍時から見られた高いテンションを、調教でいかに上げないかにポイントが置かれたが、菊水賞では結果として攻めきれなかった。しかし、馬に落ち着きが出てきたことから、敗戦を踏まえ攻めの調教を敢行。また、前走の兵庫チャンピオンシップJpnIIでは逃げるも最後はバテて10着に敗れたことから、スタミナ強化の調教を行っていた。

笹田騎手はニュージーランドなど外国でジョッキーを経験したのち、2011年に園田競馬場でデビュー。その後、所属調教師の逝去に伴い新子厩舎に移籍し、成績を伸ばしてきた。「笹田をダービージョッキーにすることが目標でした」という師の思いを全身で受け取っていた笹田騎手は涙声になりながら「嬉しくて頭が真っ白です」と喜んだ。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

笹田知宏騎手

感謝の気持ちしかありません。前走でしっかり気合いを付けて行ったことが、今日の前半からの動きに繋がったと思います。4コーナーではもう少し待ちたかったですが、手応えが良すぎたので、馬を信じていきました。この業界に生まれ育って、ダービーの重みは分かっていますが、嬉しくて頭が真っ白です。

新子雅司調教師

あまり喜ぶと、泣いてしまいそうなのでこらえています。直近2戦を踏まえ、渾身の仕上げで自信を持って送り出せました。精神面が成長し、このくらい仕上げても大丈夫だと分かったことが収穫です。このあとはジャパンダートダービーも視野に入れながら、全国で戦えるレベルに育てたいです。