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第30回東北優駿

早め先頭から突き放す
  不来方賞で三冠めざす

岩手競馬では近年の施策が実を結び、2歳馬の入厩が転入馬も含めて大幅に増加。今年の3歳世代は、昨年末の時点で前年より50%以上の増となった。その時点で今年の3歳路線はもつれてくる可能性が十分考えられたが、その初戦となる1月3日の金杯が冬の馬場悪化で開催取り止めに。冬休みを挟んで新年度開幕の4月3日、スプリングカップはクロールキックが快勝、その後の路線を牽引していくと思われたが、3歳一冠目となるダイヤモンドカップ直前に体調不良で回避。この東北優駿での再起を目指したが、結局は登録するまでに至らなかった。他も転出入などでメンバーの入れ替わりは激しく、東北優駿の出走馬12頭の中に、2歳重賞の勝ち馬が不在。これはダイヤモンドカップが“岩手ダービー”とされていた頃に、ヴイゼロワンが勝った2013年以来となる9年ぶりの珍事。また、スプリングカップ出走の10頭からも東北優駿へは4頭しかエントリーがなかった。

グットクレンジングは岩手競馬の冬休みを挟んだ、この春の転入馬。「この馬でダービーに出ようと思っていた」(板垣吉則調教師)とはオーナーといつから温めていたプランなのかは尋ねなかったが、思惑通りの結果が出たということだろう。転入直前の大井、サルビア特別(8着)の勝ち馬は、のちに羽田盃馬となるミヤギザオウ。転入初戦のスプリングカップはクロールキックの2着だったが、クロールキックは戦線を離脱し、強敵不在となったダイヤモンドカップは楽々と抜け出し。

父コパノリチャード、母父スターリングローズという血統面から距離延長への対応力は未知だったが、この日は勝負どころとなる3コーナーから「ためていた分を出そうと思った」(山本政聡騎手)と後続を突き放しにかかった。先行するビッグタマテルーフやセイシーキングが作る流れは極端に緩まないものだったが、余力十分のグットクレンジングはここで先頭に立ち、逃げ込み態勢を築く。最後の直線も全くの独走となり、着差はダイヤモンドカップの3馬身から10馬身に。距離不安説を一掃する圧勝劇となった。

2着にはフジクラウン、「グットクレンジングが前にいたので、ついて行くしかないと思いましたが、最後突き放されました」という菅原辰徳騎手だったが、重賞初挑戦となった前走のイーハトーブマイルを勝って、東北優駿にギリギリ間に合った馬。中1週で余裕のないローテーションながら、2着を死守した。「前走が目一杯の仕上げでしたが、今回もよく頑張ってくれました」(菅原騎手)と、まだ完調手前という印象ではあるが、ひと月前まではここで人気を集めて、しかも好走する馬とは考えられてもいなかった。元は新馬戦(2着)で1番人気となった馬、ようやく本来の力を見せ始めたと解釈できる。

東北優駿は最終的に単勝1番人気が1着、2番人気が2着、馬連複、馬連単ともに1番人気。一見堅い決着となったが、グットクレンジングはデビューの北海道から、高知、大井と経由しての転入。冬休みの時点では岩手でほとんど存在すら知られていなかったはずで、岩手の3歳路線としては異色の経歴馬の優勝といえるが、このような経歴の馬は今後さらに増えていくだろう。グットクレンジングの次の目標は三冠となる不来方賞。その時ライバルとなるのはフジクラウンのような上がり馬か、またも違うところから現れてくるのか。

取材・文 深田桂一

写真 佐藤到(いちかんぽ)

Comment

山本政聡騎手

乗った時から良くなっていることが分かったので、距離をどうこなそうかなと考えていました。ペースをコントロールできていたし、フジクラウンの手応えが一杯になり始めていたので、(3コーナーで)ためていた分を出そうと思いました。プレッシャーはありましたが、馬を信じて競馬をしました。

板垣吉則調教師

追い切りの感触がすごく良かったので、それなりのレースはできると思っていました。スンナリ3番手が取れて、折り合いもついていたし、手応えも良かったですね。春先にこれでダービーへ出ようと思っていた馬なのでホッとしています。このあとは夏休みに入り、(三冠となる)不来方賞を目標にします。