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第45回帝王賞JpnI

直線追い比べから抜け出す
  実績馬相手にJpnI初制覇

毎年この時期は梅雨と重なるため天気と馬場状態がレース展開の大きなポイントとなる。しかし今年はすでに関東地方は梅雨が明け、連日真夏のような大井競馬場。前半から砂煙が上がる乾いた良馬場でレースが行われていた。そして、まさに熱戦の大一番を見届けようと場内は早くから多くのファンで賑わっていた。

上半期のダートチャンピオン決定戦、帝王賞JpnI。今年は地方2頭、JRA7頭の9頭立ての少頭数となった。しかしながら、昨年の覇者テーオーケインズ、東京大賞典GI・4連覇という偉業を達成したオメガパフューム、前走ドバイワールドカップGIで3着と好走したチュウワウィザード、地元大井の10歳古豪ノンコノユメというGI/JpnI馬たちを中心に、ダート界を代表する豪華なメンバーが揃った。

9頭中、6頭が昨年のこのレースに出走しており再戦に近い構図。その時は4歳だったテーオーケインズが4番人気で見事JpnI初制覇を飾り、2着10番人気、3着6番人気で決着し3連単200万円を超える大波乱となった。果たして今年は?!

逃げ馬不在の中、先手を主張したのはオーヴェルニュで、2番手にクリンチャー、3番手にテーオーケインズが続いた。メイショウハリオが先団を見る位置に構え、チュウワウィザードは中団、オメガパフュームは後方でレースを進めた。

向正面でスワーヴアラミスが一気に進出し先団につけると、前4頭が固まって3~4コーナーへ。直線に向くと各騎手の腕が動き始め、後ろの馬たちも差を詰めて横一線の大激戦。その中で勢いが目立ったのが、内を突いたチュウワウィザード、真ん中を伸びたメイショウハリオ、外に進路を選んだオメガパフュームの3頭。メイショウハリオが残り100メートルあたりで先頭に立つと、ゴールでは鞍上の濱中俊騎手が大きなガッツポーズで喜びを爆発させた。

クビ差の2着はチュウワウィザード、さらに1馬身半差の3着にオメガパフュームが続いた。テーオーケインズは直線で伸びきれず3着馬から4馬身離れた4着に敗れた。

5歳のメイショウハリオが歴戦の強豪相手に大金星だ。4歳春から好走が続き、昨年のみやこステークスGIII、今年のマーチステークスGIII優勝と充実ぶりは目立っていた。しかし同世代のテーオーケインズとの対戦比較からは分が悪く今回は5番人気と挑戦者の立場。それでも「理想通りの展開でした」と濱中騎手が振り返ったように、先行馬をマークするポジションでレースの流れを引き寄せ結果に繋げた。

このハイレベルのメンバー相手の勝利で「大きな自信に繋がりました」と濱中騎手、岡田稲男調教師は口を揃えた。この後の予定はこれから相談するとのことだが、秋にはどのようなローテーションでダート戦線を盛り上げてくれるのか楽しみでならない。

戦いに敗れた上位人気3頭の騎手の表情はそれぞれだった。チュウワウィザード(3番人気)の川田将雅騎手は「ドバイ帰りのきつい中でしたがしっかりと能力を出してくれました。2着でもとても良い内容でした」とコメント。オメガパフューム(2番人気)のミルコ・デムーロ騎手はレースVTRを何度も確認して、「前の有力馬たちを見ながら展開も完璧だった。でもメイショウハリオが止まらず最後はファイトがなくなってしまった」と悔しそうに語った。テーオーケインズ(1番人気)の松山弘平騎手は「支持していただいたのに結果を出せなくて申し訳ないです。枠も良くて、良い形で流れにのれたのですが……」と言葉少なだった。

今年の帝王賞JpnIではもう一つ注目の出来事があった。2007年の優勝馬で、13年から大井競馬の誘導馬として活躍したボンネビルレコードがこの日を最後に誘導馬引退となったのだ。最終レース終了後には、競走馬時代の相棒、的場文男騎手が背に跨り多くのファンがその姿を目に焼き付けた。この後は北海道の牧場で余生を過ごすとのこと。長きに渡り地方競馬を盛り上げてくれたボンネビルレコード。これからはゆっくりと穏やかに過ごしてほしい。

取材・文 秋田奈津子

写真 いちかんぽ(早川範雄、国分智)

Comment

濱中俊騎手

めちゃくちゃ気持ち良かったです!テーオーケインズの後ろで競馬をしようと考えていたので思っていたポジションが取れました。しっかり伸びてくれる馬ではありますが、先に先頭に立ってしまいましたからね。直線では内から外から迫ってきましたが歯を食いしばって凌いでくれて馬に感謝しています。

岡田稲男調教師

今日はやんちゃな姿もありましたがいつもと変わらず元気でした。馬の癖も分かっている騎手なので、レースはその時の状況に対応してもらうよう話していました。前に行く馬を行かせて、その後ろで内に入ってという申し分のない展開でした。ジョッキーもそれを狙っていたみたいですし良いレースでしたね。