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ダービーシリーズ2022 総括


クローズアップ

2022.7.4 (月)

観客が戻ったダービー
 全国で4頭が二冠達成

JRAでは4月の東京開催から入場人員の制限が大幅に緩和され万単位のファンが入場できるようになり、地方競馬でも大井、川崎、金沢で一部制限は残るものの、それ以外の競馬場ではほぼ自由に入場ができるようになった。2年前のダービーシリーズがすべて無観客での開催だったことを思うと、感染拡大防止に気を使いながらではあるものの、競馬場にもだいぶ日常が戻ってきた。

今年、日程的に大きな変更があったのは金沢の石川ダービーで、昨年より1カ月ほど繰り下げての実施となった。かつて北海優駿も5月下旬から6月上旬に行われていたのが18年から6月3週目に繰り下げられたが、冬期休催がある地区では、二冠目となる“ダービー”をその時期に行うのは妥当と思われる。

地方競馬の好調な売上にともない、各地のダービーの賞金もここ2、3年でかなり上昇し、1着賞金が昨年1000万円以上となっていた大井(5000万円)、兵庫(2000万円)、北海道(1000万円)、岩手(1000万円)は据え置きだったが、高知は昨年の1000万円から1600万円にアップ。そのほか、佐賀は800万円→1000万円、名古屋は800万円→900万円となり、金沢は700万円で据え置きだった。

九州ダービー栄城賞(佐賀)

一冠目の佐賀皐月賞(1800メートル)から200メートル距離が延びるだけの二冠目は、求められる距離適性はほぼ同じ。佐賀皐月賞を制して1番人気に支持されたザビッグレディーが、逃げた伏兵マーミンラブをぴたりと2番手で追走する展開。前半、前は団子状態で落ち着いたペースで流れていただけに、向正面でペースアップしてザビッグレディーが3コーナーで先頭に立ったときは二冠達成かに思えた。しかし中団の内を追走して外に持ち出されたイカニカンが直線並ぶまもなく交わし去っての快勝。さらにうしろから仕掛けて4コーナー内を突いたオリベが2着。ザビッグレディーは3着だった。

勝ったイカニカンは、重賞初出走だった佐賀皐月賞は7着だったが、そこから巻き返してのダービー制覇。2歳時は5戦して1勝のみだったが、中距離で能力を発揮。竹吉徹騎手は栄城賞初勝利、真島元徳調教師は5勝目となった。

佐賀の3歳重賞戦線では、例年門別デビュー馬の活躍が目立つが、一冠目のザビッグレディーも、二冠目のイカニカンも佐賀の生え抜き。今回も含め近10年の九州ダービー栄城賞の勝ち馬を見ると、2014年のオールラウンドが高知所属だったのを別とすると、5頭が門別からの移籍馬で、佐賀デビュー馬は4頭となった。ただし17年のスーパーマックスは佐賀デビューだが3歳3月に一時的に大井移籍があった。

東海ダービー(名古屋)

舞台が新競馬場に変わり、距離も2000メートルとなった東海ダービーは、タニノタビトが駿蹄賞に続いて二冠達成。2着もイイネイイネイイネで同じワンツー。駿蹄賞で9着だったパピタが東海ダービーで3着に入ったが、駿蹄賞3着のドミニクが東海ダービーでも4着に入っており、間隔は約1カ月、同じ2000mの舞台とあっては、力関係もほとんど変わらなかった。

違ったのは、一冠目では大差がついたのに対して、二冠目はアタマ差まで詰め寄られたこと。一冠目は1番人気に支持されたイイネイイネイイネが勝負どころ3~4コーナーで前がカベになってもたついたところ、タニノタビトに内から一気に行かれてしまったが、東海ダービーは、3~4コーナーではまだ3、4馬身ほどの差があったところからイイネイイネイイネがゴール前一気に迫った。位置取りと仕掛けるタイミングひとつで、2頭の間にそれほど能力差はないように思えた。

岡部誠騎手は14年ぶり2度目、角田輝也調教師は前身の名古屋優駿も含め13年ぶり4度目の東海ダービー制覇となった。

東京ダービー(大井)

南関東の二冠が今年ほど主役不在で波乱となったことは過去にあっただろうか。羽田盃が9→13→1番人気で、東京ダービーが6→12→2番人気という決着。二冠とも掲示板に入ったのは、羽田盃5着、東京ダービー3着のリコーヴィクターのみ。羽田盃を勝ったミヤギザオウは、東京ダービーではゲート内で転倒し競走除外。羽田盃2着のライアンは東京ダービーでは手綱が切れてなんとか最下位でゴール。東京ダービーを勝ったカイルは羽田盃6着、2着のクライオジェニックは羽田盃では最下位15着だったから、ほとんど前とうしろが入れ替わった印象だ。

戦前主役がいたとすれば、羽田盃、東京ダービーとも単勝1番人気に支持されたシャルフジンだろう。2歳時門別の能力検査から注目が高く、船橋移籍後、雲取賞、京浜盃を連勝。それで期待が高まったが、羽田盃3着、東京ダービー8着。北海道時代から言われていたことだが、特に2000メートルの東京ダービーは距離が長かったかもしれない。

とはいえ羽田盃も東京ダービーも上位3着以内はいずれも重賞常連の厩舎。有力厩舎の有力馬でレース当日に力を発揮できる状態にあった馬が結果を出したといえそうだ。

本橋孝太騎手(船橋)は10年ぶり、小久保智調教師(浦和)は7年ぶり、ともに2度目の東京ダービー制覇だった。

兵庫ダービー(園田)

1番人気に支持されたバウチェイサーは好スタートからぴたりと2番手を追走。3コーナーから抜群の手ごたえのまま逃げ馬をとらえにかかると、直線では後続を寄せ付けないまま、2着のニフティスマイルに4馬身差をつける完勝。まさ横綱相撲といういう勝ち方だった。

しかしながら一冠目の菊水賞は1番人気に支持されるも3着。二冠目の兵庫チャンピオンシップJpnIIは10着で、地方馬だけの着順でも5頭に先着されていた。それでも兵庫ダービーで再び1番人気に支持されたのは、兵庫チャンピオンシップJpnIIで中央の強豪相手の果敢にハナを主張する積極的なレースを見せたからだろう。

二冠を逃しても兵庫のこの世代の最強はバウチェイサーだとファンが支持し、その期待に見事こたえて見せた。

デビューした門別ではデビュー戦のフレッシュチャレンジを勝ったのみ、7戦して馬券にからんだのはその一度だけ。兵庫移籍後に素質が開花した。

管理する新子雅司調教師は9年ぶり2度目、笹田知宏騎手は兵庫ダービー初制覇だった。

高知優駿(高知)

高知の三冠は、一冠目の黒潮皐月賞が1400メートルで、二冠目の高知優駿が1900メートル。その一気の距離延長が明暗を分けることもめずらしくない。黒潮皐月賞では4着だったガルボマンボが、その距離延長を味方に“ダービー”制覇となった。

ガルボマンボは、父が芝のマイル以下で活躍したガルボだったからか、デビューした門別では1000、1100メートルのみを使われてきた。しかし高知移籍後、3歳になって1600メートルの準重賞を2つ勝ったことで注目の存在となった。高知優駿の前哨戦として行われた1800メートルの山桃特別ではゴール寸前でヴェレノにとらえられハナ差2着に敗れていたが、高知優駿では山桃特別と同じようにうしろから追ってきたヴェレノを1馬身差で振り切った。

林謙佑騎手は船橋デビューで、高知での期間限定騎乗からそのまま移籍。重賞3勝目が高知優駿初制覇。細川忠義調教師は騎手として1975年(当時はサラ4才優駿)に制し、調教師としては94年(当時は黒潮ダービー・やいろ鳥賞)以来2度目の勝利となった。

地方全国交流の高知優駿は今年賞金がさらにアップして1着1600万円という高額賞金だけに、南関東から3頭が遠征。そのうち2頭が上位人気となったが、それを3、4着にしりぞけて地元馬のワンツー。南関東の関係者が敗因として挙げていたように、高知の特殊な馬場はそれだけ“地の利”も大きい。

東北優駿(水沢)

岩手では、グットクレンジングが二冠制覇。一冠目のダイヤモンドカップ(水沢1600メートル)は、3コーナーで前をとらえると2着のフォルエルドラドに3馬身差をつけての勝利。そして東北優駿(水沢2000メートル)でも3コーナーで前をとらえると、今度は2着フジクラウンに10馬身差をつける圧勝だった。

グットクレンジングは門別でデビューし、高知、大井を経由して、今シーズン岩手に転入。2歳時、高知の金の鞍賞では2着という実績もあったが、各地区での能力差を見極め、岩手での3歳重賞戦線に挑戦。転入初戦となったスプリングカップでは、クロールキックに4馬身差をつけられ2着に敗れていたが、そのクロールキックが体調不良のため戦線離脱したことで相手関係が楽になったという幸運もあった。

岩手では近年も3歳三冠路線がさまざまに変化してきたが、山本政聡騎手は、かつて岩手ダービーとして行われていたダイヤモンドカップを2012年に勝利。板垣吉則調教師は、騎手として08年に、調教師として17年に岩手ダービー・ダイヤモンドカップを制していた。

北海優駿(門別)

北海道でも、シルトプレが1番人気にこたえての二冠達成となった。一冠目・北斗盃で2、3着だったエンリル、マナホクが、北海優駿では4、3着。2着には中央1戦未勝利から転入し、北斗盃には出走していなかったボニーマジェスティが食い込んだ。着差は1馬身半だが、直線での追い比べから抜け出したシルトプレは着差以上の完勝だった。

2歳時には川崎に遠征して鎌倉記念を勝利し、全日本2歳優駿JpnIでも5着。その後船橋に移籍し、雲取賞3着、京浜盃5着と、南関東三冠路線の前哨戦でも上位に食い込んでいただけに、北海道に戻ってその能力の高さをあらためて示した。

なおシルトプレのデビュー時に管理していた林和弘調教師は、昨年ラッキードリームで北海道三冠を制したあとに亡くなられた。もしご存命であれば、シルトプレで2年連続での二冠(もしくは三冠)達成となっていたかもしれない。

石川倭騎手は、そのラッキードリームに続いて2年連続、3度目の北海優駿制覇。米川昇調教師は騎手時代に北海優駿3勝、調教師としては15年にフジノサムライで制したが、そのときの鞍上も石川騎手だった。

石川ダービー(金沢)

昨年はダービーシリーズで最初に行われた石川ダービーだが、今年は前述のとおり、一冠目の北日本新聞杯とともに1カ月ほど繰り下げての実施で、ダービーシリーズではしんがりに位置することになった。

勝ったスーパーバンタムは、2歳時は競走中止となったデビュー戦も含めて8戦3勝と勝ちきれないレースも少なくなかったが、2歳年末の準重賞・あての木賞から冬期休催を挟み6連勝で石川ダービー制覇。一冠目の北日本新聞杯が逃げ切り4馬身差、石川ダービーは3番手から3コーナーで楽な手ごたえのまま先頭に立って後続を振り切ると、最後は手綱を緩める余裕があっての3馬身差。ともに完勝での二冠制覇となった。

青柳正義騎手、鈴木正也調教師は、2014年にダービーウイーク(当時)の東海ダービーをケージーキンカメで制していたが、石川ダービーは第6回でともに初制覇となった。

金沢の3歳重賞戦線では牝馬の活躍が目立ち、今年の石川ダービーでは牝馬が掲示板を独占。今年まで6回のうち牝馬が4勝目となった。

ダートグレード活躍馬が血をつなぐ

ダービーシリーズでは、兵庫ダービーが三冠目となっている以外、いずれも二冠目。名古屋のタニノタビト、岩手のグットクレンジング、北海道のシルトプレ、金沢のスーパーバンタムの4頭が二冠を制し、それぞれ三冠を目指すことになる。

血統面では、これまでにも書いているように、近年では地方のダートで活躍した種牡馬の産駒が目立つようになった。九州ダービー栄城賞のイカニカンは、父がJBCスプリントJpnIなどダートグレード9勝(中央も含む)のダノンレジェンド。東京ダービーのカイルは、父が兵庫ゴールドトロフィーJpnIII連覇などダートグレード3勝のトーセンブライト。兵庫ダービーのバウチェイサーは、父がダートGI/JpnI・9勝のエスポワールシチー。東北優駿のグットクレンジングは、母の父が盛岡のJBCスプリントJpnIを制したスターリングローズ。なおエスポワールシチーは、ダートグレード2勝のイグナイター(兵庫)などの活躍もあり今年の地方種牡馬ランキングでトップに立っていたが、メイショウハリオが帝王賞JpnIを勝ったことでパイロに逆転されての2位となっている(6月30日現在)。

ここ2年、南関東以外のダービーシリーズ勝ち馬のジャパンダートダービーJpnI出走はなかったが、今年は東京ダービーを制したカイル(浦和)のほかにも、ガルボマンボ(高知)、バウチェイサー(兵庫)がジャパンダートダービーJpnIの選定馬となっている(7月4日現在)。

2024年から全日本的なダート三冠へ

6月20日、『3歳ダート三冠競走を中心とした2・3歳馬競走の体系整備について』という発表があった。「東京ダービーを頂点とした3歳ダート三冠競走を創設し、中央・地方の所属を超えた全てのダート適性馬が覇を争う全日本的なダート三冠(クラシック)路線を構築します」ということで、2024年からは東京ダービーがJRAと交流のJpnIとなり、現在の形でのダービーシリーズは、おそらく来年(2023年)で最後になるものと思われる。

2006年に佐賀、北海道、大井、兵庫、名古屋、岩手の“ダービー”をほぼ1週間のうちに実施するという『ダービーウイーク』がスタート。17年には高知が加わり、金沢にも石川ダービーが新設され全国8場の『ダービーシリーズ』に発展。来年でダービーウイークからのダービーシリーズは18年目となる。その先、2024年から全国の3歳ダービー戦線がどのように変わるのか、今から楽しみだ。