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第8回グランシャリオ門別スプリント

この舞台は負けられない
  ライバルを振り切り3連覇

今年度のホッカイドウ競馬短距離路線は、8月に行われていたエトワール賞が5月に移動。6月の北海道スプリントカップJpnIIIに続く3戦目に、スーパースプリントシリーズ第6戦のグランシャリオ門別スプリントが位置づけられた。2015年に重賞に格上げされた、門別唯一の1000メートル古馬重賞だ。

門別1000メートルで6戦6勝の申し子が、このレース2連覇中のアザワク。コースレコードの58秒4は2020年のこのレースで叩き出したものだ。前走の北海道スプリントカップJpnIIIは勝ち馬に先手を奪われてこの馬らしさを出せずに終わったが、この舞台なら、と単勝1.4倍の1番人気に支持された。

門別生え抜きで通算24戦13勝のグレイトダージーは、今季からブリンカーを付けたことで気性面の安定がみられ、2連勝中。単勝2番人気に推され、悲願の重賞制覇を狙う。出走馬10頭のうち半数が今季からの転入馬。JRAオープンだったヒラソールもここ3戦でようやく力を出せるようになり、各馬がアザワクに対し、どのように闘いを挑むかが注目された。

海には夜霧がたちこめ、レースに影響がないか不安もあったが無事行われた。前夜の雨もあり馬場は稍重。カエルが鳴き、オオジシギが羽音を響かせるこの時期ならではの光景にふと静寂が訪れ、ファンファーレが鳴る。

5ハロンの電撃戦は、アザワクが抜群のスタートで抜け出し、グレイトダージーとケイアイサクソニーが追いかける。ヒラソールは4、5番手から前をうかがう。4コーナーで手綱をしごく馬たちの前で、アザワクは持ったまま。直線ではグレイトダージーがアザワクの内で食い下がり、激しい攻防になったが、アザワクがアタマ差で粘って3連覇を達成。ゴール前でケイアイサクソニーをとらえたヒラソールが3着に入った。

勝ちタイムは58秒7で、自身のコースレコードにコンマ3秒差だった。その2年前が不良馬場で、今回より3キロ軽い51キロだったことからもスピードに磨きがかかったことがうかがえる。昨年は前半でアザワクに並びかけるも失速したグレイトダージーは、今年は同タイムの2着で、評価したい内容だ。

青鹿毛の馬体がナイトレースの照明に美しく映えた。桑村真明騎手はほっとした表情で戻り、オーナーであるオリオンファームの三浦啓一場長に声をかけられ指を3本立てた。片平陽子厩務員は「あーよかった」と馬をたたえた。

角川秀樹調教師は同時に通算1600勝(中央も含む)を達成。三浦場長が記念プレートを持ち、所属の阿部龍騎手らも加わるなどホッカイドウ競馬らしい写真撮影となった。今後についてはオーナーサイドと検討すると角川調教師は話した。

アザワクの馬名は、スピードある猟犬に由来するそう。1200メートルでも、昨年の道営スプリントを制しており問題ない。引き続き勝利に狙いを定めた快足娘が、短距離路線を盛り上げてくれそうだ。

取材・文 小久保友香

写真 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

桑村真明騎手

内からだいぶ詰め寄られたので、3連覇できてよかったです。直線では頑張ってしのいでくれ、と一生懸命追いました。スタートも上手で二の脚も速い馬。道中はこの馬なりに息が入っていた。これからも(門別1000メートルで)負けないよう、来年の4連覇も目指し頑張りたい。

角川秀樹調教師

ゴール前はヒヤヒヤしたので勝ってほっとした。馬には「勝たせてあげたい」という気持ちでした。春からこの重賞に合わせてきたので状態は文句ない出来。3連覇は難いことで、本当にうれしいです。1600勝でいいことが重なり、もっといいことがあるんじゃないかと思います。