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第21回ノースクイーンカップ

好位から直線抜け出す
  昨年ハナ差惜敗の雪辱

牝馬の戦いは、調整の難しさをよく耳にする。牡馬より繊細で、追い切りの動きが良くても、レース当日はピリピリした様子になることもある。昨年のノースクイーンカップは、濃霧のためメインレースを迎える前に開催取止めが決まり、5日後に順延された。川崎から里帰りの形で遠征してきたコーラルツッキーは、本来の日程の時は大幅に馬体が減っていたものの、順延が奏功して馬体が回復。2019年エーデルワイス賞JpnIII以来の勝利を収めた。その一方で、ハナ差の2着に敗れたネーロルチェンテは、順延の影響を受けた。「良い状態でレースを迎えたと思ったら、順延が決まったことで、その状態を5日間維持するのが難しかった」と、米川昇調教師は、当時の苦労を振り返る。順延されたことで、前走比で馬体重は8キロ増だった。その5日前なら4キロ増で済んでいたが、この微妙な体重が、コーラルツッキーとの追い比べで劣ったという見方はできる。

この日の日高町は、最高気温が21度と涼しく、日中と朝晩の気温差が少なかった。濃霧の心配はなくレースを迎えられたことに、関係者は安堵の様子。今年も川崎から参戦したコーラルツッキーは、前走から15キロ減。直前輸送なので、やはり馬体重は大きく減った。コーラルツッキーより人気面では上位だったサルサレイア(大井)は3キロ増、シャイニングアカリ(川崎)は2キロ減と、長距離輸送の不安を解消してレースに挑めた。地元勢では、前哨戦のえりもオープンで、大きく立ち遅れながら差し切ったニーズヘッグが1番人気。JRAから移籍初戦で、ヒダカソウカップを制したクーファアチャラが4番人気。昨年の雪辱を期すネーロルチェンテは3番人気だった。

立派な馬体だったえりもオープンから、馬体を10キロ絞ってきたクーファアチャラが、2番枠からスタートを決めて先頭へ。コーラルツッキー、シャイニングアカリの遠征勢が追いかけ、それらを内に見ながらネーロルチェンテは追走する。ニーズヘッグはスタートを決め5番手、その後にサルサレイアなどが続いた。

前半3ハロン37秒3、5ハロン63秒1と、前年とほぼ変わらないスローな流れで、道中の動きはあまりなかったが、3コーナーからサイファリスが内をスルスルと上がっていくと、クーファアチャラもペースアップする。その中にあって、ネーロルチェンテは手応え良く直線を迎え、メンバー中唯一、上がり3ハロンで39秒を切るタイムを繰り出し、逃げ粘るクーファアチャラを1馬身突き放した。2019年ブロッサムカップ以来、2つ目の重賞制覇を飾るとともに、悔しい思いをした昨年の雪辱を果たした。

「体重を絞るのが難しい馬だから、調教の動きが良く、体重も絞れていたので、こちらが思っていた形でレースに挑めたことが何より。(石川)倭の道中の手応えを見ていて、安心してレースを観ることができました」と、米川昇調教師はレースを振り返る。この後は、ホッカイドウ競馬最高峰のブリーダーズゴールドカップJpnIIIへ向かう。「JRA勢は強力ですから、状態を維持するだけでなく、もっと上を目指せるように頑張ります。倭に調教を任せていれば、大丈夫ですから」と、米川昇騎手の勝負服を受け継いだ、信頼する愛弟子を讃えた。

取材・文 古谷剛彦

写真 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

石川倭騎手

調教の段階から状態の良さを感じていましたので、自信を持って挑むことができました。外目の枠を引くことができ、理想的な位置でレースを運べました。いつでも抜け出せる手応えでしたし、最後までしっかり走り切ってくれました。ブリーダーズゴールドカップでは、昨年以上の走りができるよう頑張ります。

米川昇調教師

レースを使いつつ馬体が絞れ、前走の準重賞より遥かに良い状態で挑めました。昨年は順延で調整の狂いが生じた中で、ハナ差2着でしたから、雪辱を果たすことができて嬉しい限りです。この後はブリーダーズゴールドカップに向かいます。地元の代表として頑張りますので、応援よろしくお願い致します。