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第24回ジャパンダートダービーJpnI

JRA人気4頭の争いを制す
  武豊騎手は17年ぶり4勝目

このレースに先立つ6月20日、2024年より羽田盃、東京ダービーをJpnIに格付けし、ジャパンダートダービーJpnIは名称を変更したうえで秋に移設、新たな三冠体系を構築することが発表された。これまで米国を模範とし、春に三冠全てを行う南関東のローテーションに組み込まれていたが、国内の芝三冠に寄せる形で変更。1999年に創設されて以来、親しまれてきた“JDD”の名称も、今回を含めて残り2回となった。

そうした寂しさが漂うなかで、地元勢は羽田盃を制したミヤギザオウ、東京ダービー馬のカイルが不在。南関東の重賞を勝った馬が皆無というメンバー構成となった。ただ、JRAから兵庫チャンピオンシップJpnIIを8馬身差で勝ったブリッツファング、同厩舎で鳳雛ステークスを制したハピ、ユニコーンステークスGIII勝ちのペイシャエス、ダートでは4戦全てで連対しているノットゥルノなどが参戦。今後の飛躍が期待される馬がそろい、真夏の頂上決戦を盛り上げた。

レースは大井のリコーヴィクターが逃げて幕を開けた。その後ろにブリッツファング、コマンドライン、兵庫のバウチェイサー、ノットゥルノ、ペイシャエスが続く。ハピは後方から機をうかがう展開となった。前半の3ハロンは35秒5で、その後も12秒台のラップを刻むよどみない流れだったが、3コーナー過ぎには早くもJRA勢が進出し、直線では上位人気の4頭による底力比べとなった。

早めに先頭に立ったブリッツファングが粘るところへ、道中で外めを回っていたノットゥルノが手応えよく並びかけ、直線の半ばで先頭へ。うまくさばいてきたペイシャエス、豪快にまくってきたハピも末脚を伸ばしたが、ノットゥルノも懸命に粘り込む。手に汗を握るゴール前の攻防は、ノットゥルノがペイシャエスを3/4馬身差で振り切り、ダート3歳の頂点に立った。

鞍上の武豊騎手は、05年のカネヒキリ以来となる4度目の頂点。「なんとか結果を出したいという気持ちが強かったですし、日本ダービー(ドウデュース)とダブルダービー制覇ができて、すごくうれしいです」。前残り気味だった馬場を考慮して早めに動く作戦が的中。17年ぶりの頂点に笑顔を見せた。

管理する音無秀孝調教師は19年クリソベリル以来となる3勝目で、「いつ勝ってもうれしいですね。これまでで一番落ち着きがありましたし、砂をかぶらない場所をとれたのも良かったです」と笑顔を見せた。今後についてはオーナーサイドとの相談次第としたが、ゆくゆくはチャンピオンズカップGIなど、古馬を含めた頂点を目指すとした。

一方、ペイシャエスの菅原明良騎手は悔しい2着。「勝負どころで馬群がばらけて、うまく外に持ち出すことができたのですが、そこで仕掛けを我慢してしまったんです。動いていれば差し切れたかもしれません」と唇をかんだ。ただ、ここ数戦より後ろの位置取りになりながら、うまく立ち回った内容はこの馬のセンスの良さを示すもの。距離にもめどが立っただけに、さらなる活躍が期待できる。

1番人気のブリッツファングはゴール手前までしぶとく粘り、ペイシャエスから半馬身差の3着。池添謙一騎手は「スタートから出していって、正攻法の競馬をしました。自分の競馬をして頑張ってくれましたし、これからに期待です」と一定の評価を与えた。軽快な先行力は魅力で、小回りが多い地方でこそ持ち味が生きる。今後も目が離せない1頭だ。

地方勢では大井のクライオジェニックの5着が最高。安藤洋一騎手は「もう1列後ろから追走したかったですね。でも、差す競馬も板についてきました」と、一戦ごとに力をつけるパートナーに目を細めた。今回はJpnIで相手がそろっていたが、地方馬同士なら違うはず。春の経験を糧に、さらなる飛躍を期待したい。

取材・文 大貫師男

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

武豊騎手

枠順が外だったのでスムーズなレースができて、馬のリズムも良かったので、馬場状態を考えて少し早めに動こうかなと思いました。気性が難しいところもあるのですが、スタッフがいい方向に馬を成長させてくれています。僕は53歳ですが、馬はまだ3歳なので今後も一緒に頑張っていけたらと思います。

音無秀孝調教師

2走前は落鉄していましたし、前走は小回りで、跳びの大きいこの馬には不向きなコースだったので、敗因がはっきりしていました。砂をかぶらない場所をとれて、直線を向いた時の手応えもよかったので、これならと思っていました。次走はまだ決まっていませんが、秋ごろになるかなと思っています。