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第26回マーキュリーカップJpnIII

流れを読んで接戦を制す
  期待の血統が重賞初勝利

JRAのケイアイパープルに騎乗予定だった藤岡康太騎手が“家事都合”で地元の山本政聡騎手に変更。これは……と記者室で当日話題になったのは、2019年に佐賀で期間限定騎乗中であった弟・山本聡哉騎手が、佐賀記念JpnIIIで福永祐一騎手からヒラボクラターシュの代打騎乗で初のダートグレード優勝を果たしたこと。ケイアイパープルは最終的に単勝2.5倍の1番人気に支持されていたことから、お兄ちゃんも勝ったら……、などと話は盛り上がったが、結果は4着。

昨年は平日開催で入場者は1665人、今年は“海の日”の祝日。午前中からファンの入りも好調で4058人を記録し、久々に活気ある開催になった。売り上げも当日1日で21億円を超える数字が発表された。

マーキュリーカップJpnIIIはリピーターの活躍が多いレースだが、連続出場の馬がいない珍しい年となった。顔ぶれは例年以上のレベルで、JRAだけでなく地方所属馬も豪華メンバー。これは今年11月3日に盛岡競馬場でJBCが行われる影響もあったのか。JRA勢は、浦和記念JpnIIなどダートグレード3勝のメイショウカズサ、今年の佐賀記念JpnIIIを5馬身差で圧勝したケイアイパープル、半姉にブリーダーズカップ・ディスタフGIを制したマルシュロレーヌを持つ良血バーデンヴァイラーなどが参戦。地方勢も全日本2歳優駿JpnIやダイオライト記念JpnIIを勝ったノーヴァレンダ、今年の川崎記念JpnI・2着エルデュクラージュ、春に岩手へ移籍したヴァケーションは全日本2歳優駿JpnI勝ち馬、昨年地方3歳の頂点ダービーグランプリを制したギガキングという面々。

今回のメンバーを見ると、有力どころはほとんどが逃げ先行タイプだけに展開予想の段階から難儀なうえ、別定重量52キロから58キロと幅がある斤量に、雨続きの天候など波乱要素が満載。当日は重馬場でスタートし、第7レースには稍重まで回復。極端に時計が出る馬場とも言えず、平均値より0秒4速い程度の馬場(岩手・ケイシュウ調べ)。勝ちタイム2分2秒5(12.5-10.3-11.1-12.5-13.2-12.5-12.4-12.0-12.0-14.0)は近10年で4番目に速いものだった。

レースは、メイショウフンジン、ノーヴァレンダ、メイショウカズサ、ケイアイパープルの4頭が先行。勝ったバーデンヴァイラーは2コーナーで先頭から1秒8差のポジション、直後に2着馬テリオスベル。向正面では出入りの激しい流れとなり、外々を回ってテリオスベルが進出しての勝負どころ残り600メートルではノーヴァレンダと併走で先頭へ。3着となったヴァケーションは先頭から1秒0差の位置。

先行勢は脚が上がり、直線入口で手応えに余裕あったテリオスベルが後続を引き離しにかかると、一完歩ずつ差を詰めたバーデンヴァイラーとクビの上げ下げでゴール。バーデンヴァイラーがクビ差で接戦を制し、2度目の重賞挑戦で初勝利となった。

福永祐一騎手は「中間に調教で乗っていて良い感じだったし、輸送もクリアして馬体も回復していた。4コーナーでは江田(照男)さんのテリオスベルについていけず、なかなか最後まで……。でも馬のバランスから届いてくれればと思って追った。ゴール前で交わせて初重賞。1着と2着では違うからね。今回の競馬ができれば今後は幅が広がるし、期待以上の結果。一戦一戦、着実に力をつけていってほしい」

齋藤崇史調教師は「姉マルシュロレーヌは地方でも結果を出していたので、この馬も地方は合うと思っていた。デビューの頃から期待していた馬で、骨折などありましたが、この1年は成長もあって良い競馬を見せている。力もつけているけど今回の勝ちが自信にも繋がるでしょう。次走は決まってません。JBC盛岡は選ばれれば」と最後に締めくくった。

取材・文峯村正利

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

福永祐一騎手

よく勝ち切ってくれました。減っていた体重も戻ってコンディションも良かったと思います。これまで逃げか2番手の競馬で勝ってきた馬ですが、今回は行きたい馬も揃っていたので今後のことも考えて砂を被らせて控える競馬で、と思っていました。相手がしぶとかったが最後まで伸びてくれましたね。

齋藤崇史調教師

この時期の中央ダートは1700メートルが多く、ゆったり競馬ができる今回のレースを選択。前走の負けをふまえて減っていた馬体回復に専念し、いい状態で臨むことができました。指示は出さずジョッキーにお任せ。1コーナーや向正面は苦手なシチュエーションも直線はハミを取って力を出してくれましたね。