web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第12回習志野きらっとスプリント

ゴール前の一瞬で差し切る
  目標は盛岡JBCスプリント

南関東は船橋競馬場と大井競馬場のダブルナイター開催で、船橋ではスーパースプリントシリーズ・ファイナルの習志野きらっとスプリントを実施。前年の覇者コパノフィーリングをはじめスピード自慢たちが電撃の5ハロン戦で競い合った。

この路線に彗星のように出現したのは、大井からただ1頭参戦し1番人気に支持されたギシギシ。重賞に初挑戦したのは今年4月の東京スプリントJpnIIIで、優勝したシャマルにタイム差なしの3着。その後は2連勝も、2走前のJRA2勝クラス交流の準重賞は半馬身差、ここを見据えた自身初遠征の前走はクビ差と、いい意味でも悪い意味でも相手に合わせて走るところがあり、スプリンターとしては非常に珍しいタイプの個性派。

主戦の矢野貴之騎手は騎乗自粛中のため、笹川翼騎手が代打騎乗。大外8枠9番から抜群のスタートを切るも、すぐにコパノフィーリングやキモンルビー、佐賀のロトヴィグラスに交わされ、道中は4番手追走。4コーナーでキモンルビーが単独先頭に立って直線後続を引き離し、そのまま押し切るかと思われたところに、ギシギシが矢のような脚で襲いかかった。

「スタートだけは速かったですが、その後は進んでいかなかったので負けるかと思いました。1000メートルで4コーナーでの前との距離は結構絶望的でしたが、最後にしっかり伸びることはわかっていたので、馬を信じて一生懸命追うだけでした」(笹川騎手)

スタートから追い通しだったが、ゴール手前100メートル付近から一瞬にしてスイッチが入り、図ったかのような末脚で差し切った。クビ差の2着がキモンルビー、2馬身半差の3着が最後方から突っ込んできたブンロート。

ギシギシは2度目の重賞挑戦で念願の初制覇。デビュー間もない頃はソエに悩まされ、その後は右膝骨折の手術など順調さを欠いた時期もあり、休みながらじっくりゆっくりと育てられてきた。結果的にはその休養期間も成長を促す上でプラスになっていることは栗田裕光調教師もコメントしている。

この馬の調教をつけ、世話もし日々寄り添っているのは三浦誠調教師補佐。もともとは上山競馬場の騎手で、廃止後に大井競馬場へ来て調教専門厩務員からスタートし、現在は栗田調教師の右腕として厩舎を支えている。下級クラスの頃からギシギシに惚れ込み、スピード、パワーなど、これまで乗ってきた馬の中で一番の乗り味とのこと。着用しているメンコは、三浦調教師補佐の騎手時代の勝負服柄。今回のレース後も「すごいでしょ!すごいんですよ(笑)。でも、まだ遊びながら走っていますね」と、自慢の息子に誇らしそうだった。

今後については未定だが、11月3日に盛岡競馬場で実施されるJBCスプリントJpnIを最大目標にローテーションを組んでいくという。次走からは矢野騎手に手綱が戻る予定だ。

ギシギシという名前も印象的で、タデ科の多年草のこと。一般的には雑草のイメージだが、オーナーが経営するグループ会社のレストランやカフェでは、牧場の敷地内で農薬や化学肥料を使わずに自生しているギシギシを、野草としてお茶やケーキに入れて提供しているという。食糧価格の高騰が懸念される今、そんな野草にも関心を持ってもらえるようにという願いを込めて名付けられたことがオーナーのホームページで記されている。

成長途上、これからさらなる大仕事をやってのけて欲しい。ギシギシ、非常に魅力的な馬が出てきた。

取材・文 高橋華代子

写真 国分智(いちかんぽ)

Comment

笹川翼騎手

厩舎の皆さんや矢野さんが大切に育ててきた馬なので、軽い気持ちでは乗れないなと思いました。1000メートルは少し忙しいかなと感じましたが、大井や盛岡の1200メートルもあるので、そういう路線ならかなり上位の馬じゃないですかね。中央競馬の馬が相手でも十分にやれる素質を感じさせてもらいました。

栗田裕光調教師

最後になれば伸びてくるのはわかっていましたが、2着に終わる場合がほとんどなので、そこで抜け切るのは馬も笹川もすごいと思います。あの展開なら普通に負けると思いますが、改めて本当に強い馬ですね。文句なしです。追い切りでもなんでも最後しか走らないですが、今回も最後だけ本気を出しました。