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スーパースプリントシリーズ2022 総括


クローズアップ

2022.8.15 (月)

この距離でこその3頭が連覇
 ファイナルは4歳馬ギシギシ

13年目を迎えたこのシリーズ。過去にファイナルの習志野きらっとスプリントで連覇を果たした馬は、2011~13年に3連覇のラブミーチャンと、19、20年のノブワイルド。ともにダートグレードを勝っており、ほかに14年の覇者ナイキマドリードもダートグレードでの勝利がある。このシリーズはワンターンの1000メートル以下という特異な条件ではあるが、このシリーズのチャンピオンは1200~1400メートルのダートグレードでも勝ちきれる実力があるということ。

今年の覇者ギシギシは、重賞初挑戦がダートグレードの東京スプリントJpnIIIで、いきなりハナ+クビ差の3着という好走。まだ4歳だけに、この路線を牽引していく存在となりそうだ。

早池峰スーパースプリント(水沢)

岩手の短距離戦線で圧倒的なスピードを見せているキラットダイヤの連覇となった。昨年が2番手から直線で抜け出し2着に2馬身差。今年はスタートして100メートルほどでハナに立つと、2番手で追ってきた一昨年盛岡1000メートルが舞台だったこのレースの覇者コンサートドーレを楽な手ごたえのまま7馬身突き放した。馬場の違いはあるが、昨年よりタイムをコンマ4秒詰め、それが軽く追われただけで出したタイムということでは、昨年以上にパワーアップを感じさせる一戦だった。

キラットダイヤは、続く岩鷲賞(盛岡1200メートル)でも2着に10馬身差をつける圧勝で連覇。その後は、これも昨年同様夏は休養となっている。岩鷲賞での1分10秒1(良)は、中央馬相手でも通用する好タイム。今年、JBCスプリントJpnIは、その盛岡1200メートルが舞台となるだけに、出走してくるようなら地元の期待となりそうだ。

佐賀がばいダッシュ(佐賀)

1番人気に支持されたロトヴィグラスが8頭立ての大外枠でもハナをとり、3~4コーナー中間では早くも2番手の馬に3馬身ほどの差をつけると、そのまま後続を振り切っての勝利。2着キタカラキタムスメに4馬身差をつけた。

ロトヴィグラスはこれで佐賀900メートルは4戦3勝。唯一の2着敗戦は、一昨年、昨年とこのレース連覇を果たし、今年1月のレースを最後に引退したドラゴンゲートに先着されてのもの。そういう意味では、佐賀のこの超短距離戦で世代交代の一戦ともいえた。1400メートルでも勝ち星はあるものの安定感に欠けるだけに、ロトヴィグラスはやはりこの舞台でこそ能力を発揮するといえそうだ。

川崎スパーキングスプリント(川崎)

1番人気に支持されたのはトライアルのスパーキングスプリントチャレンジまで3連勝で臨んだファントムバレットだったが、キモンルビーとのハナ争いを制して逃げたコパノフィーリングがそのまま押し切った。

コパノフィーリングは3番人気ではあったが、昨年は習志野きらっとスプリント、兵庫ゴールドカップを制した実績。1月の船橋記念で3着に負けて以来5カ月ぶりの実戦だったため人気を落としていたが、習志野きらっとスプリント連覇を目指す立場だけに順当勝ちといえた。

そして4コーナー5番手から半馬身差まで迫って2着はコウギョウブライト。鞍上はデビュー3年目の池谷匠翔騎手で、重賞では初めて馬券圏内の好走。近年、川崎開催では1日に少なくとも1レースは900メートル戦が組まれており、その舞台では減量のある若手騎手の活躍が目立っている。川崎スパーキングスプリントは重賞なので減量特典はないものの、池谷騎手はその経験が生きたと思われる。

園田FCスプリント(園田)

地方交流での高知勢は強い。それをあらためて感じさせる一戦だった。ダッシュ力ではやや劣ったダノングッドだが、前2頭からやや離れた3番手を追走すると、直線半ばで前をとらえ5馬身差の圧勝。820メートルという距離で、しかも直線213メートルというコースでの5馬身差は大差といってもいい。昨年が6番人気で6馬身差の圧勝。今年は堂々1番人気での勝利で連覇となった。

そしてダノングッドを追ってきたダノンジャスティスが2着に入り、高知・別府真司厩舎のワンツーともなった。

ダノングッドは続くトレノ賞(高知1300メートル)も制し、昨年9歳から今年10歳になっての1年7カ月だけでも820メートルから1600メートルの重賞で7勝。衰えを知らないどころか、なおも成長する10歳馬だ。

日本海スプリント(金沢)

人気上位は地元勢だったが、勝ったのは名古屋から遠征のナムラムツゴロー。地方でのワンターンはこれが初めてで、5番人気での勝利となった。5番枠からのスタートで、スタートダッシュは外の馬が早かったが、行く馬を先に行かせ3~4コーナーは外目を回っての直線、前を行く3頭を鮮やかに差し切った。好騎乗の細川智史騎手はデビュー3年目での重賞初勝利。管理する坂口義幸調教師は2019年のエイシンテキサスに続いて2度目の勝利。このレースは今年で5回目だが、名古屋勢は昨年のニュータウンガールに続いて3勝目となった。

地元期待のネオアマゾネスはスタートでつんのめるような格好になって二の脚のダッシュがつかず、先行勢から置かれてしまった。それでも4コーナー7番手からよく伸びたものの勝ち馬とは2馬身差まで。昨年に続いて1番人気での2着だった。

グランシャリオ門別スプリント(門別)

門別1000メートルのスペシャリスト、アザワクが連覇を決めた。アザワクで素晴らしいのは、なんといってもスタートダッシュの速さ。ゲートを出て20~30メートルほど行ったところですでに他馬より1馬身以上前に出ている。直線では内からグレイトダージーに詰め寄られたものの、これをアタマ差で振り切っての勝利。門別1000メートルは、これで7戦7勝となった。

一方、惜しくもアタマ差及ばなかったグレイトダージーだが、これまで重賞は4回出走して7着が最高という成績だったが、初めての好走。今シーズンはここまで5戦オール連対と安定した成績で、このあと門別のスプリント路線は舞台が1200メートルとなれば逆転も狙えそう。

習志野きらっとスプリント(船橋)

川崎スパーキングスプリントでもハナを争った同馬主のコパノフィーリング、キモンルビーがここでも先行争いを繰り広げた。川崎では内のコパノフィーリングが3コーナーから振り切って勝ったが、今回も2頭の位置関係では外枠だったキモンルビーが今度は譲らなかった。直線でコパノフィーリングが一杯になると、キモンルビーが単独先頭。後続を離したままゴールするかに思われた。しかしゴール前はさすがに脚が上がり、道中4、5番手にいたギシギシが残り100メートルで一気に伸びて差し切った。

ギシギシは抜群のスタートを切ったものの、笹川翼騎手はおそらく2頭が行くだろうと見て、内の出方を確認しながら控えての4番手。前が思った以上に競り合って展開がハマったこともあるが、それにしてもゴール前での伸びは素晴らしかった。

アメリカのダート血統が活躍

ファイナルの習志野きらっとスプリントは、過去11回のうち8回も14頭フルゲートで争われてきたが、今回は過去最少の9頭立て。今年は梅雨明けが異常なほど早く猛暑が続いた影響があったかもしれない。他地区からの遠征も過去最少タイの2頭にとどまった。シリーズ競走は実施時期を再構築するのは難しいが、真夏の遠征は、特に北海道や岩手の馬にとっては厳しい。

特異な距離のレースだけあって、やはり全体を通してリピーターの活躍が目立った。早池峰スーパースプリントのキラットダイヤ、園田FCスプリントのダノングッド、グランシャリオ門別スプリントのアザワクが連覇。また川崎スパーキングスプリントのコパノフィーリングは昨年、習志野きらっとスプリントを制していた。そのほか2、3着馬も、過去に同レースで3着以内だった馬が目立った。

近年のダート競馬では日本のダートで活躍した種牡馬の産駒が目立つようになってきたが、この超短距離戦はやや傾向が異なるようだ。今回の勝ち馬の父で、日本のダートで活躍したのは、サウスヴィグラス(キラットダイヤ、ロトヴィグラス)だけ。ヘニーヒューズ(コパノフィーリング)、イルーシヴクオリティ(ダノングッド)、アルデバランII(ギシギシ)らは、いずれも北米ダートのマイル以下で活躍した馬たち。スピード勝負のダートでは、やはりアメリカ血統が底力を発揮するのかもしれない。一方で、ディープブリランテ(ナムラムツゴロー)、カレンブラックヒル(アザワク)という、日本の芝GI勝ちの父もいた。

リピーターの活躍が目立ったことは、裏を返せば若馬の活躍が少ないということで、4歳馬で馬券にからんだのは習志野きらっとスプリントを制したギシギシだけ。そういう意味では冒頭で触れたとおり、今後この路線でギシギシにかかる期待は大きい。

斎藤修

写真 いちかんぽ