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第43回王冠賞

好スタートから逃げ切る
  馬場も味方に三冠を阻止

「お盆を過ぎれば北海道には秋が訪れる」と言われる。ホッカイドウ競馬の3歳三冠最終戦の王冠賞は、文字通り『3歳秋のチャンピオンシップ』の初戦として迎えた。当日は道内各地で通行止めが相次ぐほどの大雨が降り、門別競馬場も午前で雨は止んだとはいえ、終始不良馬場となった。

三冠路線は時期や距離を変えながら40年近く続き、ここ数年は北斗盃、北海優駿、王冠賞の順で定着している。2019年のリンゾウチャネル、21年のラッキードリームに続く三冠馬誕生なるかと二冠馬シルトプレが注目を集め、単勝人気は1.5倍だった。

ライバルも黙ってはいられない。2番人気は3連勝中のサンオークレア。前走古馬相手に同距離の1800メートルで完勝したボニーマジェスティが3番人気、逃げ馬のエンリルが4番人気だった。パドックでは一瞬雨が降り、この日に向け仕上げて来た12頭の馬体をナイトレースの照明がいっそう輝かせた。

レースはエンリルが好スタートを決め、フクノアルズ、カーロデスティーノが続いた。シルトプレは6番手。エンリルが軽快に飛ばし向正面では縦長の展開に。

3コーナー過ぎでシルトプレとサンオークレアが追い上げるが、エンリルの桑村真明騎手はさらに気合を入れ、差は詰まらない。4コーナー過ぎでシルトプレが2番手に上がり、後方からクルードラゴンがじわじわと上がってくるがすでに独走態勢。北斗盃2着、北海優駿4着と後塵を拝してきたエンリルがシルトプレに8馬身差を付けて最後の一冠を制した。勝ちタイムは1分51秒4。3着は10番人気のクルードラゴン、2番人気サンオークレアは4着だった。

エンリルと桑村騎手は検量所にも最初に戻ってきて、厩務員やオーナーらと喜びを分かち合った。角川秀樹調教師は王冠賞5勝目。17年にはスーパーステションでベンテンコゾウの、16年はジャストフォファンで同厩舎のスティールキングの三冠をそれぞれ阻止している。スティールキングの鞍上だったのは桑村騎手で、騎手にとっても念願の王冠賞初制覇となった。

エンリルを生産した新ひだか町・松本牧場の松本和則さんは「馬場も向いていて、1800メートルにも期待していた」と笑顔を見せた。子どものころはきかない性格だったが、とにかく丈夫だったという。出走馬唯一の体重500キロ台、指示に応えて力を発揮できる体の強さが光った。

今後は未定だが、ダービーグランプリも制した場合のボーナス賞金について触れられた角川調教師は「(北海道三冠)ボーナスを阻止したので(3歳秋のチャンピオンシップの)ボーナスを獲りに行こうかな」と周りを盛り上げた。盛岡や古馬との戦いで、エンリルの軽快な逃げ脚を見られるか期待したい。

取材・文小久保友香

写真浅野一行(いちかんぽ)

Comment

桑村真明騎手

調教師からも強気の競馬を、とのことだったのでこの馬のペースで後ろを気にせずレースを進めました。馬場もかなり軽かったので、持ち味である長くいい脚とかみ合った。また強い勝ち方ができるよう調整します。

角川秀樹調教師

馬場も味方したし、馬の状態も前走とは違う出来だった。春は毛づやも冴えなかったが、北海優駿のあと短期放牧に出して状態が良くなった。先行力と粘り強さを兼ね備えた馬。今後はオーナーや騎手と相談して考えます。