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第27回クラスターカップJpnIII

4コーナー先頭から押し切る
  賞金加算して目指すはJBC

今年のクラスターカップJpnIIIは予期せぬ出来事の連続だった。まず豪雨。8月上旬から断続的に雨が降り、何度にもわたって災害警報が発令された。

その影響を受け、8月14日の2歳重賞・若鮎賞は芝からダート変更を余儀なくされた。レース当日の16日も午前は小雨模様だったが、クラスターカップJpnIII発走前は嵐のような雨が降った。

前後して人気の一角を形成したであろう、リメイクが馬体故障のため当日朝に競走除外。仮に優勝すれば第1回の1996年トキオクラフティー以来、史上2頭目の3歳馬による快挙だっただけに、ファンは落胆を隠せなかった。

そしてレース。単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持されたダンシングプリンスがスタート直後、大きく置かれてしまった。「スタートして脚を滑らせた。これでリズムがダメ。リードホースのうしろのいいポジションにつけたが、直線伸びなかった。1200メートル戦ではスタートミスが大きかった」とクリストフ・ルメール騎手。絶好の1番枠を引き当て、誰もが逃げを疑わなかったが、波乱の幕開けとなった。

逃げの手に出たのはジャスティンだった。「ダンシングプリンスが出遅れたので、自分のペースで逃げることができました」(横山武史騎手)。前半3ハロン34秒8、上がり3ハロン34秒6。ジャスティンはまさに絶妙のペースで“リード”した。2番手外にオーロラテソーロ。ダンシングプリンスは手綱をしごいて3番手インまで押し上げ、4番手外にリュウノユキナ。隊列はともかく、戦前の予想どおりJRA4頭が先団グループを形成した。

残り400メートルで、オーロラテソーロがジャスティンを交わして先頭。「ジャスティンも渋太い馬ですからね。早めに捕らえようと思いました」と鮫島克駿騎手。直線を向いてリードを広げると、外からリュウノユキナが一完歩ごとに差を詰めたが、1馬身差まで。鮫島騎手はガッツポーズでゴールを通過した。

オーロラテソーロはデビューから4戦は芝を使い、5戦目の東京ダート1400メートルで初勝利を飾るとダート路線へシフト。敗戦も少なくなかったが着実に成長を続け、昨年6月に3勝クラスを卒業。重賞3度目の挑戦、地方ダート初参戦で待望のタイトルを獲得した。アメリカ生まれで、父はマリブムーン。その産駒は北海道2歳優駿JpnIII(当時)、全日本2歳優駿JpnIを連勝したオーブルチェフ、TCK女王盃JpnIII・1着、JBCレディスクラシックJpnIで2年連続2着のマドラスチェックなど日本でも活躍している。

畠山吉宏調教師は「この路線(ダートグレード)にずっと申し込んでいたが、出場チャンスがなかった。今回も5番目で選ばれましたが、最高の形で賞金加算ができました。クラスが一つ一つ上がっていく中、揉まれながら強くなっている。是非、盛岡へ戻ってきたいと思っています」

鮫島騎手も「状態がすばらしかった。すごく充実していると思います。走ることにまじめ。注文がつかない」とオーロラテソーロを絶賛した。

今回の勝利で“JBC盛岡への道”が一歩近づいたのは確実。畠山調教師の言葉を受け、アンサーを送りたい。「今度はJBCで再会しましょう!」

取材・文 松尾康司

写真 佐藤到(いちかんぽ)

Comment

鮫島克駿騎手

揉まれないポジションを確保したかったので、理想的な展開。ダンシングプリンスが出遅れたのを見て2番手は取れるなと思いました。逃げたジャスティン、後ろにつけた強豪を意識しながらのレースでしたが、脚いろが衰えず最後までしっかり伸びてくれた。JBCへ向けて大きな勝利になったと思います。

畠山吉宏調教師

前走オープンを勝った後、放牧でリフレッシュさせました。賞金が微妙でしたが、出る前提で逆算して厩舎に戻ってきました。ジョッキーが何度か騎乗して理想の形を知っていますからね。外枠もこの馬には良かったと思います。今後は短距離の交流レースから、のちのちにはジーワンへ進めればと思っています。