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第46回岐阜金賞

若手騎手の挑戦を退ける
  5年ぶり東海三冠馬誕生

結果だけを見れば、2番人気のタニノタビトが1着で、3番人気のコンビーノが2着、1番人気のイイネイイネイイネが3着で、3連複は2.4倍という結果。しかし内容的には見どころが多かった。

まず、ひとつ前のレースが発走する直前、実況担当の西田茂弘アナウンサーの声で笠松競馬場がざわついた。

駿蹄賞、東海ダービーの東海地区二冠を制したタニノタビトがマイナス12キロ。そして二冠がともに2着だったイイネイイネイイネがプラス12キロと発表されたのだ。

それからしばらくして、岐阜金賞に出走する12頭がパドックに登場。タニノタビトは首を上下に動かして、体からは汗がしたたり落ちていた。対するイイネイイネイイネは推進力が感じられる歩様を披露して、コンビーノはリップチェーンを装着した姿でも落ち着いて周回。パドックの隊列から早々に離れ、装鞍所に戻って馬場入りを待ったタニノタビトとは対照的だった。

2コーナーの向正面入口にある1900メートルのスタート地点。ゲートが開くとナンジャモンジャが先手を取り、鞍上の藤原幹生騎手はスローペースに落とした。

その直後にイイネイイネイイネ、コンビーノなどがつけ、そこに1周目のホームストレッチでタニノタビトが加わって、1コーナーでは上位人気3頭を含む4頭が横並び。その大外にいたタニノタビトは、カーブでの距離ロスで徐々に位置取りを悪くしていった。スタート地点に戻ったあたりでは、先頭からの距離はおよそ3馬身。しかし向正面で岡部誠騎手がゴーサインを出すと勢いがついて、失速したナンジャモンジャに替わって先頭に立ったコンビーノに接近していった。

逆にイイネイイネイイネは加速がつかず、先頭から少し離れた3番手に後退。2周目の4コーナーからはコンビーノとタニノタビトの一騎打ちになった。

内は人馬ともに重賞初勝利を目指すコンビーノ。外は三冠達成を目指すタニノタビト。そのマッチレースは200メートルほど続いたが、最後の最後にタニノタビトがアタマ差だけ先着する結果になった。

レース後、表彰式の場所に到着した岡部騎手は満面の笑顔。臨場した馬主の西村健(たけし)さんも「いやあ、ドキドキしました。これでダービーグランプリに向かえます」と話した。

悔しい2着になったのが、コンビーノの手綱を取った塚本征吾騎手。「道中でムダに脚を使わされて……。岡部さんにやられたという感じです」と、やり切れないといった表情。6馬身差の3着だったイイネイイネイイネの渡邊竜也騎手は「具合がよすぎて、逆にハミを噛んで行きたがってしまって。岡部さんを先に行かせて目標にしたかったのに、岡部さんがそれをする形になってしまいました」と展開を悔やんだ。それでも「馬はまだ成長している感じがしますし、自分もダービーのあと考えるところがあって、改善した点があるんです」と、前を向いていた。

岡部騎手は東海地区の第一人者で、騎乗技術は全国区。その背中を18歳の塚本騎手、22歳の渡邊騎手が追いかける。スタンドからレースを見た私でも、岡部騎手のレース運びにはうならされた。すぐ近くで戦った2人の若手騎手はなおさら、大きいものを得たことだろう。

取材・文浅野靖典

写真宮原政典(いちかんぽ)

Comment

岡部誠騎手

三冠馬にさせてあげられたし、自分も三冠ジョッキーになることができました。今日は返し馬ができないし、ゲート入りを嫌がるし、とても苦労しましたが、道中は流れにうまく乗れました。前に馬がいると頑張るタイプなので、4コーナーでは間に合うと思いました。これで今週末の札幌に気持ちよく臨めます。

角田輝也調教師

輸送競馬で勝てたことが収穫ですね。ここに向けて順調に調整はできましたが、すこし心配なところがあったので前の日に直線だけ追って、それが結果的によかったのかなと思います。パドックでも返し馬でもうるさくて、どうなることかと思って見ていましたが、結果を出すことができてホッとしています。