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第57回サラブレッド大賞典

外枠から内を突いての好騎乗
  強敵不在で人気にこたえる

金沢と言えば、佐賀や高知同様、道中は内を開けて走るイメージが強い。しかし、この日の傾向は、内を開けて走ってはいるものの、外を回り過ぎると直線で伸び切れないレースが続いていた。その傾向を象徴していたのが第8レース。道中インでじっくり構えたサンデープリンセスが直線で馬群を捌き切り、上位人気のリンクスエルピスとナイトスターリリーをあっさり差し切った。

北日本新聞杯と石川ダービーを制すなど、昨季から7連勝中の二冠馬・スーパーバンタムが、西日本ダービー(園田)に照準を絞ったことで、最後の一冠となるサラブレッド大賞典は混戦ムード。2000メートルで施行されるようになった2012年以降の優勝馬では、13年ポセイドンを除く9頭が、結果はともあれ、MRO金賞に出走していた。他地区と交流の厳しい戦いを経験した強みが、地元馬同士のレースで大いに生きていることが想像できる。ただ、今年のMRO金賞は6頭の少頭数で、笠松のイイネイイネイイネが優勝。5馬身差で2着だったマイネルヘリテージや、3着のスタイルユアセルフが上位人気になるなら、石川ダービーでこの2頭に先着したスターフジサンが1番人気に支持されたのは頷ける。スターフジサンは、MRO金賞に出走せず、加賀友禅賞でスーパーバンタムに挑んで2着だった。能力差がないメンバーとなると、騎手による展開や馬場読みが、勝敗の鍵を大きく握る。

先行すると思われたゴールドジャッジが出遅れ、スタートから波乱含み。ビーブルーとマーミンラブが競り合い、パーシストとスタイルユアセルフも加わった1周目の先行争いは激しくなり、前半3ハロンは37秒台のハイラップ。縦長の展開となった段階で、大外枠だったスターフジサンの吉原寛人騎手は、サッと内に進路を取る。

1コーナーでペースが落ち着いた時に馬群が凝縮。出遅れたゴールドジャッジが内からスルスル進出すると、それを追いかける形でスターフジサンも忍び寄る。「砂を被るとダメ」と藤田弘治騎手が話していたマイネルヘリテージは、終始外を回らざるを得ない状況。

3コーナーを過ぎて前にいたマーミンラブを真ん中に置き、内がスターフジサン、外はマイネルヘリテージの3頭の争いとなる。直線の攻防で、ロスのない立ち回りをした吉原騎手のスターフジサンがもうひと伸びし、8度目の重賞挑戦で嬉しい初制覇を飾った。

「大外枠なので、どのように乗るか色々考えた結果、位置を下げてでもロスのない立ち回りをする選択をした」という吉原騎手。表彰式の後、マイネルヘリテージに騎乗した藤田騎手も加わり、改めてレースを振り返っていたが、「1周目スタンド前で、内に入ることも少し考えたんですが、やはり砂を被って行きっぷりが悪くなった瞬間があったので、敢えて外を回る選択をしました。能力を出し切る上では最善の選択だったと思いますが、吉原騎手にしてやられた感じです」と、ライバルを素直に讃えていた。マーミンラブを管理する中川雅之調教師は、「うちにとって相性の良いレースだったし、中島(龍也)騎手は上手に乗ってくれましたが、相手が一枚上でした」と、結果を呑み込んでいた。

スターフジサンの次なる目標は、打倒スーパーバンタムだ。「紛れが生じやすい園田コースなら、逆転できる可能性を感じています」と加藤和義調教師。勝ち時計の2分10秒6は、2000メートルで施行された2012年以降で最も速い。スーパーバンタム不在ながら、レースのレベルは高い。西日本ダービーでの直接対決は注目されるが、2頭が目指すのはもちろん西日本の頂点。最高の結果を、金沢のファンに送り届けて欲しい。

取材・文古谷剛彦

写真岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

吉原寛人騎手

外を回るレースは避けたかったので、大外枠は厳しいなと思いましたが、位置を下げてでも、ロスのないレース運びを心掛けました。前4頭が競り合う展開となり、無理せず内から上がっていけたのは大きいですね。最後の直線では、激しい叩き合いが続きましたが、最後の一冠を勝つことができて良かったです。

加藤和義調教師

加賀友禅賞をひと叩きした分の上積みはありましたが、先を見据える形で、9分ぐらいの状態で挑みました。今回は、吉原騎手の好騎乗に助けられた勝利です。打倒スーパーバンタムを狙えるのは園田コースだと思っていますので、中1週のローテーションになりますが、西日本ダービーを視野に入れています。